曇り 日帰り 1回目
草山温泉は、兵庫県丹波篠山市の北端、遠方 (おちがた) に湧く温泉。京丹波町、福知山市との境界付近の草山盆地に位置する。かつては草山村、その後、周辺の3村と合併して西北村となり、西紀村 (にしき)、西紀町を経て現在は篠山市に属する。
やまもりの湯は草山温泉にある日帰り入浴施設。
歴史
草山温泉|草山温泉 大谷にしき荘によると、草山温泉は「寛永年間より塩類霊泉として知られる」とあるがその根拠についてはインターネットでは見つけられなかった。
付近にある顕彰碑によると、寛政五年には記録が残っているようだ。
寛政五年 (西暦一七九三年)
篠山藩 水戸貞著記「丹波志に潮泉」と記さる明治十七年 (西暦一八八六年)
遠方村誌に「汐泉」と記さる明治四十年 (西暦一九〇九年)
故橋本仙吉 春日温泉として開業 (第一次温泉)大正十年 (西暦一九二一年)
故橋本信利、故久下弥左衛門 春日温泉株式会社を創立 (第二次温泉)昭和大恐慌、日中戦争、太平洋戦争、戦後の混乱の時代、遠方の先輩諸賢は幾多の苦難に耐えて泉源を護持された。
昭和三八年 (西暦一九六三年)
故大谷竹次郎翁 草山温泉として再興 (第三次温泉)平成四年 (西暦一九九三年)
大谷勇社長 新たに泉源を掘搾され、有望なる温泉が湧出、観音湯を創設される
上の「丹波志」によると、
遠方(おちかた)村より船井郡釜谷奥谷へ行く路傍田間方三尺許水溜る、色白濁潮の味あり、因って潮池と名付く
とあり、温泉が当時より自噴していた様子が記されている。
草山温泉には2軒の温泉施設があり、1つは大谷にしき荘である。これは昭和32年に作られた大谷重工の社員保養寮が後に地元に譲渡されたものであるとのこと。「にしき」は西紀村に因むものであろう。
もう1つがここ、やまもりの湯 (旧観音湯) で、大谷にしき荘とは別に源泉を掘削したらしい。2016年12月にリニューアルし、観音湯からやまもりの湯に名称を変えた。
大谷にしき荘では「草山温泉」源泉を、やまもりの湯では「草山温泉 観音の湯」を利用している。
温泉の由来
草山温泉は有馬温泉の金泉と似た湯、鉄分を含み赤く塩辛い湯が湧出すると云われる。有馬温泉からの距離は直線で40km強である。(でも分析書を見るとそうでも無いような…)
有馬温泉では、フィリピン海プレートがユーラシアプレートにぶつかって地下深くに沈み込む過程で取り込まれた海水が、地下60km付近で圧力により放出され、それが活断層を通って温泉として地上に湧き出すと言われている (有馬型温泉)。この水は深部では超臨海状態になっており、周囲の岩石に含まれた成分をよく溶かすため、非常に高い濃度の温泉になるという。
草山温泉については明確に述べた資料を見つけられなかったが、付近には三峠・京都西山断層帯が通っており、これに沿って地下深層から温泉が湧いてきているのかもしれない。
付近には、丹波篠山市の籠坊温泉、丹波市の国領温泉といった鉄分・炭酸成分を多く含む温泉がある。
施設
やまもりの湯は2016年12月にリニューアルし、新しい建物を元々あった施設の隣に新築したらしい。
まだ新しく、施設はとても綺麗である。外見の形は仙台市天文台を、建物の石感や庭の感じは長湯温泉ラムネの湯を思い出させた。
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 正面
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 玄関
営業時間は月〜金曜日は15:00〜21:00、土・日・祝日は11:00〜21:00。
今回は開店30分前に着いてしまったので駐車場で待機していたところ、開店時間10分前に入れてもらえた。どこからかゆっくりと歩いてきた地元の老人はさらに早く入っていったので2番湯である。
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 施設ご案内
浴場は男女別。それぞれに内湯、露天風呂がある他、露天風呂エリアにサウナがある。
温泉を利用している浴槽は露天風呂のみである。
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 脱衣場入口
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 内湯 奥が露天風呂に続く扉
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 内湯には3つの浴槽
露天風呂は片側が弧状になった長方形。理由はわからないが、弧になっている側の縁は傾斜しており、外側が高く内側が低くなっていた。
最大で5人程度が一度に入れるくらいの大きさ。
温泉の使い方と五感
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 露天風呂
写真の手前側に湯口。普段、湯口からは湯が出ておらず、浴槽に湯がたまっているだけの状態。
10分〜20分程の間隔で湯口から熱い湯が出てきて、浴槽満タンまで溜められるようだ。
温度が下がってくるか、湯量が足りなくなったらおかわりされる方式のように思われた。
オーバーフローは無い。
浴槽の湯の温度は40℃位で温めである。湯口から湯が出ると多少温度が上がるが、熱いと感じるほどに温度が高くなることはなかった。
湯は加温有り、循環有り、塩素消毒有り。そのままの源泉に触れられる方法は無い。
味は、循環なのでペロっと舐めた程度でちゃんと味合わっていないが、強い鹹味があった。
無臭。錆の匂いも、磯の匂いも、塩素消毒臭も全く感じられなかった。
色は茶褐色透明。透明度は50cm強で、浴槽底がギリギリ見えない程度である。
入浴中、よく見ると赤い析出物が浮遊していて、身体に乗っていた。
湯は濃い結構疲れるはずの湯だが、微温いためにゆっくり浸かることができる。
長く入ると、身体の暑さはなかなかに長引き、しばらく汗が出た。
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 露天風呂の庭
広々とした庭があり、また空いており快適だった。
浴槽からはボケーっと庭を見るのがよい。
温泉の成分
施設内には詳細な温泉分析書を見つけることができなかったが、公式ページに掲載されている。
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 温泉分析書
以下で簡単に抜粋する。
源泉名は「草山温泉 観音の湯」。分析年月日は2014.7.1。湧出量は記載無し、pH 記載無し、泉温 記載無し、溶存物質 (ガス性のものを除く) 51500mg/kg、成分総計 51500mg/kg、泉質はナトリウム-塩化物強塩泉 (高張性中性冷鉱泉)。
成分については下記の通り:
陽イオンは、
ナトリウムイオン (Na) 14000mg/kg 608.99mval/kg 70.41mval%、
カルシウムイオン (Ca) 4100mg/kg 204.59mval/kg 23.65mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 420mg/kg 34.56mval/kg 4.00mval%、
カリウムイオン (K) 440mg/kg 11.25mval/kg 1.30mval%、
ストロンチウムイオン (Sr) 200mg/kg 4.57mval/kg 0.53mval%、
以下略、
計 19190mg/kg 864.97mval/kg。
陰イオンは、
塩化物イオン (Cl) 32000mg/kg 902.60mval/kg 99.94mval%、
硫酸イオン (SO4) 2.8mg/kg 0.06mval/kg 0.01mval%、
以下略、
計 32022mg/kg 903.17mval/kg。
遊離成分で非解離成分は、
メタホウ酸 (HBO2) 260mg/kg 5.93mmol/kg、
以下略、
計 262mg/kg 5.93mmol/kg。
溶存ガス成分は0.0mg/kg未満 0.0mmolで無し。
改めてみてみると、鉄分も炭酸成分も、その他ごった煮な金属イオンも少なく、あまり有馬温泉に似ていないような気がする。これは地上に湧出するまでのより多くの地下水と接触しているためなのかもしれない。
しかし成分総計50g/kg越えは非常に濃厚な強塩泉である。
他に特筆すべきものとしては、
ストロンチウムイオン (Sr) 200mg/kg が異常に多い。京都府のひよし温泉 90.3mg/kg、有馬温泉のかんぽの宿 55.7mg/kg、山梨県尾白の湯 152.8mg/kgなのでぶっ飛んだ値である。
すぐ近くの大谷にしき荘の源泉 (遠方第1源泉、遠方第2源泉) では90.0mg/kgなので、かなり多いことには間違いないと思うが、合っているか気になる。
また、メタホウ酸 260mg/kg も極めて多い。北海道の豊富温泉 550mg/kg、和歌山県かつらぎ温泉 1126mg/kg ほどではないが、簡単にお目にかかれる数値ではない。
↑ 写真: 草山温泉やまもりの湯 謎のいのしし的な像