日帰り 1回目 晴れ

2020年度の初温泉は神奈川県川崎市の「溝口温泉 喜楽里 (みぞのくちおんせん きらり)」になった。このあと新型コロナウィルス感染対策で温泉施設は営業自粛に入ってしまうため、その前に入浴できてよかった。

「溝口温泉 喜楽里」はかなり深い 1,800m の掘削を行って掘り当てた温泉を使用している。黒湯と古代海水の中間みたいな浴感の少し珍しい温泉だった。

神奈川県川崎市の天然温泉施設『溝口温泉 喜楽里』

「溝の口温泉 喜楽里」は関東ではお馴染「湯楽の里」「喜楽里」のブランドで経営するスーパー銭湯の1つである。うち多くの店舗で温泉を使用している。

「湯楽の里」では昭島温泉、春日部温泉、北本温泉、相模・下九沢温泉、熊谷温泉、市原温泉、所沢温泉、伊勢崎温泉、船橋温泉、栃木温泉、酒々井温泉、国立温泉、横須賀温泉、幕張温泉が温泉使用である。

「喜楽里」は溝口温泉でしか使われていない名称だが、「喜楽里別邸」として宮沢湖温泉、ひたちなか温泉、つくば温泉が温泉を使用している。

温泉を知ろう - 湯楽の里・喜楽里 <総合案内サイト>

私は春日部温泉、伊勢崎温泉、船橋温泉、栃木温泉、国立温泉、ひたちなか温泉だけ入浴したことがある。コンプリートの道は遠い。

ところで「湯楽の里」「喜楽里」を運営する株式会社サンフジホールディングスの名前を聞いて、りんごの品種とは関係あるのか気になってしまった。

「湯楽の里」「喜楽里」の訪問メモ:

周辺の温泉

付近には掘削深度が数多くの入浴施設があって黒湯の温泉が多い。川崎市高津区の周囲には川崎市中原区、川崎市幸区、川崎市宮前区、横浜市都筑区、横浜市港北区、東京都大田区、東京都世田谷区があるが、これらの地域全てに温泉がある。

あまりに多いのでここでは川崎市の高津区、中原区に絞って列挙してみる。

千年温泉 千年湯

JR南武線 武蔵新城駅から南西500mくらいにある温泉銭湯。2018年にリニューアルして綺麗かつ実用性が高い。見通し2cm未満の非常に濃い黒湯がある。

住所: 神奈川県川崎市高津区千年新町20-4
営業時間: 14:00~24:00 (平日), 11:00〜23:00 (土日祝), 定休金
公式サイト: 千年温泉| 川崎市高津区の天然温泉銭湯
過去の訪問: 2019/10/9 千年湯

たちばな温泉 たちばな湯

千年交差点の近くにある温泉銭湯。水風呂で加水無し、加温無し、循環無し、消毒無しの源泉掛け流し浴槽がある。湯は褐色の黒湯で、地下170mからの動力揚湯。

住所: 神奈川県川崎市高津区子母口403-1。
営業時間: 14:30〜23:30, 定休水
公式サイト: たちばな湯
過去の訪問: 2017/6/20 (記事無し)

今度また行こうと思う。

丸子温泉

新丸子駅近くの温泉銭湯。レトロな外見がよい。温泉は黒湯で地下160mからの動力揺動。

住所: 神奈川県川崎市中原区新丸子675
営業時間: 15:00〜22:30, 定休金
組合サイト: 丸子温泉 | 【公式】神奈川の銭湯情報
過去の訪問: 2017/2/18 (記事無し)

ここも今度また行こうと思う。

橘湯

JR南武線 平間駅と東急東横線 元住吉駅の中間くらいにある温泉銭湯。平間駅見通し20cm以下の濃い黒湯に浸かることができる。湯は地下200mからの動力揚湯。

住所: 神奈川県川崎市中原区苅宿36-32
営業時間: 15:00〜22:50, 定休火
組合サイト: 橘湯 | 【公式】神奈川の銭湯情報
過去の訪問: 2020/1/9 橘湯

第一天神湯

JR南武線 平間駅から多摩側寄り400m位にある温泉銭湯。温泉は黒湯で地下65mから動力揚湯。薪を使って沸かしているらしい。

住所: 神奈川県川崎市中原区上平間354
営業時間: 15:00〜22:00, 定休毎月3日, 13日, 23日 (日祭日なら翌日)
組合サイト: 第一天神湯 | 【公式】神奈川の銭湯情報
過去の訪問: まだ行ってなかった!

参考

施設

溝の口温泉 喜楽里の外観はなかなかスタイリッシュに決まっている。特に夜はライトアップがいい効果を出している。道路から入ると、左右に木の茂った道を歩いて施設入口に至る。

溝の口温泉喜楽里 外観
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 外観

営業時間は 9:00〜24:00 (受付23:30まで)。重要な注意は、小学生以下は大人同伴でも入館できないということ。個人的にはそこまでするか?という気はするが、都会ではそういう需要もあるのだろう。

溝の口温泉喜楽里 営業案内
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 営業案内

館内は普通のスーパー銭湯といった感じで、設備が充実している。

溝の口温泉喜楽里 館内
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 館内

溝の口温泉喜楽里 男湯入口
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 男湯入口

温泉掘削ビットも展示されていた。

温泉を掘る先端につけるものをビットといいます。溝口温泉「喜楽里」では千八百メーターまで温泉を掘りました。温泉掘削ビットは地層に合わせていろいろありますが、展示品は固い地層を掘ったときに使用したビットです。

溝の口温泉喜楽里 温泉ビット説明
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 温泉掘削ビット説明

溝の口温泉喜楽里 温泉掘削ビット
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 温泉掘削ビット

温泉の利用方法と浴感

浴場は当然男女別で、それぞれに内風呂と露天風呂がある。温泉を使用した浴槽は、内風呂の「炭酸源泉風呂」、露天風呂の「上の湯」「下の湯」がある。

まず「炭酸源泉風呂」は、温泉に人工的に炭酸ガスを溶かしたもの。人の手により加工済みの温泉なので正直あまり興味は無いのだが、入浴してみたところすごい泡付きだった。浴槽に入れた足が浴槽底に着くまでにもう、泡が付着している。ここまでの強い泡付きは他のスーパー銭湯でも見たことが無い。

新型コロナウィルス感染症の自粛ムードが高まりつつある途中で空いていたので、そのためもあったかもしれない。

浴槽は四角形の石造りで、8人が並んで入浴できる大きさ。

溝の口温泉喜楽里 炭酸源泉風呂
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 炭酸源泉風呂

次に露天風呂は、「上の湯」が加温有り、加水無し、循環無し、塩素消毒有りの掛け流しで、「下の湯」が加温有り、加水無し、循環有り、塩素消毒有り。

「上の湯」は岩風呂で4人が中央を向いて入浴できる大きさ。水面下に岩があるせいか、数人が入浴すると、見た目の割には狭く感じる。石を組んで作られた湯口からは、十分な量の湯が静かに注がれていた。オーバーフローは隣接した「下の湯」に注がれるようになっている。

「下の湯」は大きな岩風呂で、楕円形で10人位が入浴できそうだった。湯は「上の湯」からのオーバーフローの他、浴槽内で熱い循環湯が注入されている。

以下「上の湯」について。
見た目は、コーヒーか麦茶のような茶褐色で透明。見通しは60cm以上で浴槽底がよく見えた。湯口や、水面近くの岩は温泉成分によって茶色く着色されていた。

湯口から手で湯を汲んで飲んでみると、強くはないがはっきりとした塩味があった。自分がメモした内容が貧弱であまり味を思い出せないのだが、塩辛いという感じではなかったと思う。

匂いもあまり強くないが、入浴中に湯に鼻を近付けてみると、ムワッと鼻にくる弱い鉱物油的な匂いを感じた。

肌触りははっきりとした感触があり、入浴後しばらく経っても手足の先がヌルヌルした。温度が低めのため (具体的な温度はメモが残っていなかった)、長時間入浴できる。

温泉の成分

溝の口温泉喜楽里 温泉分析書
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 温泉分析書

溝の口温泉喜楽里 温泉分析書
↑ 写真: 溝の口温泉喜楽里 温泉分析書

なぜか2タイプの温泉分析書が掲示されていたが、書かれた内容は同じだった。

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 溝口温泉
湧出地: 神奈川県川崎市高津区千年字北浦1068番1 湧出源泉にて採水
分析年月日: 平成28年4月21日

湧出量 428 L/min (動力揚湯)
pH 8.09
泉温: 40.5 ℃ (調査時における気温18.1℃)
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 (低張性・弱アルカリ性・温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 4118.21 mg/kg
成分総計 4141.41 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
リチウムイオン (Li+)0.300.040.07
ナトリウムイオン (Na+)1244.054.1193.71
カリウムイオン (K+)57.701.482.56
アンモニウムイオン (NH4+)15.900.881.52
マグネシウムイオン (Mg2+)4.200.350.61
カルシウムイオン (Ca2+)17.200.861.49
ストロンチウムイオン (Sr2+)0.200.000.00
アルミニウムイオン (Al3+)<0.1< td>----
マンガンイオン (Mn2+)<0.1< td>----
鉄 (II) イオン (Fe2+)<0.1< td>----
鉄 (III) イオン (Fe3+)0.400.020.03
陽イオン計134057.7100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.200.010.02
塩素イオン (Cl-)1381.038.9565.36
臭素イオン (Br-)5.700.070.12
ヨウ化物イオン (I-)1.800.010.02
硫化水素イオン (HS-)<0.1< td>----
チオ硫酸イオン (S2O32-)<0.1< td>----
硫酸イオン (SO42-)0.300.010.02
硝酸イオン (NO3-)<0.2< td>----
リン酸水素イオン (HPO42-)0.900.020.03
炭酸水素イオン (HCO3-)1229.020.1433.80
炭酸イオン (CO32-)11.500.380.64
陰イオン計263059.6100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタ亜砒酸 (HAsO2)<0.1< td>--
メタケイ酸 (H2SiO3)131.201.68
メタホウ酸 (HBO2)16.700.38
非解離成分計147.902.06
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)23.200.53
遊離硫化水素 (H2S)<0.1< td>--
溶存ガス成分計23.200.53
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.01未満--
総水銀 (Hg)0.0005未満--
銅イオン (Cu)0.05未満--
クロム (Cr)0.01未満--
鉛イオン (Pb)0.01未満--
カドミウムイオン (Cd)0.01未満--
亜鉛イオン (Zn)0.010.00
微量成分計0.010.00

以下サイトにも登録しました。
溝口温泉 - 湯花草子

溝口温泉 喜楽里の湯は、深さ 1,800m の大深度掘削により湧き出したもの。1,800m というと温泉用の井戸としては全国でもトップレベルの深さ。

関東ではこれだけの深さになると成分総計が 10.0 g/kg を越えて塩辛い温泉が湧くことが多い。例えばもう少し南の「縄文天然温泉 志楽の湯」では掘削深度 1,300m で成分総計は 27.91 g/kg、「ヨコヤマ・ユーランド鶴見」の「末吉の湯」では掘削深度 1,500m で成分総計 17.63 g/kg である。それに対し「溝口温泉 喜楽里の湯」では成分総計 4.50 g/kg 程度で味もそれほど塩辛くない。むしろ、炭酸水素イオンの多さやぬるぬるした感触からは、黒湯の重曹泉のような特徴が感じられる。

調べてみると「末吉の湯」の地下は 1,180m 以深には1,000万年〜300万年前の地層である三浦層群池子層があり、そこに貯留された温泉が湧き出していると推測されている。「志楽の湯」では、地下 1,500m 以深まで300万年〜50万年前の地層である上総層群が続いていおり、その層から湯が湧いていると推測されている [1]

ここからは素人の推測なのでアテにしないで欲しいが、上総層群といえば蒲田や川崎の浅いところから黒湯が出る地層でもある。同じ層から湧く湯でも、黒湯のような浅いところから出るものと、「志楽の湯」のような深いところから出るものでは随分と成分が異なるようだ。「溝口温泉 喜楽里」の地下ではさらに深いところまで上総層群が続いていて、黒湯と「志楽の湯」の中間のような成分で湯が湧いているのではないだろうか。

溝の口温泉喜楽里 掘削


  1. 小沢・江藤, 神奈川県中・東部地域の大深度温泉井の地質および地下地質構造, 神奈川県温泉地学研究所報告, 2005年 ↩︎