日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中61湯目

川崎駅から徒歩10分くらいの距離にある黒湯の銭湯「政之湯」。泉質は塩化物泉なので黒湯らしい特徴は強くないが、駅から近く、混んでもおらず、さらに営業時間も長いのでとても便利な施設だ。辿り着くには風俗街を抜けていくが、店に入ってみると普通の銭湯だった。

施設・温泉概要

所在地: 神奈川県川崎市川崎区南町2-4
Web: 政の湯 | 【公式】神奈川の銭湯情報
日帰り入浴: 可 14:30-25:00
宿泊: 不可

源泉名: 川崎天然温泉
湧出地: 神奈川県川崎市川崎区南町2-4
湧出量: 67 ℓ/分 (掘削・動力揚湯)
泉温: 18.0 ℃
pH: 8.0
成分総計: 2622 mg/kg
泉質: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 (低張性・弱アルカリ性・冷鉱泉)
旧泉質名: 食塩泉 / 含重曹食塩泉

一番良い浴槽の温泉利用方法:

加温 加水 循環 消毒

川崎らしい通りに建つ温泉銭湯

川崎駅の南側には、イタリア ヒルタウンをイメージした LA CITTA DELLA (ラ チッタ デッラ) という商業施設があって私には縁の無さそうな店が並んでいる。そこを外れると川崎らしい猥雑な街になって、政之湯はピンクな店の建ち並ぶ間に挟まっている。横浜 伊勢佐木町の 利世館 (2020/9/11) と双璧を成してお子様の近寄りにくい温泉銭湯だ。ただ賑やかな伊勢佐木町と異なり、こちらは人気が少なく余計に怪しい雰囲気になっている。周辺には焼肉屋や焼鳥屋もあって気になる。

利世館 (2020/9/11)
日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中43湯目 いなり湯 [/2021/01/29/2020-09-11-yokohamainari/]に入浴後、本当は帰るつもりだったが、後の予定が急に無くなり、せっかくなのでもう1湯、利世館まで歩いてきた。 利世館は横浜ではお馴染の黒湯を使っている。循環無しの利用はとても嬉しい。見通し10cm程度の濃い黒湯に、じっくりと入浴してサッパリした。 施設・温泉概要所在地: 神奈川県横浜市中区伊勢佐木町5-127Web: 利世館 - 奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合 [https://k-o-i.jp/koten/riseikan/]日帰り入浴: …

道は簡単で、川崎駅の南側に出たら線路と直交する新川通りの車道に沿って歩く。右側の歩道を歩いて行ってデイリーヤマザキの手前で右折するだけ。

政之湯 外観
⬑ 薄暗い通りに建つ政之湯

そういえば冬に来たときは休業で悔しい思いをした。(2020/2/22 ゆ〜シティー蒲田)

政之湯 入口
⬑ 今日は開いていてスヌーピーが待機している

入口で入浴料金を支払って脱衣場へ。建物は少し古いが、番台方式では無かった。中に入ってしまうとごく普通の銭湯だ。

政之湯 脱衣場入口
⬑ 右が男湯、左が女湯

ライオンの口から黒湯を注ぐ

浴室は伝統的な銭湯様式で、カラン付いた低い壁が前後に並んで、その奥、奥側の壁下に浴槽が配置されている。男女浴室を仕切る中央の壁際の隅に小さな浴槽が2つあり、温泉を使用しており黒湯が湛えられている。1つ目は1人サイズのもので、マッサッジ用のジェットから湯が噴き出しており、背もたれは傾斜して休めるようになっている。もう1つは2人サイズの浴槽。バイブラ式の気泡浴槽で一部は電気風呂になっている。

湯は浴槽内底面からの注入・吸入により循環され、オーバーフローは無い。2つの浴槽の真横には小さなライオンの湯口が設置されているが吐出量は少なく、浴槽の湯の鮮度に与える影響は小さそうだった。温泉の使い方は加温有り、加水無し、循環有り、塩素消毒有りと思われる。ただライオンの口は黒ずんでなかなかの渋みがある。

浴槽の湯の色は濃い茶褐色または黒色で、見通しは50cm以下。このあたりの黒湯にしては透明な方だが、それでも浴槽の底はギリギリ見えなかった。

ライオンの口から流れ出す湯を味わってみたが無味。匂いも特に無く無臭。モール臭も感じられないが、消毒の匂いも無かった。感触も若干温泉らしい滑りがあるかなという程度で、はっきりとした特徴は感じられなかった。ある意味で素朴な温泉銭湯の湯という感じ。

温泉の成分

脱衣場、浴室の前には昭和31年の古い分析結果が大きく掲示されていた。なんと甘露寺先生が25歳の時の分析。

甲第378号 川崎天然温泉 川崎市小川町56 黒崎政吉
温泉分析検定書の定量分析の結果によれば本鉱泉は含重曹・弱食温泉 (緩和低張性冷鉱泉) に該当する・依って日本温泉協会学術部委員会の規定による適応症を掲ぐれば次の通り

湧出地における調査及び試験者氏名 神奈川県衛生研究所 昭和31年9月27日 試験室における試験者氏名 中央温泉研究所 益子 安・甘露寺 泰雄
田熊 鴻十郎
中央温泉研究所 所長 服部 安蔵

最新の温泉分析書も掲示されていて、こちらは令和元年のもの。

温泉分析書
⬑ 温泉分析書

温泉分析書別表
⬑ 温泉分析書別表

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 川崎天然温泉
湧出地: 神奈川県川崎市川崎区南町2番地4
分析年月日: 令和元年12月18日

湧出量 67 L/min (掘削・動力揚湯)
pH 8.0
泉温: 18.0 ℃ (調査時における気温19℃)
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 (低張性・弱アルカリ性・冷鉱泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 2608.7 mg/kg
成分総計 2622.3 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
ナトリウムイオン (Na+)782.5034.0485.02
カリウムイオン (K+)31.100.802.00
アンモニウムイオン (NH4+)11.000.611.52
マグネシウムイオン (Mg2+)32.002.636.57
カルシウムイオン (Ca2+)38.601.934.82
アルミニウムイオン (Al3+)0.200.020.05
マンガンイオン (Mn2+)0.1未満----
鉄 (II) イオン (Fe2+)0.400.010.03
陽イオン計89640.0100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.200.010.03
塩素イオン (Cl-)1045.029.4875.07
臭素イオン (Br-)3.900.050.13
ヨウ化物イオン (I-)0.200.000.00
硫化水素イオン (HS-)0.1未満----
チオ硫酸イオン (S2O32-)0.100.000.00
硫酸イオン (SO42-)1.600.030.08
リン酸水素イオン (HPO42-)1.900.040.10
炭酸水素イオン (HCO3-)585.209.5924.42
炭酸イオン (CO32-)2.100.070.18
陰イオン計164039.3100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)61.000.78
メタホウ酸 (HBO2)3.700.08
腐植質8.0--
非解離成分計72.700.86
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)13.600.31
遊離硫化水素 (H2S)0.1未満--
溶存ガス成分計13.600.31
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.005未満--
総水銀 (Hg)0.0005未満--
銅イオン (Cu)0.05未満--
鉛イオン (Pb)0.05未満--
カドミウムイオン (Cd)0.01未満--
亜鉛イオン (Zn)0.01未満--
微量成分計0.000.00

下記にも掲載しました。
川崎天然温泉 - 湯花草子

主成分はナトリウムイオンと塩化物イオンで食塩泉の泉質。炭酸水素イオンは 25 % 未満しか含まれていないようだ。そのために黒湯らしい浴感は控え目なのだと思われる。一方で腐植質 8.0 mg/kg、メタけい酸 61 mg/kg が含まれていてこれが湯を褐色にしているようだ。

政之湯 帰り
⬑ 人気の少ない政之湯通り