日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中68湯目
全浴槽源泉掛け流しと聞いて埼玉県吉川市の「よしかわ天然温泉ゆあみ」にやってきた。JR 武蔵野線の吉川駅すぐ近くにある温泉だが、健康ランドっぽい少し古い感じもあってややマイナーな入浴施設だ。温泉は大深度掘削による古代海水系の強塩泉で、成分総計 20 mg/kg もある。これだけの強力な温泉に掛け流しで入浴できる温泉は貴重。特にヨウ素の香りは味覚、嗅覚にガッツリと来るので、ヨウ素成分が欲しくなったらここを訪ずれるべきだ。
あと超濃厚な独自配合の薬湯「智光薬湯」があって、薬湯のイメージを覆すほど濃い。とにかく濃い。せっかくなので薬湯も忘れずに体験しておきたい。
施設・温泉概要
所在地: 埼玉県吉川市保1-14-5
Web: よしかわ天然温泉ゆあみ
日帰り入浴: 可 10:00-23:00 (受付22:30まで)
宿泊: 不可
源泉名: 吉川温泉
湧出地: 埼玉県吉川市保1-14-5
湧出量: 1,200 ℓ/分 (掘削 1,500 m・動力揚湯) 数値は掘削当時のもの
泉温: 43.6 ℃
pH: 7.5
成分総計: 20,647 mg/kg
泉質: ナトリウム-塩化物強塩温泉 (高張性・弱アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 食塩泉 / 強食塩泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
無 | 無 | 無 | 有 |
越谷レイクタウンの隣駅にある健康ランド的な温泉
「よしかわ天然温泉ゆあみ」は埼玉県南部の吉川市にある日帰り入浴施設。JR 武蔵野線の吉川駅の近く徒歩 200 m の便利な場所にある。西側の隣駅は超巨大イオンの建つ越谷レイクタウン駅である。越谷と言えば「越谷天然温泉 ゆの華」がある。その他にも、周囲は 1000 m 以上の掘削により化石海水系の温泉が数多く湧出していて、2〜3駅に1つは温泉がありそうな勢いだ。このブログでもいくつかの温泉施設について記録している。
周囲の温泉については、上記 野天湯元 湯快爽快湯けむり横丁 三郷店 (2020/7/13) の記事にも記載した。
「よしかわ天然温泉ゆあみ」では地下 1,500 m まで掘削し、成分総計 20,000 mg/kg を越える濃い食塩泉が湧き出している。元々は同じ場所に 1999 年オープンの「よしかわ天然温泉エメラルド・マリン」があった [1] が、2007 年にリニューアルして今の名称になった。
館内には鍼治療、岩盤浴、濃厚な智光薬湯など、健康になれそうな? サービスがてんこ盛りになっている他、大衆演劇もやっていて独特の渋みがある。
⬑ 入口には天然温泉と彫られた大きな木看板
⬑ 施設の正面側だが、帰り際に撮影したので暗い
⬑ いい感じにローカル感のある建物の中へ
⬑ 強気な利用料金
⬑ 脱衣場は2階。脱衣場横に階段があって2階と3階に浴室が分かれている
⬑ 源泉設備?
⬑ 2階の休憩スペースを通って脱衣場へ
⬑ 異空間のようなカオスな一角があったりする
⬑ 脱衣場へ
残念ながらここから先の写真は無い。現地をイメージしにくいが、よしかわ天然温泉ゆあみ の公式ページ を片手に読んで欲しい。
ヨウ素が主張する黄褐色の温泉
先に少し書いたように、浴場は2階と3階に分かれている。裸のまま行き来できるが、身体は十分に拭く必要がある。2階、3階とも温泉浴槽、脱衣場を備えているので、それほど頻繁に移動する機会は無いかもしれない。
2階には源泉浴槽と、智光薬湯の浴槽。もう1つ間に合った気がするが、温泉ではなかったので覚えていない。智光薬湯も温泉では無いが、なかなか面白い湯だったので後で記録する。3階にはもっと多くの浴槽があって、温泉を使った浴槽は内湯の源泉浴槽、ちょーぬるゆ (本当にこう掲示されている) 浴槽、あと露天風呂で3つあった。
2階、3階の源泉浴槽とも2人サイズ。湯口からジョロジョロと注がれた湯は、浴槽の縁から常にオーバーフローしている。湯口以外からの注入、吸入は見当らず。加温無し、加水無し、循環・濾過無しの掛け流しだ。消毒は不明。ここだけ飲泉不可の掲示が無いのが少し気になった。消毒無しだったら嬉しいが、たぶん違うのだろう。浴槽の温度は、2階で41℃くらい、3階で40℃くらいだった。
3階の源泉浴槽の下にはちょーぬるゆ浴槽がある。こちらは加水されて37℃程に温く調整されていた。ゆったりと浸かるには良いが、温泉を楽しむには向かない。
3階の露天風呂は一番奥にある。少し広い浴槽で8人ほどが入浴できそうな大きさ。掛け流しの表記があったが、どうも熱湯の浴槽内注入と浴槽内吸入があるようだった。公式ページにも「衛生上、及び快適な温度を保つため濾過機併用とさせて頂きます」と書いてあるので、その通り、加温湯と循環濾過湯の併用式だろう。それじゃあ全然掛け流しじゃない。ちょっと都合良い解釈の源泉掛け流しだ。湯口は非循環の湯を使っていると思われる。浴槽の温度は40℃ほど。
湯の色は薄い黄褐色で半透明。内湯源泉浴槽では浴槽の底が見えている。露天風呂では少し濁って透明度が下がり、浴槽底が見えるか見えないか程度になっていた。水中には小さな茶色い湯の華がチラホラと浮遊していて、源泉浴槽で多い。拾って擦ってみると茶色い粉末を経由して最後には溶けて消えた。湯に入ると湯の華が舞い上がり、じっと浸かっていると身体にたくさんの湯の華が付着していた。なかなか面白い泉質だ。
湯口から湯を掬って飲んでみると、ビリっとくる強い鹹味があった。ただし食塩含有量 19.5 mg/kg の強塩泉としてはやや弱め。除鉄によって塩味、苦味、金気は控えめになったと思われる。代わりにヨウ素のような味覚が目立つ。後味は特に舌にじっとりと残って、イソジンでうがいした後のような味が続いた。
匂いも同様、この辺りの強食塩泉にある土臭、鉱物湯臭は弱めで、対してヨウ素臭がやたらと際立つ。ここまではっきりとヨウ素臭がわかる温泉は少ない。ヨウ素の匂いを嗅ぎたい衝動に駆られたら、ここに来るべきだ。なお露天風呂ではヨウ素が飛んだのか、塩素消毒臭と臭素臭のミックスになっている。プラスチックを燃やしたような化学的な香りでグラッとする匂いがする。
肌触りは、弱いヌルヌル感があった。メタけい酸 58 mg/kg として妥当な感触だ。温まりは成分総計 20 mg/kg の温泉としては弱く、体力をあまり消耗しない。実際、他の入浴客もかなり長めの入浴をしているようだった。そのためか浴室内は動きが少なく落ち着いた雰囲気さえある。平日の日中に来たせいかもしれないが。入浴後も割と簡単に冷めて汗が長引かなかった。
全浴槽の湯量を見ると、今は 400 ℓ/分も使っていなそうだ。しかし独特の知覚があって面白い。掘削当初の湧出量 1200 ℓ/分もあったそうなので、もっと湯量を活用して除鉄も少し抑えてもらえれば首都近郊最強クラスの温泉になれるポテンシャルがあると感じた。とは言え、ゆあみの客層とは合わなそうなので、その機会は無さそうだ…。
最後に、2階の智光薬湯は薬湯のイメージを覆す強烈なもので、温泉ではないが是非とも一浴してみるべきである。有馬の金泉 (の少し時間がたったやつ) みたいな茶色に、漢方のような香辛料のような、スパイシーな香り。特に匂いはあまりに強いので、2階では隣の源泉浴槽に入っても温泉の匂いがわからなくなった。
薬湯に入浴していると股間が全体的に痛くなり、我慢していたらさらに熱くなったのでギブアップした。これが薬効か? 薬湯から上がっても、温泉で洗っても治らなず、しばらく冷水で冷ましていると漸く痛みが収まった。なんか悔しいのでまたリベンジしようと思う。
温泉の成分
温泉分析書は館内に掲示してあったような気がする。
⬑ 平成28年9月 吉川温泉
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 吉川温泉
湧出地: 埼玉県吉川市保1-14-5 (9ガスセパレーター排水管から直接採取)
分析年月日: 平成28年9月15日
湧出量 記載無し (掘削・動力揚湯)
pH 7.5
泉温: 43.6 ℃ (調査時における気温25.7℃)
泉質 ナトリウム-塩化物強塩温泉 (高張性・弱アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 20624.4 mg/kg
成分総計 20646.6 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
ナトリウムイオン (Na+) | 7188.0 | 312.66 | 90.13 |
カリウムイオン (K+) | 75.90 | 1.94 | 0.56 |
アンモニウムイオン (NH4+) | 13.10 | 0.73 | 0.21 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 176.00 | 14.48 | 4.17 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 339.40 | 16.94 | 4.88 |
アルミニウムイオン (Al3+) | 0.40 | 0.04 | 0.01 |
マンガンイオン (Mn2+) | 0.40 | 0.01 | 0.00 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 2.90 | 0.10 | 0.03 |
亜鉛イオン (Zn2+) | 0.10 | 0.00 | 0.00 |
陽イオン計 | 7796 | 347 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
塩素イオン (Cl-) | 12270 | 346.09 | 98.43 |
臭素イオン (Br-) | 45.40 | 0.57 | 0.16 |
ヨウ化物イオン (I-) | 9.80 | 0.08 | 0.02 |
硫酸イオン (SO42-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 296.50 | 4.86 | 1.38 |
炭酸イオン (CO32-) | 0.30 | 0.01 | 0.00 |
陰イオン計 | 12622 | 352 | 100.00 |
(3) 遊離成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタ亜砒酸 (HAsO2) | 0.002 | 0.00 |
メタケイ酸 (H2SiO3) | 58.00 | 0.74 |
メタホウ酸 (HBO2) | 148.20 | 3.38 |
非解離成分計 | 206.20 | 4.12 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 22.20 | 0.50 |
溶存ガス成分計 | 22.20 | 0.50 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.001 | 0.00 |
総水銀 (Hg) | 0.0005 mg/kg未満 | -- |
銅イオン (Cu) | 0.05未満 | -- |
クロム (Cr) | 0.001 mg/kg未満 | -- |
鉛イオン (Pb) | 0.001 mg/kg未満 | -- |
カドミウムイオン (Cd) | 0.0005 mg/kg未満 | -- |
微量成分計 | 0.00 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
吉川温泉 - 湯花草子
陽イオンはナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが多く、千葉北西部、埼玉南部のこのあたりでは典型的な古代海水系の温泉。鉄イオン 2.90 mg/kg が気になる。陰イオンはほぼ全てが塩素イオン。周辺の温泉と同様、臭素イオン、ヨウ素イオンがかなり多く、それぞれ 45.4 mg/kg、9.80 mg/kg。東京湾の周辺は世界有数のヨウ素産出地で、温泉にもガッツリと入ってくる。
非解離成分でメタけい酸 58.0 mg/kg はともかく、メタほう酸イオン 148.2 mg/kg がやたらと多い。一般的な温泉では多くても 10 mg/kg を越えない程度しか含まれていないので、かなり尖った量だ。とりあえず手元の資料で多いところを探してみると、野田花井温泉で 71.7 mg/kg、早稲田天然温泉 めぐみの湯 93.0 mg/kg、柏温泉 自然の湯では 170.5 mg/kg があった。少し離れて国立温泉 湯楽の里では 229.8 mg/kg を記録している。メタほう酸は消毒作用が強いそうだが、入浴しても知覚できない。メタけい酸みたいに感じられたら面白そうなのに残念だ。
おまけ
帰りは数駅歩いて、巨大イオンを横切ってみた。端から端まで撮ろうと思って離れたら、あまりに大きいので、遠くまで来てよくわからない写真になってしまった。右端の光る建物から、左側、池の向こうの長い明かりまで、全てがイオンだ。そしてこれが裏側にも広がっている。衝撃的だった。
⬑ 全てがイオン。陽イオンとか陰イオンではなさそうだ。