日帰り, 1回目, 曇り, 2020年度中56湯目
栃木県さくら市の喜連川温泉にある日帰り入浴施設「早乙女温泉」で日帰り入浴してきた。喜連川温泉郷に位置しているが、泉質が異なり全国的にも珍しい高張性の硫黄泉。硫化水素臭と灯油の匂いが同時に襲いかかってくる強烈な温泉だった。
施設・温泉概要
所在地: 栃木県さくら市早乙女2114
Web: 喜連川早乙女温泉
日帰り入浴: 可 10:00-20:00 (入場19:00まで)
宿泊: 不可
源泉名: 喜連川早乙女温泉
湧出地: 栃木県さくら市早乙女2114
湧出量: 720.0 ℓ/分 (掘削1300m・動力揚湯)
泉温: 73.4 ℃
pH 7.4
成分総計 15848.41 mg/kg
泉質 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 (高張性・中性・高温泉)
旧泉質名: 硫黄泉 / 硫黄泉 / 含食塩硫黄泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
無 | 有 | 無 | 無 |
掛け流しだが「成分が濃すぎるため」加水
喜連川温泉は栃木県の真ん中近く、さくら市にある温泉郷。喜連川温泉は1981年 (昭和56年) に1242mの掘削により湧出した温泉 [1]。喜連川早乙女 (そうとめ) 温泉は、日帰り入浴施設で、その中心部から2km程離れた位置に建つ。目の前の道は細く地味だが、実は旧奥州街道である。開業は1993年 (平成5年)。
喜連川温泉は美肌の湯と呼ばれ、純食塩泉でメタけい酸の含有量が多く硫化水素の含有は少なめだが、早乙女温泉ではなぜか少し異なった泉質になり、食塩含有量がさらに増えた他、硫化水素が多く含まれ、その個性的な湯は温泉ファンによく知られ愛されている。
⬑ 外観は少し秘湯っぽい雰囲気もある
⬑ 男女別の浴槽の他、飲食も可能
温泉は敷地内で1300m掘削し、動力によって浴槽より15m上のタンクまで揚湯しているとのこと。温泉は加温無し、加水有り、循環無し、消毒無しで使用されている。
⬑ 成分が濃すぎるため加水
頭がクラクラする程の硫化水素臭+ガス臭
浴舎は全体的にやや草臥れた印象で秘湯感が漂う。木造の建物でガラス張り。ガラスは黄色く変色している。天井は粗く萱が敷かれ、ポリカーボネートの波板で覆っている。奥側の窓は大きく開かれ、少し寒いほど風通しが良いので半露天風呂のように感じる。浴室右手の壁側にシャワー、左手側に浴槽。シャワーでも温泉を使用しており、浴びると強い硫黄臭に包まれて幸福だった。
浴槽は20人以上が足を伸ばして入浴できる大きな長方形の岩風呂。壁に隣接していて、中央あたりに岩が配置されており、その上に湯口があってドバドバと大量の湯が流れ出している。いったん上に噴き出した湯が、岩にワンクッション着地してから表面を流れ浴槽に注がれる造り。流れの下は湯の華で覆われて真っ白にコーティングされていた。新しい湯は透明、温度は44℃程で熱い。浴槽内の吸入は無く、湯はそのまま浴室入口側からオーバーフロー。
湯は美しい緑白色、あるいは、うぐいす色で、不透明。見通しは30cm強で浴槽の底は全く見えない。水中を白い中粒の湯の華が少し浮遊している。湯の華は、湯口から排湯口に向かって流れるライン上では少なく、その流れを外れると多くなるようだった。
匂いは強力な硫化水素臭、灯油のような鉱物油臭が混じり頭がグラグラしてくる。風通しが良いにも関わらず、これだけの強い匂いがするのだから相当濃い臭気と思われる。おすすめは湯口より入口寄りの壁沿いで、風下になっているのでガッツリと香ってくる。
湯を手に掬って飲んでみると、とても濃く塩辛い。食塩含有量10g/kg強程度に相当する塩味。飲んだ後味は強い苦味。単なる鹹味だけでなく硫黄味もはっきりと感じられた。飲み込むと鼻から硫化水素の刺激臭が少し抜けた。硫黄味+ガス味でかなり不味く、日本一の不味さを謳う月岡温泉よりは飲み易いものの、たくさん飲めたものではない。
浴槽の温度は41℃程でイメージより熱くない。ところがかなり温まる湯で強烈な疲労感があって長い時間浸かっているのは難しい。浴後は汗が収まらなかった。肌触りだけはさほど特徴が無かった。
温泉の成分
施設入口にも温泉成分・禁忌症・適応症等掲示があるが、公式ページに温泉分析書 が掲載されており、正確な情報が得られた。
⬑ 源泉は喜連川早乙女温泉
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 喜連川早乙女温泉
湧出地: 塩谷郡喜連川町大字早乙女字弥五郎2114番
分析年月日: 平成14年6月18日
pH 7.4
泉温: 73.4 ℃
泉質 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 (高張性・中性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 15838.41 mg/kg
成分総計 15848.41 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
水素イオン (H+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
ナトリウムイオン (Na+) | 4816.0 | 209.48 | 77.47 |
カリウムイオン (K+) | 48.30 | 1.24 | 0.46 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 15.80 | 1.30 | 0.48 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 1169.5 | 58.36 | 21.58 |
ストロンチウムイオン (Sr2+) | -- | -- | -- |
マンガンイオン (Mn2+) | 0.30 | 0.01 | 0.00 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 0.10 | 0.00 | 0.00 |
亜鉛イオン (Zn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
陽イオン計 | 6050 | 270 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 2.80 | 0.15 | 0.06 |
塩素イオン (Cl-) | 9564.9 | 269.79 | 99.29 |
水酸イオン (OH-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
硫化水素イオン (HS-) | 12.40 | 0.37 | 0.14 |
硫化物イオン (S2-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
硫酸水素イオン (HSO4-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
硫酸イオン (SO42-) | 17.00 | 0.35 | 0.13 |
リン酸イオン (PO42-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 65.20 | 1.07 | 0.39 |
炭酸イオン (CO32-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
メタケイ酸イオン (HSiO3-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
メタホウ酸イオン (BO2) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
陰イオン計 | 9662 | 272 | 100.00 |
(3) 遊離成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタ亜砒酸 (HAsO2) | 0.00 | 0.00 |
メタケイ酸 (H2SiO3) | 52.90 | 0.68 |
メタホウ酸 (HBO2) | 73.20 | 1.67 |
非解離成分計 | 126.10 | 2.35 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 4.40 | 0.10 |
遊離硫化水素 (H2S) | 5.60 | 0.16 |
溶存ガス成分計 | 10.00 | 0.26 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.01 | 0.00 |
総水銀 (Hg) | 0.00 | 0.00 |
銅イオン (Cu) | 0.05未満 | -- |
クロム (Cr) | 0.00 | 0.00 |
鉛イオン (Pb) | 0.00 | 0.00 |
カドミウムイオン (Cd) | 0.00 | 0.00 |
亜鉛イオン (Zn) | 0.01未満 | -- |
微量成分計 | 0.01 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
喜連川早乙女温泉 - 湯花草子
栃木県の中央部分の地下には南北に縦断するように地層の大きな谷が存在しており、鬼怒川地溝帯と呼ばれている。宇都宮から北西方向では、地上を第四系、地下50〜1250m辺りで海成層の第三系荒川層群、それより下は基盤岩の先第三系があり、ちょうど喜連川温泉郷辺りで最も深くなっている [2]。喜連川温泉や早乙女温泉はこの深部から湧出する温泉で、南関東ではお馴染の古代海水に由来する [3]。
硫黄分については記述が無かったが、ガス臭もあるので、硫酸還元菌の活動によって硫化水素が生成されたのではないかと素人だけど思った。
成因は全然違うと思うが、塩辛い硫黄泉は最近だと青森や和歌山でも入浴した。これらの湯もすごく良かった。