曇り時々雪 日帰り 1回目

2020年最初の温泉は、青森県青森市内のさんない温泉 三内ヘルスセンター。

三内は青森市の大部分が位置する青森平野の西端にあり、日本最大の縄文時代遺跡の一つとして有名な三内丸山遺跡や、市内最大の霊園である三内霊園がある。

実は私は生まれも育ちも青森市であるが、この温泉は知らなかった。というよりかは温泉に嵌ったのは仙台に住んでからなので、青森の温泉については恥ずかしながらよくわかっていない。

地理と歴史

三内温泉がいつからあるのか、はっきりとはわからなかったが、インターネットで調べたところ、昭和30年代か、昭和40年代頃からある古い温泉と思われる。

「新青森市史 通史編 第4巻」の目次には下記のようにある:

図2-113 三内温泉ヘルスセンター(昭和30年代) 転載:青森市経済部商工課編『あおもり』
昭和38年

昭和38年の写真があるということは、それ以前に始まったと考えられる。実際に書籍をあたればはっきりしそうだがとりあえずおいておく。

独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センターの地域地質研究報告「青森西部地域の地質」によると、源泉には新旧あり、1代目は昭和47年8月、2代目は平成4年11月の掘削。

三内温泉 本源泉は2つあり、現在は第7.1表に示したものではなく、平成4年11月に深度700mまで掘削された源泉が利用されている。

源泉名 施設名及び利用形態 場所 泉質 深度(m) 泉温(℃) 蒸発残留物 (g/kg) 掘削年月日 湧出量 pH
三内温泉 三内ヘルスセンター(公衆浴場) 青森市三内字沢部 含S-Na-Cl泉 705 46 - S47.8 - -
青森県三内温泉 三内ヘルスセンター(公衆浴場) 青森市三内字沢部305-11 含S-Na-Cl泉 700 45 14.39 H4.11 - -

建物の雰囲気からすると当時からそのまま使われているのではないだろうか。

上記の表にもあるが、地下700m (館内の掲示によると750m) からの掘削による温泉である。青森県西部には700m以上の深さまで掘削している温泉が数多くあるようだ。これくらいの深さになると地熱によって水温が高まり温泉として利用できる (深層熱水) ということだろう。火山である八甲田山が近いが、温度の恩恵は特に受けていないのだろうか。ただし、三内温泉の特徴といえば硫黄成分については八甲田山の火山成分が溶け込んでいるのではないかと思う。

資料を見ると三内地域には他に丸山温泉、稲元温泉、西滝温泉、大湯温泉があるが、丸山温泉、稲元温泉は利用されておらず?西滝温泉、大湯温泉は平成になってから廃業したらしく、結局三内には三内温泉しかないことがわかった。なお西目屋村にも稲元温泉があり、そちらはまだ営業しているようだ。

施設

建物は大きく、古びた健康センター的な施設。

三内ヘルスセンター 全景
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 全景

上の写真では、一番左手の緑の屋根の建屋が浴室、真ん中の1階がロビーである。真ん中の2階、右手の雪が積もった建屋についてはかつての食堂、宿泊舎だったと思われる。駐車場が異常に広いのは青森では普通。

三内ヘルスセンター 正面
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 正面

「自然の霊泉長命を寿ぐ」と書いた看板の下が入口である。「寿ぐ」は「ことほぐ」と読む。

三内ヘルスセンター 裏側
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 正面

浴室は駐車場側が男湯、その向こう側が女湯である。裏手に回ってみると、小屋が連結しており、たぶんここに源泉設備がある。

施設の中に入ると、ロビーには圧倒的な昭和感。奥の券売機で入浴券を購入し、隠れてしまっているが左手の受付で提示する。

三内ヘルスセンター ロビー
↑ 写真: 三内ヘルスセンター ロビー

入浴は大人400円。

三内ヘルスセンター 券売機
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 券売機

三内ヘルスセンター 休憩室
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 休憩室

休憩室から先は男女別の脱衣場になる。写真は本記事のトップ写真の通り。

三内ヘルスセンター 浴室
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 浴室

浴室入口の左側には温泉の説明が掲示されていたので引用しておく:

当温泉は、地下七五〇mから汲み上げた源泉をまったく手を加えず、そのままの状態で温泉として皆様にご利用いただいている天然の霊泉です。
温泉の含有成分の性質上、手や足に黒く鉄分が付着しますが人体に害はございません。
時間の経過とともに化学変化をおこし自然消滅しますのでご了承下さい。

三内ヘルスセンター 霊泉
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 天然の霊泉

浴室内は壁も床も温泉成分により強く着色されており、圧倒的な迫力。こんなインパクトの浴室にはこれまで出会ったことがない。人によっては清潔感に欠くという表現をされてしまうかもしれないが、これはむしろアートに近いと感じた。

体育館のような蒲鉾形。高さ3メートル程の壁で浴室を縦に仕切って男女の浴室に分けられている。壁の上には温泉パイプが這わせてあり、その先端より湯を落とす構造。壁面には、湯の流れに沿って壁に白い帯が描かれている。また、それ以外は濃い緑に色付いていた。きっと酸素を作り出したりしてくれるありがたいバクテリアだ。拝んでおこう。

床は、浴槽からオーバーフローした湯で白い湯の華が帯状に形成され、複雑な縞模様。析出物によりトゲトゲや文様が現われていた。

浴室の天井部と側面の窓の下には茶色の帯ができシマシマになっている。結露による水滴が長年流れ続けたためか。

浴槽は、壁に沿って掘り下げ式の大変大きな浴槽が配置されている。
2つに区切られており、手前側が20人以上は入浴できるであろうとても大きな浴槽、奥側が10人程度の大きな浴槽がある。湯口は前者の浴槽の上部にあるので、新たな湯は前者にまず入り、その端から後者の浴槽に流れ込む。よって手前の浴槽42℃程度に対し、奥の湯は温めで40℃くらい。

浴槽のミステリアスさと大きさにより、浴槽縁側から壁側まで移動するだけで謎の冒険感があった。

湯口からは熱い湯がドバドバと出ていた。
浴槽の縁は切り込みが一定間隔で入っており、そこから全方位に湯がオーバーフロー。
トド寝している人も何名かいた。風呂桶を裏返して枕にするのが一般的な方法のようだ。高さが足りない場合には浴槽の縁にかけて調整する。

温泉の利用方法と浴感

温泉は加温無し、加水無し、循環無し、消毒無しの源泉そのまま完全掛け流しで利用。

湯の見た目は緑灰色、少し暗いうぐいす色。この色は硫黄成分を多く含んだ塩化物泉で見られる。塩原元湯温泉大出館の「五色の湯」 (含硫黄-ナトリウム-塩化物-炭酸水素塩温泉) や、鳴子温泉西多賀旅館の「西多賀の湯」(含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩-硫酸塩泉 (硫化水素型) 、七味温泉紅葉館の「新七味温泉」(含硫黄-カルシウム-硫酸塩泉 (硫化水素型)) など。見通しは10cmちょっとで強めの濁りがある。浴槽の底は全く見えない。湯口から流れ出す湯の色は無色透明。浴槽の中で発色すると思われる。湯口の下では、白色薄黃の湯の華の塊が長く伸びており、触ると弾力があった。

飲んでみるとはっきりとした鹹味と苦味があった。鹹味は明確だが、顔を歪めるほどの塩辛さは無く、ほどよい塩スープといった感じ。十分量飲むと、塩味の裏に硫黄の苦味があることに気付いた。前述の似た色の湯では、むしろこの苦味が際立つことが多いが、三内温泉は塩味が先行する点が珍しい。

匂いについては、まず浴室に入るとすぐに硫化水素の刺激臭がした。あまり強くはないので入浴中は感じにくい。浴槽の湯を手に汲んで嗅いでみても匂いはあまり無かった。しかし硫化水素の香りは身体に濃く染み付き、湯から上がったあと2時間ほど経ってでも、全身から卵臭が香った。

浴感は入浴中あまり重くなくゆったり入りやすいが、上がってみるとかなり食らっている感じ。これは10000mg/kg台の成分量のある強塩泉に多い感覚。湯の温度は43℃くらいで少し熱いが、湯が大変肌に馴染むので入ってしまえば熱さを感じない。肌触りはややギシギシした。

源泉の成分

素人の推測だが、青森地下に閉じ込められた化石海水が、八甲田山の火山ガスから硫化水素を取り込んで湧き出した温泉だと思う。わかんないけど。

源泉名は「三内ヘルスセンター温泉」。分析年月日は2010.1.20。湧出量は記載無し、pH 7.5、泉温46.8℃、溶存物質 (ガス性のものを除く) 12628mg/kg、成分総計12657mg/kg。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 (高張性弱アルカリ性高温泉)。

成分は以下の通り:

陽イオンは、

ナトリウムイオン (Na) 4078mg/kg 177.4mval/kg 87.65mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 123.4mg/kg 10.15mval/kg 5.01mval%、
カルシウムイオン (Ca) 189.2mg/kg 9.44mval/kg 4.66mval%、
カリウムイオン (K) 172.9mg/kg 4.45mval/kg 2.20mval%、
総鉄イオン (Fe2+Fe3) 11.8mg/kg 0.63mval/kg 0.31mval%、
以下略、
計 4583.0mg/kg 202.4mval/kg。

陰イオンは、
塩化物イオン (Cl) 7359mg/kg 207.6mval/kg 95.85mval%、
炭酸水素イオン (HCO3) 394.5mg/kg 6.47mval/kg 2.99mval%、
硫酸イオン (SO4) 78.3mg/kg 1.64mval/kg 0.75mval%、
硫化水素イオン (HS) 16.3mg/kg 0.49mval/kg 0.23mval%、
臭化物イオン (Br) 29.5mg/kg 0.37mval/kg 0.17mval%、
チオ硫酸イオン (S2O3) 1.7mg/kg 0.03mval/kg 0.01mval%、
以下略、
計 7881mg/kg 216.6mval/kg。

遊離成分で非解離成分は、
メタけい酸 (H2SiO3) 111.5mg/kg 1.43mmol/kg、
メタほう酸 (HBO3) 52.8mg/kg 1.20mmol/kg、
計 164.3mg/kg 2.63mmol/kg。

溶存ガス成分は、
遊離二酸化炭素 (CO2) 23.3mg/kg 0.53mmol/kg、
遊離硫化水素 (H2S) 5.7mg/kg 0.17mmol/kg、
計 29.0mg/kg 0.70mmol/kg。

三内ヘルスセンター 温泉分析書
↑ 写真: 三内ヘルスセンター 天然の霊泉

成分表に書いていないが、硫化水素型のように見えるので、泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 (硫化水素型) だと思う。 見返してみたところ、硫化水素型ではありませんでした。

三内ヘルスセンター温泉 - 湯花草子

硫黄総量は22.1mg/kgで八幡平の松川温泉と同じ位含まれている。

含硫黄塩化物泉

三内温泉と青森から東京へ帰る新幹線の途中、全国の含硫黄塩化物泉を探してみた。今後入浴して、味わいたい。

硫黄分が多いにも関わらず中性に近くなること、緑系の色になることが共通の特徴である。

舟唄温泉テルメ柏陵健康温泉館

  • 住所: 山形県西村山郡大江町
  • 源泉名: 大江3号源泉
  • 泉質: 含硫黄‐ナトリウム・カルシウム‐塩化物泉 (高張性中性高温泉)

道の駅おおえ(国道287号線沿い)の隣接する町内最大規模の温泉施設です。大江町健康温泉館、勤労者総合福祉センターの2つの施設の総称です。
オープンは平成7年、全国的にも珍しい高濃度な泉質として知られています。エメラルドクリーン、乳白色、透明など日によって温泉の色が変わるのが特色で、町内はもちろんのこと、県内外の多くのファンに愛されています。温泉名は舟唄温泉、成分は食塩、カルシウム、硫黄などで、「やすらぎの湯」「ぬくもりの湯」の2つの内風呂ほか、50度の低温で体に優しい「トロンサウナ」も備えています。

テルメ柏陵健康温泉館 - 大江町観光物産協会HP

花咲か温泉 ゆ〜チェリー

  • 住所: 山形県寒河江市
  • 源泉名: 寒河江花咲か1号源泉
  • 泉質: 含硫黄-ナトリウム-塩化物泉 (高張性中性高温泉)

ゆ~チェリー 山形県寒河江花咲か温泉

喜連川早乙女温泉

  • 住所: 栃木県さくら市早乙女
  • 源泉名: 喜連川早乙女温泉
  • 泉質: 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉 (高張性中性高温泉)

日帰り入浴専門 喜連川早乙女温泉

近くでは喜連川温泉 道の駅きつれがわの「喜連川4号源泉」も含硫黄-ナトリウム-塩化物泉 (硫化水素型) で似ている。

小本温泉 黄金八大龍王の湯

  • 住所: 岩手県下閉伊郡岩泉町
  • 源泉名: 小本温泉 (黄金大龍王の湯)
  • 泉質: 含硫黄-ナトリウム・マグネシウム-塩化物冷鉱泉 (高張性中性冷鉱泉)

金太郎温泉 カルナの湯

  • 住所: 富山県魚津市
  • 源泉名: 金太郎温泉
  • 泉質: 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉 (硫化水素型) (高張性中性高温泉)

【公式】金太郎温泉

岩室温泉 複数施設

  • 住所: 新潟県新潟市西蒲区
  • 源泉名: 岩室4号源泉
  • 泉質: 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉 (高張性弱アルカリ性高温泉)

岩室温泉観光協会

参考資料