宿泊, 1回目, 雨後晴れ, 2020年度中48湯目

阿賀野市へのふるさと納税した返礼の宿泊券で、村杉温泉の「割烹旅館 室町」に宿泊してきた。「室町」はその名の通り割烹料理屋を営んでいた夫婦が開業した旅館であるが、放射能泉で有名な村杉温泉 薬師乃湯 3号井を使用し温泉を備えている。村杉温泉のさっぱりした温泉に長湯して心が洗われた。内湯は石膏臭が香ったので、たぶんラドンも吸えたことだろう。

施設・温泉概要

所在地: 新潟県阿賀野市村杉4806-2
Web: 村杉温泉 割烹旅館 室町
日帰り入浴: 可 9:00-18:00
宿泊: 可 13,000円〜/1人

源泉名: 薬師乃湯 3号井
湧出地: 新潟県阿賀野市村杉4593-11
湧出量: 510 ℓ/分 (掘削・自噴)
泉温: 25.2 ℃
pH: 8.6
成分総計: 239.13 mg/kg
泉質: アルカリ性単純温泉 (低張性・アルカリ性・低温泉)
旧泉質名: 放射能泉 / 放射能泉

一番良い浴槽の温泉利用方法:

加温 加水 循環 消毒

割烹料理から始まった温泉旅館

新潟県阿賀野市の五頭 (ごず) 温泉郷には出湯 (でゆ) 温泉、今板温泉、村杉温泉の3つの温泉がある。背後にある五頭山は峰が5つ有るのでそのように呼ばれている。温泉は3つなので間違えないようにしよう。阿賀野市のすぐ南には五泉市があって、ややこしい。

五頭温泉郷で一番旅館が多いのが村杉温泉で、現在7つの温泉宿がある。その理由は村杉温泉で湧く薬師乃湯 3号井が 510 ℓ/分の湧出量を持つからだ。室町、長生館、環翠楼、川上屋旅館、角屋旅館、石原館、あらせいの全てで3号井を使用している。

「割烹旅館 室町」は旅館の並ぶ通りから少し外れて建つ。6室のみの小さな旅館である。元々村杉温泉にあった割烹料理屋が、1988年 (昭和63年) に旅館も始めたそうだ[1]

村杉温泉 室町 看板
⬑ 共同浴場から長生館の前や環水楼の裏を抜けて、右に曲がり緩やかな坂を登ると看板がある

村杉温泉 室町 入口
⬑ 建物も料亭っぽい雰囲気がある

村杉温泉 室町 入口
⬑ 立ち寄り湯は営業時間を短縮中

村杉温泉 室町 フロント
⬑ 綺麗な館内

村杉温泉 室町 ロビー
⬑ 屋根のあるところが会食場

村杉温泉 室町 入浴時間
⬑ 大浴場は朝は6:00-9:30, 夜は23:00まで

村杉温泉 室町 入浴時間
⬑ 貸切露天風呂は45分間予約制

この記事では体力の都合上、旅館の感想は心の中に留め、温泉の話だけを書く。

平成29年9月にリニューアルした貸切露天風呂

館内には男女別の内湯大浴場1つずつと、貸切露天風呂が1つある。まずは貸切露天風呂へ。

村杉温泉 室町 浴室入口
⬑ 男女別の浴室の他に「貸切露天風呂 えぼしの湯」がある

村杉温泉 室町 貸切風呂 入浴時間
⬑ 貸切露天風呂は平成29年9月にリニューアル

貸切露天風呂は2〜3人サイズの浴槽と、1つのカランだけがある小さめの空間。天井は開いておらず、大きな窓が外の小庭に面した構造。目の前には木の塀があるので景色は見えず。雰囲気はあるが、露天風呂らしさは小さい。

村杉温泉 室町 貸切風呂
⬑ 小さな貸切風呂

村杉温泉 室町 貸切風呂
⬑ 浴槽縁は花崗岩、床、壁は堆積岩貼り合せ

湯口は浴槽の角にあって、ジャポジャポと湯が注がれている。湯量は多くないが浴槽も小さいので十分。湯口の中で冷たい湯と熱い湯が別々に投入され、混ざりながら樋を流れて浴槽に注がれている。冷たい方の湯は26℃の源泉と思われる。浴槽内では側面から加熱湯の注入があり、それなりの量がありそうだった。こちらは循環濾過だろう。

村杉温泉 室町 貸切風呂 湯口
⬑ 花崗岩の湯口から透明な湯が注ぐ

村杉温泉 室町 貸切風呂 湯
⬑ 全くの無色澄明な湯

村杉温泉 室町 貸切風呂 入浴中目線
⬑ 入浴中目線

少し残念な点は、浴室のすぐ隣にボイラーが有って燃焼音が響いていることだ。また、灯油の匂いが濃く流れてくるので湯に集中できない。風向きが悪かったのかもしれない。

石膏臭とラドンを楽しむ内湯

食事を挟み、次は大浴場で入浴した。あと朝にも入った。

村杉温泉 室町 内湯脱衣場
⬑ 内湯へ

村杉温泉 室町 内湯
⬑ 内湯大浴場は少し古め

村杉温泉 室町 内湯湯口
⬑ 湯が激しく投入されている

浴槽は5人が並んで入浴できる程度の大きさだが、幅的に足を完全に伸ばすことはできない。浴槽はタイル張り、浴室壁はやや年季の入りが感じられた。

浴槽角に湯口があり、ドバドバとすごい勢いで湯が注がれている。湯は新湯・循環湯の混合と思われる。勢いはかなりの強さで、浴槽の水面は大きく波を立てながら流れている。湯口の上部には薄い石膏析出物の層が出来上がっていた。

村杉温泉 室町 内湯
⬑ 反対側の角から湯口の見る

村杉温泉 室町 内湯の湯
⬑ 無色澄明の湯

湯は無色透明、無味、無臭で特徴は少ない。ただし、浴室内には石膏臭が満ちていて驚いた。うれしい。塩素消毒の匂いは感じられなかった。空気はやや籠もっているが、温泉のラドンは蒸散して空気中に広がっているので、これが適切な放射能泉の入浴方法だろう。

湯の温度は42℃以上あり、籠もった浴室ではやや熱い。浴感に特徴無く井水と区別しろと言われたら自信が無い。なかなか温まり、湯から上がったあともしばらく汗が滴った。

村杉温泉 室町 内湯入浴中目線
⬑ 入浴中目線

浴室内は湯の注ぐ音で満ちていて賑やかだった。浴室外の廊下でも少し聞こえる程だ。

村杉温泉 室町 入浴方法
⬑ オリジナル? 鯛つり様が教える上手な温泉入浴法

温泉の成分

温泉分析書は貸切風呂、内湯の両方の壁に掲示されていたような記憶がある。

村杉温泉 室町 貸切風呂 温泉分析書
⬑ 源泉は共同の「薬師乃湯 3号井」

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 薬師乃湯 3号井
湧出地: 新潟県阿賀野市村杉4593番地11
分析年月日: 平成23年5月2日

湧出量 510 リットル/分 (掘削自噴)
pH 8.6
泉温: 25.2 ℃ (調査時外気温18℃)
泉質 アルカリ性単純温泉 (低張性・アルカリ性・低温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 238.93 mg/kg
成分総計 239.13 mg/kg
ラドン (Rn) 136.6×10^-10 Ci/kg (37.6 マッヘ/kg)

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
リチウムイオン (Li+)0.000.000.00
ナトリウムイオン (Na+)50.402.1959.35
カリウムイオン (K+)1.400.041.08
アンモニウムイオン (NH4+)0.400.020.54
マグネシウムイオン (Mg2+)0.300.020.54
カルシウムイオン (Ca2+)28.301.4138.21
ストロンチウムイオン (Sr2+)0.300.010.27
アルミニウムイオン (Al3+)0.000.000.00
マンガンイオン (Mn2+)0.000.000.00
鉄 (II) イオン (Fe2+)0.000.000.00
亜鉛イオン (Zn2+)0.000.000.00
陽イオン計81.13.69100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.600.031.13
塩素イオン (Cl-)9.500.2710.15
臭素イオン (Br-)0.000.000.00
ヨウ化物イオン (I-)0.300.000.00
硫化水素イオン (HS-)0.000.000.00
チオ硫酸イオン (S2O32-)0.000.000.00
硫酸水素イオン (HSO4-)0.000.000.00
硫酸イオン (SO42-)84.401.7666.17
亜硝酸イオン (HNO2-)0.000.000.00
リン酸水素イオン (HPO42-)0.000.000.00
炭酸水素イオン (HCO3-)36.600.6022.56
炭酸イオン (CO32-)0.000.000.00
陰イオン計1312.66100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)26.300.34
メタホウ酸 (HBO2)0.100.00
非解離成分計26.400.34
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)0.200.00
遊離硫化水素 (H2S)0.000.00
溶存ガス成分計0.200.00
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.030.00
総水銀 (Hg)不検出 (0.0005 mg/kg 未満)--
クロム (Cr)不検出 (0.005 mg/kg 未満)--
鉛イオン (Pb)不検出 (0.005 mg/kg 未満)--
カドミウムイオン (Cd)不検出 (0.001 mg/kg 未満)--
微量成分計0.030.00

下記にも掲載しました。
薬師乃湯 3号井 - 湯花草子

村杉温泉 源泉槽
⬑ 村杉温泉薬師堂横にある貯水槽 3号井かはわからなかった

村杉温泉 室町 温泉
⬑ 2001年に発見された3号井は、国内最大級の204.7マッヘ、ラジウム泉にしては脅威的な483リットルの湧出量を誇る

飯豊山付近の地下には花崗岩が広がり、白亜紀頃に形成され、中新世後期頃 (約2,000万年前) から地上付近まで上昇した。この花崗岩中を通り放射能を帯びた温泉が、新発田-小出構造線の断層に沿って上がってきて湧いたのが五頭温泉郷の温泉と呼ばれている [2]。ちなみに、胎内、新発田あたりで湧く石油や石油混じりの温泉は、この花崗岩の岩盤に海水等が貯留されて生成されたものだ。全く異なる泉質の温泉も関係しているのだ。ロマンある。


  1. 初めてのお客様へ | 割烹旅館 室町 ↩︎

  2. 地質学的見地からみた放射能泉│村杉ラジウム温泉 奇跡の効能ラボ ↩︎