連休を利用して群馬県の湯巡りをしている。3日目は草津温泉で共同浴場巡りをした。
草津温泉には大小100以上の源泉があり、そのうち7つの源泉が、19箇所の共同浴場のいずれかで使われている。詳しくは少し前の記事に書いた。
今回の訪問では「煮川乃湯」「長栄の湯」「凪の湯」「喜美の湯」「翁の湯」「瑠璃の湯」「躑躅の湯」「長寿の湯」「白嶺の湯」の9箇所を巡った。「煮川乃湯」「長栄の湯」については その2 に、「凪の湯」「喜美の湯」については その3 に書いた。
この記事では「翁の湯」「瑠璃の湯」について記録する。
お約束だが、草津町の共同浴場は地元の方が生活の場として利用しているものであり、観光客向けに推奨されているのは「白旗の湯」「千代の湯」「地蔵の湯」だけである。それ以外の共同浴場は伝統的な「もらい湯」の精神に則り、地元の好意で入浴を許可されている。草津温泉の文化とマナーを理解した上で慎ましく入浴すること。
翁の湯
日帰り 1回目 曇り後雨
「喜美の湯」のあとは「翁の湯」にやってきた。今日は夜明けからはしご湯を始め、5回目の入浴である。そんなに入ってどうするの、と思うかもするかもしれないが、すっかり病み付きになってきている。草津温泉の湯はほどよい疲労感があり、一度上がっても少し時間が経つとまた入りたくなるような引力がある。
現在は朝の9:10。実は「喜美の湯」まで行く前に一度ここに立ち寄ったのだが、掃除中だったので後回しにした。「翁の湯」は7:30〜9:00頃が清掃時間である。
場所は、湯畑周辺の窪地から国道まで上っていく中腹あたりにある。大きなホテルとの位置関係で言うと「望雲」と「櫻井」の間を通る道路沿い (しゃくなげ通り) にある。「望雲」の駐車場から車が頻繁に出入りしていた。
「翁の湯」では湯畑源泉を使用している。この源泉は草津温泉のシンボルでもある湯畑から自噴している。51℃の高温で湧き出した源泉は、そのまま湯樋を流れて衆目の目を楽しませつつ温度を下げ、そして各施設に引湯パイプで送られる。湧出量は 4,040ℓ/分 で万代鉱に次ぎ多い。共同浴場19箇所のうち、10箇所がこの源泉を使用していて、共同浴場では最もメジャーな源泉だ。
草津町内で引湯パイプがどのように張り巡らされているのか、興味がある。どこかに資料は無いだろうか。
↑ 写真: 翁の湯 外観
翁の湯はどっしりして立派な外観。清掃時間終了後すぐに訪れ、一番風呂をいただいた。
↑ 写真: 翁の湯 脱衣場
浴室は旅館の内湯のような雰囲気があり、他の共同浴場とは少し趣が異なる。浴槽縁は御影石、底と壁面下部は石張り、男女浴室間の仕切りこそコンクリートだが、それ以外は木張りである。
↑ 写真: 翁の湯 浴室
温泉の利用方法と浴感
浴槽は四角形で4人が入浴できる大きさ。壁面下部に取り付けられた湯口から透明な湯がジャバジャバと注がれている。湯は浴槽手前からオーバーフローして洗い場床に流れ出している。
↑ 写真: 翁の湯 浴槽
湯口は蛇口状の小さく素朴なもの。硫黄の析出物?で白くなっている。
↑ 写真: 翁の湯 湯口
浴槽の温度は42℃くらいで草津温泉にしては温め。湯畑源泉は草津でも平均か軽めの泉質をもつこともあってか、身体が一気に疲れることはなく、じっくりと入浴できた。一方で湯から上がってからはかなりのぼせたし、大量に汗が出た。この温まり感は楽しい。
湯の見た目は無色透明で、見る角度によってわずかに青白か緑白がかっている。浴槽の底はよく見える。浴槽の石造りがよく映える。
↑ 写真: 翁の湯 浴槽
湯口から出る湯をコップに汲んで飲んでみると、凪の湯と似た味だが、レモネードのような酸味は弱く、一方で胃液のようなクリーミー味は強く感じた。他、多少の金属的な苦味あり。
匂いは薄い硫化水素臭。
肌触りはやはりヒリヒリする。昨日バイクで走った頬上部の日焼けと、タオルの絞り過ぎで荒れた指先が痛かった。指先だけ湯から上げて入浴した。
温泉の成分
↑ 写真: 翁の湯 温泉分析書
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 草津温泉 (源泉名: 湯畑)
湧出地: 群馬県吾妻郡草津町大字草津字西町403-1 403-2
分析年月日: 平成25年5月15日
湧出量 測定せず (自然湧出)
pH 2.1
泉温: 51.3 ℃ (調査時における気温7℃)
泉質 酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 (硫化水素型) (低張性・酸性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 1648.07 mg/kg
成分総計 1691.87 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
水素イオン (H+) | 8.91 | 8.84 | 36.53 |
ナトリウムイオン (Na+) | 56.00 | 2.44 | 10.08 |
カリウムイオン (K+) | 27.50 | 0.70 | 2.89 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 36.30 | 2.99 | 12.36 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 73.50 | 3.67 | 15.17 |
アルミニウムイオン (Al3+) | 43.80 | 4.87 | 20.12 |
マンガンイオン (Mn2+) | 1.68 | 0.06 | 0.25 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 17.50 | 0.63 | 2.60 |
陽イオン計 | 265 | 24.2 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 9.90 | 0.52 | 2.11 |
塩素イオン (Cl-) | 311.00 | 8.77 | 35.64 |
臭素イオン (Br-) | 1.30 | 0.02 | 0.08 |
硫酸水素イオン (HSO4-) | 192.00 | 1.98 | 8.05 |
硫酸イオン (SO42-) | 640.00 | 13.32 | 54.12 |
陰イオン計 | 1154 | 24.6 | 100.00 |
(3) 遊離成分
非解離成分:成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタケイ酸 (H2SiO3) | 216.00 | 2.77 |
メタホウ酸 (HBO2) | 8.20 | 0.19 |
硫酸 (H2SO4) | 4.30 | 0.04 |
非解離成分計 | 228.50 | 3.00 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 36.70 | 0.83 |
遊離硫化水素 (H2S) | 7.10 | 0.21 |
溶存ガス成分計 | 43.80 | 1.04 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.17 | 0.00 |
総水銀 (Hg) | 検出せず。(0.0005 mg/kg未満) | -- |
銅イオン (Cu) | 検出せず。(0.002 mg/kg未満) | -- |
鉛イオン (Pb) | 0.009 | 0.00 |
微量成分計 | 0.18 | 0.00 |
泉質は、西の河原源泉と煮川源泉の中間にあたる感じ。
下記ページにも登録しました。
翁の湯 - 湯花草子
このあと昼食 (朝食?)。適当に歩いていたら弁当屋「なかざわ弁当」が営業しているのが見えたので入った。店内でのり唐揚げ弁当を食べていると、外では雨が強くなるのが見えた。
↑ 写真: なかざわ弁当 のり唐揚げ弁当
瑠璃の湯
日帰り 1回目 雨
雨の中を歩いて共同浴場「瑠璃の湯」にやってきた。
「喜美乃湯」「翁の湯」と湯畑源泉2連続になってしまったので、そろそろ万代鉱に入ろうと思って「躑躅 (つつじ) の湯」を本当は目指していたのだが、漢字を読み間違えて「瑠璃の湯」に来てしまった。ここも湯畑源泉だ。
「瑠璃の湯」は、湯畑から延びる中央通り沿いにある。少し坂を登ると草津バスターミナルがあり、バスでやってきた人達が通りをキャリーケースを引いて歩いていた。ホテルをチェックアウトしてすぐに帰る人達だろう。「瑠璃の湯」は人の往来も絶えない通りにあるのに、共同浴場は地味でうっかりすると通り過ぎてしまう。
↑ 写真: 瑠璃の湯 外観
↑ 写真: 瑠璃の湯 脱衣場
外観、内装ともに渋い感じ。
温泉の利用方法と浴感
浴槽は最大4〜6人が入浴できる大きさ。五角形で手前が広く、奥が狭くなっている。下の写真では魚眼カメラで撮ったみたいになっているが、そうではなくて浴室の奥側が狭まっているのでそう錯覚する。撮影したのは普通のスマートフォンのカメラだ。
↑ 写真: 瑠璃の湯 浴室
浴槽は白いコンクリートで覆われたシンプルなもの。
湯口は右手側にあってシンプルな蛇口が付けられている。湯はなかなかの勢いで放出されており、共同浴場の中でも量が多い方。
↑ 写真: 瑠璃の湯 湯口
湯の見た目は、斜め方向からは青白く、真上からは緑白。今日ここまで入浴してきた湯と同じ感じである。白いコンクリートに白みがかった湯は視覚的な相性が良い。
↑ 写真: 瑠璃の湯 湯
温泉の温度は43℃くらい。ここはそこまで風通しが良いわけでは無いためか、少し熱く感じた。ただ中毒性のある浴感でクセになり、最後のつもりで入ったあとも、休んでいたらまた入りたくなり再入浴、というループを繰り返した。
味や匂い、肌触りについては、先述の「翁の湯」や他の湯畑源泉使用の浴場と違いが感じられなかったので省略する。
温泉の成分
「翁の湯」で書いたものと同じ「湯畑源泉」のため割愛する。
千歳の湯
千歳の湯の前まで行ったが混んでいたので入浴しなかった。
↑ 写真: 千歳の湯 外観