この記事では入浴しないし、飮泉も無い。

今日は草津温泉の共同浴場巡りを楽しみ、日の出から9時間かけて9箇所に入浴したが、残りの楽しみは今後に回して最後に万代鉱の源泉を見に行った。

草津温泉には大小100以上もの源泉があり、湧出量を合計すると 32,300ℓ/分 で日本一の自然湧出量になる。その中でも最大の湧出量を誇るのが万代鉱 (ばんだいこう) 源泉で、単独で 6,200ℓ/分の湯が湧き出している。また、温度 94.5℃、pH 1.60で、温度、酸性、成分のいずれをとっても草津町内最強の温泉である。もちろん全国でもトップクラスである。

万代鉱源泉はあまりに濃いためか、地元民にも観光客にも「地蔵源泉の方がよい」と言われてしまうちょっと不遇なやつだ。実際、私が今日に入浴してみても、万代鉱以外の源泉ならば入浴後「もっと入浴したかった」と思ったのに対し、万代鉱の場合は「今日はもういいかな。帰って寝よう」という気持ちになった。

万代鉱源泉はもともと自噴していたわけではなく、1970年、万代硫黄鉱山の掘削中に坑内から湧き出した。鉱山はそのまま閉山されたが、温泉はその後、1975年から熱交換のうえ温泉街への引湯を開始し、現在は西の河原露天風呂や共同浴場、数多くのホテル、旅館で使用している。

硫黄鉱山というのは現在ではあまり馴染みの無いものだが、1900年初頭〜1970年頃には草津白根山周辺にいくつもの硫黄鉱山が開山され、硫黄が採掘されていた。当時は火薬や化学肥料のために大変高価に売れ「黄色いダイヤ」とさえ呼ばれたのだという。その後、技術の進歩により石油等から安価に生産することが可能になったことで採算が取れなくなり全てが閉山された。

その鉱山跡、すなわち源泉湧出地は湯畑の真西1.5km付近。草津町内の西端にあるマンション「マウントマリーナ」の裏から登山道を登っていった先にある。

殺生自然遊歩道案内図
↑ 写真: 殺生自然遊歩道案内図

登山道入口
↑ 写真: 登山道入口

訪問時は3月。町には雪など全く無いが、少し山道に入っていくと雪が積もっていた。深くても20cm程度の浅い雪だが、気温と雨のせいで微妙に溶けており歩きにくかった。汗と、万代鉱に近付くにつれて雨も強くなってくる雨に濡れながら登山道を登った。

万代鉱への雪道
↑ 写真: 万代鉱への雪道

途中、万代鉱源泉の引湯パイプからのガス抜きと思われる設備が何箇所かあった。近付いてみると、時々濃厚な硫化水素臭が香った。

ガス抜き1
↑ 写真: 背の低いガス抜き

ガス抜き1 拡大
↑ 写真: 少し温泉が漏れていた

ガス抜き2
↑ 写真: 背の高いガス抜き

ガス抜き3
↑ 写真: 立派なガス抜き

ガス抜き4
↑ 写真: 下向きなガス抜き

なぜかバリエーション豊かなガス抜きを通り過ぎながら無心で歩いて、登り切ると遠くに巨大な湯気が見えた。雲が引っ掛っているわけではなさそうだ。

湯気
↑ 写真: 湯気

万代鉱源泉
↑ 写真: 万代鉱源泉

山の中に、濛々と湯気を上げる青白い池が現われた。これが万代鉱。

万代鉱源泉
↑ 写真: 万代鉱源泉1

真ん中に明らかに人工的な窪みがあるが、何なのかわからない。

万代鉱源泉
↑ 写真: 万代鉱源泉2

これより先は手を伸ばして撮影。

万代鉱源泉
↑ 写真: 万代鉱源泉3

万代鉱源泉
↑ 写真: 万代鉱源泉4

太いパイプから温泉がすごい勢いで放出されていた。このパイプがかつての硫黄鉱山の坑道に挿さっているのだろう。ちなみにこれは温泉街へ引湯せずに棄てているものらしい。

帰ってきてから復習したところによると、もっと奥に大きな煙突があって地面に刺さっており、膨大な湯気を上げているらしい。残念ながらこれは見なかった。まあ立入禁止だし。