晴れ 日帰り 1回目
連休を利用して群馬県で湯巡りをしている。今日は、尻焼温泉露天風呂、応徳温泉「くつろぎの湯」、林温泉「かたくりの湯」と入浴し、次に六合赤岩温泉「長英の隠れ湯」にやってきた。
周辺の地理と歴史
群馬県北西部の中之条町は温泉天国な地域で、例えば四万温泉、沢渡温泉が特に有名である。町内の西部を南北に流れる白砂川の流域には、上流から尻焼温泉、花敷温泉、京塚温泉、応徳温泉、湯ノ平温泉 (閉鎖)、六合赤岩温泉が並んで存在する。白砂川に上流で西側から合流してくる川は草津の他、白根山、横手山、鉢山などの火山群を源流域にしており、温泉として営業してはいないが無数の源泉が湧いている。六合赤岩温泉は白砂川沿いで最も麓側にある温泉。
泉質はアルカリ性単純温泉で、成分を見てみるとナトリウムイオン、硫酸イオンが相対的に多い。付近の温泉と比べると薄く硫黄分もずいぶんと少ないのは何故だろう?だいぶ下流に来て地下水が混ざっているとかだろうか。
白砂川の川岸には赤岩という地区があり、近代に養蚕が盛んに行なわれていたという。古い町並みが残されており、2006年に重要伝統的建造物群保存地区に指定された [1]。江戸時代の蘭学者である高野長英は幕末の動乱の中で捕えられた (蛮社の獄) が、その後脱獄し逃亡生活を送った。追手から逃れる暮らしを送る中で赤岩地区の湯本家に一時匿われていたと言われている。六合赤岩温泉は、この赤岩地区にあり、高野長英にちなみ「長英の隠れ湯」と呼ばれている。
温泉施設はかつて集落の北のはずれにあり、公営の立派な日帰り入浴施設として経営していたが、2015年3月末に閉鎖、2019年5月末に集落の中心近くに移転し小さな共同浴場として復活した [2]。現在の位置は非常にわかりにくいが、火の見櫓の横の小道に入り山側へ20mほど上がると着く。火の見櫓の下には地味な看板が立てられているが、それに気付かず、バイクで集落内を4周も走り回った。旧「長英の隠れ湯」の建物はまだ残されており、行ってみたが、キャンピングカーが停まってバーベキューを楽しんでやがったりして、一斉に見られた上に犬に追い掛けられた。一体なんだったんだ。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 火の見櫓下の看板
ちなみに、入浴後に服を着ているとき地元の方から聞いた話によると、温泉施設としてまだ役所に正式に認められていないため、ちゃんとした看板を出していないとのことだ。今はどうなったかわからない。
施設
長英の隠れ湯の建物は小さいが新しく綺麗な感じ。あまり家っぽくは無いので共同浴場だが、入りやすく感じた。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 正面
入口には利用可能時間の貼り紙。
入館時間 (冬期間 十二月より)
午前十時〜午後六時半まで
午後七時〜掃除時間
定休日は木曜です
↑ 写真: 長英の隠れ湯 貼り紙
建物の外には温泉槽もあった。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 温泉槽
入口には施設管理協力金を入れる木箱。金額は1人1回 100円である。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 料金箱
料金を入れて戸を開けると脱衣場。小部屋だが、不釣り合いなほどにちゃんとした洗面台が設置されていた。写真には撮っていないが。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 脱衣場
この左手側の戸を開けると浴室。浴槽には木板が敷かれていた。入浴するときにはこれを勝手によけるシステムだ。源泉温度が低いので冷まさないようにする工夫だろう。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 木蓋のされた浴槽
シャワーは2つあった。なかなか実用的な共同浴場だ。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 シャワー
温泉の利用方法と浴感
浴室には小さい内湯が1つ。正方形に近い浴槽で、3人くらいが入浴できる大きさ。浴槽縁と湯口は御影石で作られてカッチリした感じだ。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 浴室
↑ 写真: 長英の隠れ湯 浴槽
湯口は浴槽の角にあり、ぬるめの湯がチャポチャポと流れ出している。湯量はあまり多くない。源泉がぬるいため、湯口のすぐ隣に熱湯の出る蛇口も設置されており、これで温度調整できるようになっていた。もちろん蛇口の方は使わず。浴槽の温度は38℃くらいで、首都圏ならば不感温度とされるような温度だった。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 湯口
湯は綺麗に澄んだ無色透明で、ただの水と区別が付かない。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 透明な湯
味、匂いも特に無かった。肌触りも特徴は無し。
ぬるめのさっぱりした湯が掛け流しされているときの楽しみと言えば、仮眠だ。完全貸切状態だったので、入浴したまま1時間も浸かって寝てしまった。湯口から湯の注がれる音だけが響く素敵な空間だった。まだまだ浸かっていたかったが、湯巡りしないといけないので、別れを惜しみながら去った。
温泉の成分
温泉分析書は脱衣場に掲示されていた。
↑ 写真: 長英の隠れ湯 温泉分析書
以下は分析書の内容を自前のソフトに入力して書き起したもの。
源泉名: 六合赤岩温泉 (源泉名: 長英のかくれ湯)
湧出地: 群馬県吾妻郡中之条町大字赤岩字中野617-2
分析年月日: 平成26年2月20日
湧出量 76.9 ㍑/分 (動力揚湯)
pH 8.9
泉温: 42.6 ℃ (調査時における気温6℃)
泉質 アルカリ性単純温泉 (低張性・アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 633.63 mg/kg
成分総計 633.63 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
ナトリウムイオン (Na+) | 143.00 | 6.22 | 88.10 |
カリウムイオン (K+) | 10.10 | 0.26 | 3.68 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 0.12 | 0.01 | 0.14 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 11.00 | 0.55 | 7.79 |
ストロンチウムイオン (Sr2+) | -- | -- | -- |
アルミニウムイオン (Al3+) | <0.05< td> | -- | -- | 0.05<>
マンガンイオン (Mn2+) | 0.02 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 0.44 | 0.02 | 0.28 |
陽イオン計 | 165 | 7.06 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 2.40 | 0.13 | 1.85 |
塩素イオン (Cl-) | 36.30 | 1.02 | 14.53 |
硫化水素イオン (HS-) | -- | -- | -- |
硫酸イオン (SO42-) | 234.00 | 4.87 | 69.37 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 6.10 | 0.10 | 1.42 |
炭酸イオン (CO32-) | 27.00 | 0.90 | 12.82 |
陰イオン計 | 306 | 7.02 | 100.00 |
(3) 遊離成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタケイ酸 (H2SiO3) | 156.00 | 2.00 |
メタホウ酸 (HBO2) | 7.10 | 0.16 |
非解離成分計 | 163.10 | 2.16 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 0.00 | 0.00 |
遊離硫化水素 (H2S) | 0.00 | 0.00 |
溶存ガス成分計 | 0.00 | 0.00 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.05 | 0.00 |
総水銀 (Hg) | 検出せず。(0.0005 mg/kg未満) | -- |
銅イオン (Cu) | 0.05未満 | -- |
鉛イオン (Pb) | 検出せず。(0.005 mg/kg未満) | -- |
カドミウムイオン (Cd) | -- | -- |
亜鉛イオン (Zn) | 0.01未満 | -- |
微量成分計 | 0.05 | 0.00 |
メタけい酸が 156 mg/kg も含まれているのは驚きだ。普段使いに最適な温泉だと思う。