日帰り 1回目 晴れ
天翔の湯は京都市内の温泉銭湯。
右京区にあり、公共交通期間ならば、阪急京都線の西京極駅から歩くのが一番近い。
京都で稀少な源泉掛け流し
京都には温泉が少ないイメージがあるが、意外にも市内には源泉かけ流しを謳う温泉施設が2軒だけある。
その内の1つがここ天翔の湯 大門である。
ただし温泉分析書に書かれている通り、現在は多少の循環を行なっているようだ。
とはいえ冷たい源泉も直接浴槽に注いでおり、なかなか良い湯の使いかたをしている。
天翔の湯のWebページから温泉の紹介を引用してみる:
天然温泉 天翔の湯は、京都で初の天然温泉がご利用できる銭湯です。
2005年9月から天然温泉の掘削工事を開始致しました。
そして、2006年5月に地下1000mから、天然温泉を掘り当てました。
掘削工事は8ヶ月を要しました。
天然温泉の源泉名は、「天翔の湯」と命名致しました。泉質は、温泉分析の結果、ナトリウム-塩化物泉(純食塩泉)で、療養泉に認定されました。
塩分の濃度は海水の3割ほどで、塩分を含んだお湯は保温性が高く、湯冷めしにくいのが特徴です。飲用にもご利用できる天然温泉となりました。飲むと便秘解消にもなります。浴用の効能・飲用の効能についての詳細は、下記に記載しております。天然温泉の源泉温度は、35.5℃ (気温21.4℃) です。
湧出量は。165L/min (動力) です。
京都で初の天然温泉というのは言い過ぎではないかと思うが、
源泉をそのまま利用し飮泉も可能な湯を天然温泉と呼んでいるならば、間違っていないはず。
営業時間は14:00-25:00。もし近くに住んでいたなら、もう少し朝からやっていていて欲しいと思うだろう。
なお、源泉掛け流しの温泉施設は2軒あると書いたが、もう1軒は西京区の桂温泉 仁左衛門の湯。
以下では京都市内の温泉について簡単に列挙してみる。
京都桂温泉 仁左衛門の湯
仁左衛門の湯は日帰り入浴施設。
2つの源泉を持っており、なんとそれぞれの源泉について源泉掛け流しの浴槽があるらしい。
源泉1つ目は京都桂温泉。25.7℃の単純温泉で、湧出量86L/分 (掘削・動力揚湯)。
2つ目は京都桂温泉2号。47.8℃のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で、湧出量190L/分 (掘削・動力揚湯)。
くらま温泉
ごく僅かながら単純硫黄泉が自然湧出しているらしい。
1号源泉は単純硫黄泉 (硫化水素型)、湧出量2.5L/分、泉温15.9℃、2号源泉は単純硫黄泉 (硫化水素型)、湧出量5.8L/分、泉温13.4℃。
冷泉で温度も低いため、加温有り、加水有り、循環消毒有りでの利用のようだ。
大原温泉
大原温泉にはいくつか旅館があるようだ。
単純温泉を基本的に加温有り、加水無し、循環消毒有りで利用している。
大原の里のWebページには温泉分析書が掲載されている。
大原山荘では、露天風呂の壺風呂で源泉そのまま100%で半掛け流しらしい。
おそらく源泉と循環湯の混合のことであろう。
竹の郷温泉
他にはホテル京都エミナースでは京都竹の郷温泉 (単純温泉)、竹の郷温泉2号井戸 (ナトリウム炭酸水素塩泉) を加温有り、加水無し、循環消毒有りで利用している。打たせ湯のみ源泉掛け流しとのこと。
京都竹の郷温泉は泉温41.5℃で京都では珍しい (ほぼ) 高温泉。
湧出量はそれぞれ137L/分と180L/分でなかなか多め。
嵯峨野温泉
さがの温泉 天山の湯ではさがの温泉 (ナトリウム・カルシウム塩化物泉) を加温有り、循環消毒有りで利用している。壺湯は源泉と循環湯の混合らしい。
スパ・トリニテ温泉
ホテルモントレ京都の最上階にある温泉。
泉質は含鉄-ナトリウム-塩化物温泉。
加温有り、加水無し、循環消毒有りの源泉浴槽があるらしい。
【公式】スパ施設(スパ・トリニテ)のご案内|ホテルモントレ京都|烏丸駅近くのホテル(京都府京都市)
ラウンジルームということで銭湯とは異なるようで、日帰り入浴2,500円とハードな料金設定。
エクシブ京都八瀬離宮温泉
エクシブ京都八瀬離宮という大きいホテルの大浴場では、エクシブ京都八瀬離宮温泉を利用している。
26.2℃の単純温泉である。
ソフトな浴感の強塩泉
浴室に入ると正面に浴槽が見えるが、それらは全て地下水を沸かしたものである。
浴槽を左手に回り込み、奥の間に進むと左手にまた浴槽があるが、これは水素風呂で、これも温泉ではない。水素風呂とは反対側にひっそりと扉があり、それを開けるとその先に露天風呂があり、これが温泉を使った浴槽である。はじめ温泉浴槽がどこにあるかわからず、水素風呂に少しの間だけ浸かって作戦を練ることになった。
露天風呂は8人くらいが入浴できそうな大きさのもの。入浴客は多くなかったのでかなり広々と過ごすことができた。低い岩風呂の上に竹壁を立てた浴槽。
浴槽の右端にメインの湯口。44℃程の熱めに加温された湯が注がれていた。
また、湯口の他、浴槽底からの注入があった。これも加熱した湯が出ていると思われる。
おそらく一部循環している。
他に壁面から穴が飛び出しており、冷鉱泉がジョロジョロと注がれていた。
これは源泉がそのまま使われているようだ。
穴の傍らには飲用の効能という掲示があり、飲用を推奨されている。
コップの設置は無いが地元の方も普通に飲んでいた。
もう一箇所、冷鉱泉の湯口と思われるものがあったが、ここは止められており何も流れていなかった。触ってみた温度から、冷鉱泉を出すことができる口であると思った。
源泉を飲んでみると、強い鹹味と、しつこく口に残る強い苦味があった。
舌の側面に苦味がべったりと残ったのが特徴的だった。
病み付きになる苦味で何度も飲んた。
湯の色は淡茶色透明。見通しは50cmほどでぎりぎり浴槽の底が見えないくらいの透明度だった。
浴槽温度40℃ほど。泉質は強塩泉だが、ずっと入浴したままでいてもあまり暑くならなかった。
しかし一度温まってしまうと浴後の暑さは長続きし、汗が良く出た。
匂いは優しい潮の香りと思った。
全体的には、強塩泉としての特徴をしっかりと持ちながらもソフトな浴感で、入浴しやすかった。
源泉名は「天翔の湯」。分析年月日は2016.9.21。湧出量は165L/分 (掘削・動力揚湯)、pH 7.2、泉温34.1℃、溶存物質 (ガス性のものを除く) 13740mg/kg、成分総計 13760mg/kg、泉質はナトリウム-塩化物温泉 (高張性・中性・温泉)。
成分は以下の通り:
陽イオンは、
ナトリウムイオン (Na) 3459mg/kg 150.5mval/kg 64.81mval%、
カルシウムイオン (Ca) 840.1mg/kg 41.92mval/kg 18.06mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 434.6mg/kg 35.76mval/kg 15.40mval%、
カリウムイオン (K) 47.4mg/kg 1.21mval/kg 0.52mval%、
アンモニウムイオン (NH4) 7.7mg/kg 0.43mval/kg 0.18mval%、
バリウムイオン (Br) 25.5mg/kg 0.37mval/kg 0.16mval%、
略、
鉄 (III) イオン (Fe3) 4.3mg/kg 0.15mval 0.07mval%、
鉄 (II) イオン (Fe2) 1.1mg/kg 0.04mval 0.02mval%
以下略、
計 4891mg/kg 232.2mval。
陰イオンは、
塩化物イオン (Cl) 8634mg/kg 243.5mval/kg 99.03mval%、
炭酸水素イオン (HCO3) 120.8mg/kg 1.96mval/kg 0.81mval%、
臭素イオン (Br) 21.4mg/kg 0.27mval/kg 0.11mval%、
以下略、
計 8787mg/kg 245.9mval。
遊離成分で非解離成分は、
メタほう酸 (HBO2) 33.2mg/kg 0.76mmol/kg、
メタけい酸 (H2SiO3) 24.0mg/kg 0.31mmol/kg、
以下略、
計 57.2mg/kg 1.07mmol/kg。
溶存ガスは、
遊離二酸化炭素 (CO2) 29.4mg/kg 0.46mmol/kg、
以下略、
計 20.4mg/kg 0.46mmol/kg。
京都新聞には温泉が塩分を多く含む理由が書いてあった。
関東の古代海水とは異なる成因の湯を利用しているようだ。
記事によると、
- 京都市内では地下1000mまで温泉を掘る大深度温泉が多くなりつつあり、天翔の湯もその一つである。
- これら大深度温泉では京都〜神戸の地下にある丹波層群の断層部分から湯を汲み上げている。
- 太平洋の海底に体積したチャートや石灰岩が、プレートに乗って運ばれてきて、大陸プレートとぶつかったところにぶつかって溜まってできた層。
- 丹波層は塩分や太古の深海成分を多く含んでおり、これが断層部分で砕けた隙間に通った水に溶け込んでいる。
- そのため、大深度温泉では塩分を多く含む
とのこと。
以下の論文も京都自然史研究所の西村理事長による著: