日帰り, 1回目, 曇り時々雨, 2020年度中50湯目
村杉温泉を後にして、阿賀野川上流の「咲花温泉 柳水園」にやって来た。咲花温泉の6号井を使っており、とても新鮮で硫黄臭のある湯に身も心もシャキッとするような気がした。今度また泊まりで訪れたい。
荒廃した浴室と、美しいターコイズブルーの浴槽は、視覚的に強烈に印象的である。
施設・温泉概要
所在地: 新潟県五泉市佐取7241
Web: 柳水園 | 咲花温泉旅館協同組合
日帰り入浴: 可 9:00-21:00
宿泊: 可 6,000円-
源泉名: 咲花温泉 6号井
湧出地: 不明
湧出量: 450 ℓ/分? (7軒の温泉旅館で共有)
泉温: 48.3 ℃
pH: 7.8
成分総計: 1028 mg/kg
泉質: 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 硫黄泉 / 硫黄泉 / 含食塩硫黄泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
無 | 無 | 無 | 無 |
朽ちた浴室と宝石のように輝く浴槽
阿賀野川は猪苗代や奥只見の広大な地域を流域とする大きな川で、流域面積は日本で8位の7,710平方キロメートル [1]。奥会津では荒海川、会津では阿賀川と呼ばれ、喜多方で只見川と合流したあと、新潟県との県境で阿賀野川に名を変えて新潟市で日本海に注いでいる。咲花温泉は阿賀野川の左岸に湧く温泉。かつては「先鼻」と呼ばれていたが明治期までは川湊も無い地域だった。温泉は小規模に湧出し、地元で共同風呂として使用していたらしい。その後、1954年 (昭和29年) に温泉井戸を掘削し地下19mで57℃の温泉が湧出すると、旅館を開業し、翌年地名を「咲花」へ変更した [2]。現在は7軒の温泉旅館があり「咲花 6号井」源泉を共同で使用している。「咲花 7号井」を使っている施設もあるようだ。源泉は少し前まで「碧水荘」と「佐取館」の間に建つ「湯元館」の駐車場にある [3]。「湯元館」は2016年に閉館し今は営業していない。
「柳水園」は阿賀野川から少し離れた陸地側にある、和室10部屋の温泉旅館。ちょうど最近柳水園ものがたり という本が出版されたらしい。
⬑ 新潟県道353号線から看板を右に入る
⬑ 正面から柳水園
⬑ 旅館内はジャコウの香りが漂い、どことなく悲しげな雰囲気だった
⬑ やや痛んだ脱衣場
脱衣場の扉を開けると、硫黄の香りと、ボロボロの浴室、ターコイズブルーに美しく輝く浴槽が目に飛び込んできた。壁面は朽ちて荒廃し、痛々しい姿を晒している。元々壁一面を覆っていただろうタイルはほぼ全てが剥がれ落ちて残っているところの方が少ない。特に湯口周辺の上部は何層も剥がれて、最奥のコンクリートまで剥き出しになっている。硫黄により腐食したのだろう。一方で、浴槽の縁を跨ぐと別世界のように綺麗なタイル張りになっている。退廃的な雰囲気の中にある聖域のような浴槽が、あまりに美しく目を奪われる。さながら青池のようだ。
⬑ 芸術的なまでに美しい浴槽
⬑ 荒廃した壁面
⬑ 浴室全体の損傷は激しい
硫黄と鉱油の匂いの混じる温泉
浴槽は1つのみで、6人が足を伸ばして入浴できる大きさ。今回の入浴中は、近場の人らしき人と一時的に被っただけで、ほぼ貸切状態だった。浴槽の底と内壁は淡い水色の四角いタイル張り。
⬑ 浴槽と湯口
湯口は浴槽の角にあって、甕? のような形状の容器の底から湯が湧き出している。甕も徹底的に廃れてよくわからないものになっていた。注がれる湯は透明で、湯量は安定しジャバジャバと浴槽に投入されている。溢れた温泉は浴槽の縁全体からオーバーフローする純粋な源泉掛け流し。
湯口の後ろにはコップが置いてあった。
⬑ 浴槽と湯口
⬑ 斜め上から見る
⬑ 真横から見る
湯は無色透明。角度を付けて眺めると美しいターコイズブルーに発色して見える。湯の華はほとんど浮かんでいない。入浴するのが勿体無い程に、とても新鮮な状態で湯が供給されているようだ。
⬑ 真上から湯を覗くと透明
匂いは玉子系の美味しそうな硫化水素臭で。微かに灯油系の鉱油臭も感じられた。飲むと弱い酸味を感じ、コクのある硫黄味と、少しだけ芒硝の塩っぽい苦味。飲み込むと鼻の奥から硫化水素の刺激臭が弱く上ってきた。
浴槽の温度は42℃程度で適温。身体に馴染む湯質で、いくらでも浸かっていられる気がする。なかなか抜け出せない温泉だ。泊まりがけで来たいところだ。肌触りはややキシキシするような気がした。
⬑ 入浴中目線
温泉の成分
温泉掲示が脱衣場と、脱衣場前の廊下に掲示されていた。
⬑ 温泉分析書。後ろには古い分析書
⬑ 内容は上と同じ
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 咲花温泉 6号泉
湧出地:
分析年月日: 平成26年10月22日
湧出量 記載無し
pH 7.8
泉温: 48.3 ℃
泉質 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 1022.31 mg/kg
成分総計 1028.51 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
水素イオン (H+) | -- | -- | -- |
リチウムイオン (Li+) | 0.20 | 0.03 | 0.21 |
ナトリウムイオン (Na+) | 233.10 | 10.14 | 71.06 |
カリウムイオン (K+) | 7.00 | 0.18 | 1.26 |
アンモニウムイオン (NH4+) | 0.80 | 0.04 | 0.28 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 0.80 | 0.07 | 0.49 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 75.70 | 3.78 | 26.49 |
ストロンチウムイオン (Sr2+) | 1.20 | 0.03 | 0.21 |
アルミニウムイオン (Al3+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
マンガンイオン (Mn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (III) イオン (Fe3+) | -- | -- | -- |
亜鉛イオン (Zn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
陽イオン計 | 319 | 14.3 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 1.70 | 0.09 | 0.58 |
塩素イオン (Cl-) | 286.40 | 8.08 | 51.99 |
臭素イオン (Br-) | 0.90 | 0.01 | 0.06 |
ヨウ化物イオン (I-) | 0.40 | 0.00 | 0.00 |
水酸イオン (OH-) | -- | -- | -- |
硫化水素イオン (HS-) | 20.50 | 0.62 | 3.99 |
チオ硫酸イオン (S2O32-) | 7.60 | 0.14 | 0.90 |
硫酸水素イオン (HSO4-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
硫酸イオン (SO42-) | 281.70 | 5.86 | 37.71 |
亜硝酸イオン (HNO2-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
硝酸イオン (NO3-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
リン酸水素イオン (HPO42-) | 0.20 | 0.00 | 0.00 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 45.20 | 0.74 | 4.76 |
炭酸イオン (CO32-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
メタ亜砒酸イオン (AsO2-) | -- | -- | -- |
メタホウ酸イオン (BO2) | -- | -- | -- |
陰イオン計 | 645 | 15.5 | 100.00 |
(3) 遊離成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタケイ酸 (H2SiO3) | 55.50 | 0.71 |
メタホウ酸 (HBO2) | 3.40 | 0.08 |
非解離成分計 | 58.90 | 0.79 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 2.50 | 0.06 |
遊離硫化水素 (H2S) | 3.70 | 0.11 |
溶存ガス成分計 | 6.20 | 0.17 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.00 | 0.00 |
総水銀 (Hg) | 不検出 (0.0005 mg/kg未満) | -- |
クロム (Cr) | 不検出 (0.05 mg/kg未満) | -- |
鉛イオン (Pb) | 0.01 | 0.00 |
カドミウムイオン (Cd) | 不検出 (0.001 mg/kg未満) | -- |
微量成分計 | 0.01 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
咲花温泉 6号泉 - 湯花草子
温泉の主成分はナトリウムイオン、カルシウムイオンと、塩化物イオン、硫酸イオン。硫化水素イオンも 20.5 mg/kg と少なからず含まれている。硫黄の個性を感じさせつつも、まろやかな浴感のある温泉だった。