日帰り, 1回目, 曇り時々雨, 2020年度中51湯目
咲花温泉で「柳水園」の美しい湯に入浴したあと、阿賀川をさらに上り山と川に挟まれた地域に水田の広がる三川温泉の「湯元館」へやって来た。浴槽には躍動感ある鯉を象った湯口があり、レトロさとお洒落さを兼ね備えている。動きの無い浴室内で新鮮で清澄な湯にじっくり浸かっていると、時間の感覚を失ったような気がした。

施設・温泉概要
所在地: 新潟県東蒲原郡阿賀町五十沢1054
Web: 三川温泉 湯元館
日帰り入浴: 可 9:00-21:00 冬季 (11月-3月) 要予約
宿泊: 可 11,000円-
源泉名: 三川温泉組合2号
湧出地: 不明 五十沢内
湧出量: 不明 (動力揚湯)
泉温: 41.5 ℃
pH: 7.2
成分総計: 2094.2 mg/kg
泉質: ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 (低張性・中性・温泉)
旧泉質名: 硫酸塩泉 / 含食塩芒硝泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
| 加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
|---|---|---|---|
| 無 | 無 | 無 | 無 |
昭和3年開湯の三川温泉
阿賀野川は猪苗代や奥只見の広大な地域を流域とする大きな川で、流域面積は日本で8位の7,710平方キロメートル [1]。奥会津では荒海川、会津では阿賀川と呼ばれ、喜多方で只見川と合流したあと、新潟県との県境で阿賀野川に名を変えて新潟市で日本海に注いでいる。阿賀川に沿って新潟県阿賀町を通り抜けるR49を外れ、支流の新谷川沿いの車道を3km弱走っていくと、三川温泉のある五十沢 (いかざわ) 地区に着いた。
三川温泉は1928年 (昭和3年) の開湯。明治時代には湯治場があったと伝えられ、湯元館の初代館主 阿部英太郎氏らにより開発され旅館を開業したのだという [2]。
現在の源泉は共同の三川温泉組合1号、2号があり、三川温泉の旅館5軒に配湯している。

⬑ 旅館らしい装いの玄関

⬑ 男湯は手前右手側、女湯は通路奥を左に進んだ先

⬑ 素朴な脱衣場
入浴していると時間の感覚を失う
浴室には先客のおっちゃんが居て、トド寝と入浴を果てしなく繰り返す湯治モードに入っていたため、中の写真は撮影しなかった。
入浴したのは、よく紹介される鯉の湯口がある浴室。簡単なシャワー、カランと、浴槽があるだけで素朴。浴槽の形状は概ね長方形の浴槽で、2人が足を伸ばして入浴できる大きさ。仲が良ければ4人でもなんとかいけるかもしれない。公式サイトによると、この浴槽は湯元館2代目の1960年 (昭和35年) にできたとのこと。
浴槽奥側の中央に鯉を象った湯口があり、胴体を曲げて隣接する石の手前より頭部と尻尾を覗かせている。口から温泉が吐き出されジョロジョロと浴槽に注がれる。湯口に向かって右手前の角から同量がオーバーフロー。しばらく溜めてから入浴すると浴槽の縁全体から豪快に湯が溢れ出した。

⬑ 源泉を掛け流し
浴槽は内側は丸いモザイクタイル張り。浴槽の湯はタイルの色を映して少し青みがかって見えるが、湯の色は無色透明。浮遊物は見られなかった。茶色い湯の華が出ることもあるらしい。鯉の湯口には石膏の白い析出物が少し付着。じっくりと静かに入浴していると、肌には微細な泡付きがあった。鮮度が高く清澄な湯だ。
匂いは、浴室に入ったときに洗剤のような淡い芳香。湯からは僅かな石膏臭。飲んでみると少しだけ石膏味があり、基本的には地下水の素朴な味。口当たりまろやかで、ガブガブ飲みたくなる味覚。
浴槽の温度は40℃程度で温め。湯の清澄さもあって10分、20分…、ずっと浸かり続けることができる。浴室内には湯の注ぐジャバジャバという音と、溢れた湯の捨てられるチョロチョロという音だけが響くのみ。変化の動きの無い空間でじっとしていると、時間の感覚が失なわれて、どれだけ入浴したのか、いまが令和なのか、昭和なのかすら、わからなくなったような気がした。
温泉の成分
温泉の成分表が記載された温泉掲示が、脱衣場に掲げられていた。

⬑
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 三川温泉組合2号
分析年月日: 令和2年4月6日
pH 7.2
泉温: 41.5 ℃
泉質 ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 (低張性・中性・温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 2080.84 mg/kg
成分総計 2094.24 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
| 成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
|---|---|---|---|
| 水素イオン (H+) | -- | -- | -- |
| リチウムイオン (Li+) | 0.20 | 0.03 | 0.09 |
| ナトリウムイオン (Na+) | 578.90 | 25.18 | 78.15 |
| カリウムイオン (K+) | 11.30 | 0.29 | 0.90 |
| アンモニウムイオン (NH4+) | 1.90 | 0.11 | 0.34 |
| マグネシウムイオン (Mg2+) | 4.60 | 0.38 | 1.18 |
| カルシウムイオン (Ca2+) | 122.90 | 6.13 | 19.03 |
| ストロンチウムイオン (Sr2+) | 1.50 | 0.03 | 0.09 |
| アルミニウムイオン (Al3+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| マンガンイオン (Mn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 鉄 (II) イオン (Fe2+) | 2.00 | 0.07 | 0.22 |
| 鉄 (III) イオン (Fe3+) | -- | -- | -- |
| 亜鉛イオン (Zn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 陽イオン計 | 723 | 32.2 | 100.00 |
(2) 陰イオン
| 成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
|---|---|---|---|
| フッ素イオン (F-) | 2.40 | 0.13 | 0.44 |
| 塩素イオン (Cl-) | 399.80 | 11.28 | 37.95 |
| 臭素イオン (Br-) | 1.30 | 0.02 | 0.07 |
| ヨウ化物イオン (I-) | 0.60 | 0.00 | 0.00 |
| 水酸イオン (OH-) | -- | -- | -- |
| 硫化水素イオン (HS-) | 0.40 | 0.01 | 0.03 |
| チオ硫酸イオン (S2O32-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 硫酸水素イオン (HSO4-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 硫酸イオン (SO42-) | 781.20 | 16.26 | 54.71 |
| 亜硝酸イオン (HNO2-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 硝酸イオン (NO3-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| リン酸水素イオン (HPO42-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 炭酸水素イオン (HCO3-) | 123.30 | 2.02 | 6.80 |
| 炭酸イオン (CO32-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| メタ亜砒酸イオン (AsO2-) | -- | -- | -- |
| メタホウ酸イオン (BO2) | -- | -- | -- |
| 陰イオン計 | 1309 | 29.7 | 100.00 |
(3) 遊離成分
非解離成分:| 成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
|---|---|---|
| メタケイ酸 (H2SiO3) | 43.20 | 0.55 |
| メタホウ酸 (HBO2) | 5.30 | 0.12 |
| 非解離成分計 | 48.50 | 0.67 |
| 成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
|---|---|---|
| 遊離二酸化炭素 (CO2) | 13.10 | 0.30 |
| 遊離硫化水素 (H2S) | 0.30 | 0.01 |
| 溶存ガス成分計 | 13.40 | 0.31 |
(4) その他の微量成分
| 成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
|---|---|---|
| 総砒素 (As) | 0.04 | 0.00 |
| 総水銀 (Hg) | 不検出 | -- |
| クロム (Cr) | 不検出 | -- |
| 鉛イオン (Pb) | 不検出 | -- |
| カドミウムイオン (Cd) | 不検出 | -- |
| 微量成分計 | 0.04 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
三川温泉組合2号 - 湯花草子
さっぱりとした印象だが、成分総計は2000mg/kgもある。温泉の成分はナトリウム硫酸塩 (芒硝) が主で、他にナトリウム塩化物 (食塩) や、カルシウム硫酸塩 (石膏) も含まれる。湧出温度 41.5 ℃ もそのままで適温となり素晴しい温泉。