曇り 宿泊 1回目

河津温泉郷の奥地にある七滝 (ななだる) 温泉ホテルに泊まりに行ってきた。
七滝温泉という名がついているものの、温泉地としては梨本温泉が正しい名称。

伊豆・梨本の温泉

河津温泉郷は、名前の通り、静岡県賀茂郡の河津町の温泉。伊豆半島においては、根元の小田原から国道135号線を走っていくと、湯河原、熱海、伊東、東伊豆、河津、下田、南伊豆の順に並んでおり、半島の南四分の三くらいに位置している。

河津温泉郷には今井浜温泉、谷津温泉、峰温泉、湯ヶ野温泉、梨本温泉を代表とし、浜温泉、笹原温泉、田中温泉、沢田温泉、逆川温泉、川津筏場温泉、下佐ヶ野温泉、小鍋温泉といった温泉地も属している。

静岡県温泉協会のWebページで公開されている資料「状態別源泉数、総湧出・総揚湯、平均温度、平均湧出・揚湯量」では伊豆地区の各温泉の数値データが掲載されており、とても面白い。

せっかくなので伊豆周辺だけで少し抜粋してみる。さらに湧出量が多い順に並べかえた。

↓ 表 市町村別 利用源泉数:

温泉地 総源泉数 自然湧出 掘削自噴 機械揚湯 総湧出量 L/分 平均温度 ℃
静岡県計 2,510 31 80 1,140 119,001.4 55.47
伊東市 750 0 3 324 32,189.0 44.84
熱海市 547 0 3 16 17,725.5 62.41
東伊豆町 215 2 21 114 15,745.8 84.72
伊豆市 222 6 5 104 13,706.4 49.93
下田市 106 0 1 42 8,566.5 56.04
河津町 141 0 6 48 5,104.3 65.10
東伊豆町 129 0 15 53 4,792.4 81.88
松崎町 30 0 6 12 3,943.8 55.38
伊豆の国市 173 0 0 64 3,613.5 60.86
西伊豆町 20 0 6 7 2,889.2 44.57
函南町 15 0 0 9 1,181.9 35.97
沼津市 11 0 0 5 451.0 37.44
三島町 8 0 0 8 218.1 32.39
裾野市 2 0 0 1 170.9 41.60
長泉町 1 0 0 1 60.4 31.50

河津町内で温泉地別で抜粋してみた。

↓ 表 河津町 温泉地別 利用源泉数:

温泉地 総源泉数 自然湧出 掘削自噴 機械揚湯 湧出・揚湯源泉数 総湧出・揚湯量 L/分 平均温度 ℃
峰・田中・沢田・逆川 43 0 2 14 17 1,740.0 83.12
谷津・浜・笹原 57 0 2 16 19 1,456.2 70.25
梨本 16 0 0 9 13 1,306.9 45.98
湯ヶ野・川津筏場・下佐ヶ野・小鍋 22 0 2 9 13 601.2 42.03
見鷹 (今井浜) 3 0 0 0 0 0.0 -
141 0 6 48 62 5,104.3 65.10

梨本では9源泉を利用しており、いずれも動力揚湯である。

そのうち5本は天城荘で保有している独自源泉「出会い源泉」「前の川源泉」「穴風呂源泉」「館内新源泉」「蛇湯源泉」と思われる。

七滝温泉ホテルで使っている源泉名は、温泉分析書にも書かれていないため不明だが「広報かわづ 2017年3月 No.535」を見ると以下のように書かれており、「梨本6号」「梨本14号」のどちらか (または両方) と思われる。

梨本温泉 梨本6号、14号

梨本地区では9ヶ所の源泉が利用されています。そのうちの梨本6号、梨本14号について紹介します。それぞれ町の集中管理ではなく、管理会社を設けて源泉の管理・維持、給湯をしています。泉温は50〜50程度、峰温泉とは異なり、湯の花の付着が少ないのが特徴で、管理も最低限のメンテナンスだけで良いそうです。湯量の調節などで温度調節をすることができ、加水せずに利用しています。

同じ資料で、慈眼院では「梨本17号」という源泉を使っているらしい。

単独利用源泉 梨本17号

慈眼院にある「禅の湯」では、個人で掘削した源泉を単独利用しています。町内では比較的新しい源泉で平成17年に湧出しました。
水中ポンプを使い49.5℃の温泉をくみ上げて利用しています。温泉の量を調整することで温度調節をしており、加温・加水なし、循環なしの源泉かけ流しで利用しています。

これで梨本にある源泉9本のうち、8本についてはわかった。もう1本はわからなかった。知っていたら教えてほしい。

施設

七滝温泉ホテルは、河津七滝の遊歩道に最も近い温泉ホテル。
道路の向かいは観光センター、隣はKawaZoo カエル館と、わさび直売のかどやであり、七滝の中心部に位置している。

七滝温泉ホテル 地図

七滝温泉ホテル 生わさび
↑ 写真: 隣のかどやの生わさび

七滝温泉ホテル 正面
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 正面

七滝温泉ホテル 側面
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 側面

七滝温泉ホテル 入口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 玄関横

温泉は、大露天風呂の男湯、女湯と、家族風呂の内風呂2つ、露天風呂1つの計5つの浴場がある。

以下は避難経路図だが、各浴室の位置が一番わかりやすかったので掲載する。左端が玄関で、ロビーを抜けて上下中央を左右に延びるのが廊下。廊下沿いには2つの家族風呂があり、売店の裏が檜風呂、その右隣が岩風呂。廊下の突き当たりにあるのが3つめの家族風呂 (貸切露天風呂)。図の右下に男女別の大露天風呂が2つ。上側が唐傘天井露天風呂、下側が庭園露天風呂。

七滝温泉ホテル 館内図
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 館内図

大露天風呂も夜間は宿泊者向けの貸切風呂になる。19:30〜翌7:00までが貸切時間。これはなかなか良かった。広い大露天風呂を占有して自由に使うことができて楽しかった。

七滝温泉ホテル お風呂のご案内
↑ 写真: 七滝温泉ホテル お風呂のご案内

少し離れた場所に溶洞窟風呂があり、これも七滝温泉ホテルが管理しているが、次の記事に書く。

もちろん全ての浴槽に入浴したので、ここから1つずつについて書いていく。並びは入浴した順である。

貸切内湯 檜風呂

施設の一番フロント寄りにある家族風呂。

七滝温泉ホテル 檜風呂
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 檜風呂 入口

七滝温泉ホテル 家族風呂檜風呂 脱衣場
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 檜風呂 脱衣場

檜の長方形の浴槽で4人サイズ。少し年季の入ったきれい過ぎない感じが味があり好みである。

七滝温泉ホテル 家族風呂檜風呂
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 檜風呂 浴室

七滝温泉ホテル 家族風呂檜風呂
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 檜風呂 浴槽

湯口は浴槽の右手奥にあり木製のもの。湯はトロトロと浴槽に注がれていた。
出る湯の温度は44℃くらいでぬるめ。源泉温度から考えると、湯口より奥で加水しているのかもしれない。

七滝温泉ホテル 家族風呂檜風呂 湯口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 檜風呂 湯口

浴槽奥にもう一つ湯口らしきものがあるが、これは水が出ている。河津七滝からの湧き水とのことで、飲むことができる。浴室内で飲み水が供給されていて、しかもそれが湧き水というのはなかなか珍しく、かつありがたい。

翌日、七滝の遊歩道沿いの初景滝の横に設置された水場の水も飲んだが、それと比べて緑っぽくない味がした。

七滝温泉ホテル 家族風呂檜風呂 飲み水
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 檜風呂 湧水

大露天風呂 唐傘天井露天風呂

唐傘様の屋根が特徴的な露天風呂。日中はたぶん女湯になっているが、夜間は貸切風呂になっている。空いていれば何度でも利用することができる。

七滝温泉ホテル 唐傘天井露天風呂 貸切
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 大露天風呂 貸切でご利用いただけます

七滝温泉ホテル 唐傘天井露天風呂 脱衣場
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 大露天風呂 脱衣場

浴槽は細長い岩風呂で、8人くらい入浴できそうなサイズ。少し泳げそうなほどの広さで、これを貸切で入浴できるのは贅沢だと思った。

以下の写真では、浴槽横のライトの少し向こうの岩の裏までが浴槽。

七滝温泉ホテル 唐傘天井露天風呂 浴槽
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 大露天風呂 浴槽

七滝温泉ホテル 唐傘天井露天風呂 手前方向
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 大露天風呂 入口方向

七滝温泉ホテル 唐傘天井露天風呂 奥側
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 大露天風呂 入浴中

湯は3ヶ所から投入されている。ホースで持ってきている湯、浴槽中心部の底面から注入される湯、浴槽奥の岩の裏の小さい湯口から注がれる湯があった。これぞ湯口、という感じのものは無く小さいものが複数ある感じ。
広い浴槽の温度を最小コストで調節するための工夫だろうか。

注がれる湯は50℃近くあり、熱い。源泉をそのまま利用していると思われる。

大露天風呂 庭園露天風呂

七滝温泉ホテルで一番大きい浴槽。日中帯はたぶん男湯だが、夜間は貸切風呂になる。この浴槽の貸切は経験しなければ勿体無い。早起きして入浴した。

この浴室だけなぜか微妙に外っぽい通路を経由して行く。通路右手の柵の向こうには隣のKawaZooが見えている。

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 入口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 入口

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 入口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 入口

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 脱衣場
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 脱衣場

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 扉
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 扉

浴槽はなぜか大きな岩風呂と小さい檜風呂2つがある。

岩風呂は大変広く、20人は余裕で入浴できそうな広さだった。これを1人で独占して入るのはたまらない気持ち良さがあった。

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 大浴槽
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 大浴槽

広いので写真に収まらなかったが、柱の裏手にも浴槽がある。

奥には小さな滝状の湯口があり、石垣の中程から湯が投入されていた。
温度は唐傘の湯と同じく50℃近い。

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 湯口と飲み水
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 手前湯口 奥飲み水?

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 湯口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 湯口

湯口らしき流れは2つ見えるが、浴槽に注いでいるのは片方だけ。もう一本は水である。家族風呂の檜風呂の飲み水と同じもの、ということにした。

この周りだけ硫黄系の匂いがしたように感じられたが、これは温泉由来でなく苔等によるものと思ったが、夜明け6時台でまだ暗かったのでよくわからなかった。

湯が出る湯口は上記の見えるものの他に、浴槽中心部の底面から静かに注入される湯口もあった。これも熱かった。

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 底面湯口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 底面の湯口

檜風呂は2〜3人サイズの小さい浴槽。50℃近い湯が常に注がれており、めちゃくちゃ熱く入浴不可だった。

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 檜浴槽
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 檜浴槽

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 檜浴槽接近
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 檜浴槽接近

固定の湯口は無く、温泉カランからホースで湯が供給されている。
おそらくホースを岩風呂に移動するなどして温度を調整することが期待されている。

七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 ホースの湯口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 庭園露天風呂 ホースの湯口

貸切内湯 岩風呂

貸切の檜風呂の隣にもう1つ家族風呂があり、岩風呂になっている。

七滝温泉ホテル 家族風呂岩風呂 入口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 岩風呂 入口

七滝温泉ホテル 家族風呂岩風呂 脱衣場
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 岩風呂 脱衣場

浴槽は細長い形をした小さめの岩風呂。真ん中でくびれたひょうたん型をしており、2人から3人くらいしか入浴できなそうに見えた。でも家族風呂としては十分な大きさだと思う。

七滝温泉ホテル 家族風呂岩風呂 浴室
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 岩風呂 浴室

七滝温泉ホテル 家族風呂岩風呂入浴中
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 岩風呂 浴室

湯口は、岩の口から湯が出るようになっており、析出物が一番立派だった。温泉感があり気に入った。

七滝温泉ホテル 家族風呂岩風呂 湯口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 岩風呂 湯口

七滝温泉ホテル 家族風呂岩風呂 湯口拡大
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 家族風呂 岩風呂 湯口の析出物

湯口の周りの広い範囲が結晶で白くなっている。

貸切露天風呂

最後は貸切露天風呂。宿泊した部屋は隣だった。

七滝温泉ホテル 家族露天風呂 入口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 貸切露天風呂

七滝温泉ホテル 家族露天風呂 脱衣場
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 貸切露天風呂 脱衣場

七滝温泉ホテル 家族露天風呂
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 貸切露天風呂

檜の正方形の露天風呂。湯口も木。

七滝温泉ホテル 家族露天風呂 浴槽
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 貸切露天風呂

七滝温泉ホテル 家族露天風呂 湯口
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 貸切露天風呂

ここも湯は初めから適温に調節されていた。

湯使いと浴感

湯の使い方は加温無し、加水無し、循環無し、消毒無しで完璧な利用方法。
ただし家族風呂は加水有りかもしれない。

七滝温泉ホテル 掛け流し
↑ 写真: 七滝温泉ホテル こちらの温泉は、源泉かけ流しです

湯の色は無色透明で素朴な見た目。匂いも特徴は無く無臭。

飲んでみると、基本はお湯の味だが、僅かな塩味が感じられた。飲みやすい。
この味は、胃腸に良い系の湯だと思う。

肌触りも特徴は無し。浴後少しベタベタしたような気がした。
身体の温まりは、程々に暑くなるので連続で入浴し続けることは少し難しい。しかしいつまでも熱が保持される感じではないので、出入りを繰り返しながら入浴することができる。

温泉の成分

成分表に記載の無い一部の数値は自前の計算アプリで数値を補完した。

源泉名は記載無し、住所は賀茂郡河津町梨本字前の川427-3、分析年月日は2010.1.29。湧出量は記載無し、pH 記載無し、泉温54.2℃、溶存物質 (ガス性のものを除く) 1025mg/kg、成分総計 1030mg/kg、泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉 (低張性アルカリ性高温泉)。

成分は以下の通り。

陽イオンは、
カルシウムイオン (Ca) 169.1mg/kg 8.44mval/kg 53.32mval%、
ナトリウムイオン (Na) 167.2mg/kg 7.27mval/kg 45.93mval%、
カリウムイオン (K) 4.4mg/kg 0.11mval/kg 0.69mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 0.1mg/kg 0.01mval/kg 0.06mval%、
鉄 (III) イオン (Fe3) 0.1mg/kg、
計 340.9mg/kg 15.83mval/kg。

陰イオンは、
硫酸イオン (SO4) 575.9mg/kg 11.99mval/kg 86.95mval%、
塩化物 (Cl) 49.9mg/kg 1.41mval/kg 10.22mval%、
炭酸水素イオン (HCO3) 20.5mg/kg 0.34mval/kg 2.47mval%、
炭酸イオン (CO3) 1.0mg/kg 0.03mval/kg 0.22mval%、
フッ化物イオン (F) 0.4mg/kg 0.02mval/kg 0.15mval%、
計 647.9mg/kg 13.79mval/kg。

七滝温泉ホテル 温泉分析書
↑ 写真: 七滝温泉ホテル 温泉分析書

岩風呂の湯口に見られた立派な析出物は CaSO4、すなわち石膏である。

また、温泉分析書には載っていないが、広報かわづには個別の源泉の泉温とpHが書かれているため、そちらも引用しておく。

源泉名 泉質 泉温 ph値
梨本6号 カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉 54.2℃ 8.3
梨本14号 カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉 59.8℃ 8.8

参考資料