晴れ 日帰り 1回目

八幡平の秋田県側、標高約1000mにある温泉旅館。
八幡平最古の湯らしく、宝永年間 (1704年〜1711年) 開湯と伝えられているとのこと。その資料についてはインターネット上では見つけられなかった。

よく知られている通りこの辺りは温泉天国であり、付近には大深温泉、藤七温泉、後生掛温泉、銭川温泉や玉川温泉、新玉川温泉がある。地図には東トロコ温泉が載っているが10年前に廃業してしまったらしい。

また、温泉の他に大沼地熱発電所、澄川地熱発電所がある。かつて澄川発電所ができる前には赤川温泉、澄川温泉という旅館もあったそうだが、土砂崩れにより崩壊し現在はもう存在しない。

さらに野湯もあり、焼山の頂上付近に硫黄取り沢の湯、玉川を遡上して湯ノ沢というところに玉川湯ノ沢と呼ばれる湯がある。

実に楽しいエリアなのだ。

蒸ノ湯温泉には2種類の源泉

秋田県道23号を走り、蒸ノ湯温泉の看板を頼りに少し山道を走ると開けた谷に出て、左手に秘湯らしい外見の温泉宿が現れる。それが蒸ノ湯温泉。

蒸ノ湯温泉 外観

蒸ノ湯温泉 フロント

フロントの奥にはふけの湯神社という小さい神社がある。金勢大明神を祀っており、男根の木像が設置されている。

蒸ノ湯温泉 ふけの湯神社

蒸ノ湯温泉は施設内に男女別の内湯、露天風呂もあるが、より有名なのは地獄地形の真っ直中にある野天風呂である。ここに男女別の野天浴槽、混浴の枡風呂、樽風呂、岩風呂がある。

だが施設内の湯 (源泉: 岩の湯) と野天風呂 (源泉: 熊の湯) では異なる源泉を利用しているので、両方への入浴は必須。

なお昔は5種類の源泉があったそうだ。以下は女将へのインタビューの引用。

竹内 温泉の話も聞かせてください。野天風呂にはいろんなお風呂がありますね。
阿部 昔は5種類の源泉が出てたんだけど、今は2種類の源泉を使っています。同じ成分のお湯を使ってもいいから、いろんな湯槽ゆぶねをつくろうと計画しています。「温泉の舞浜」にしようよ! って。

なんも大学 https://nanmoda.jp/2017/07/1046/

館内の湯は青白い硫黄泉

館内の神社を右手に曲がった先に浴場がある。

蒸ノ湯温泉 館内

突き当りが男湯内風呂、その隣が女湯の内風呂と露天風呂、手前右手が男湯の露天風呂。

以下、男湯について書く。

男湯内湯は山小屋っぽい

蒸ノ湯温泉 脱衣場入口

内湯の脱衣場には水場があった。この水は飲める。山小屋を思わせる設備だ。

蒸ノ湯温泉 男湯内湯脱衣場

蒸ノ湯温泉 男湯内湯入口

浴室に入ると、左手側に簡素な洗い場、右手側に浴槽がある。浴槽は4人が足を伸ばして入浴できる大きさ。

結構賑わっており、無人の時間が無かったので撮影はできなかった。

湯は青白く濁っていた。見通しは5cm以下で濃い濁りである。

湯口から出る湯を飲んでみたところ、薄い酸味があった。匂いは石っぽい感じのある硫化水素臭だった。この匂いは好み。

湯の温度はぬるめで41度位。加水で利用しているようだ。

男湯露天風呂は広々

男性用の露天風呂は内湯から離れており、しかも女湯を挟んでいるため、いったん服を着ないと移動できない。

湯は内湯と同じで、実際の浴感としても変わらなかったので割愛する。

蒸ノ湯温泉 男湯露天風呂脱衣場

蒸ノ湯温泉 男湯露天風呂

酸性、含アルミニウムの火山性温泉

源泉名は岩の湯。分析年月日は2016.8.17。湧出量は記載無し、pH3.2、泉温89.0℃、溶存物質 (ガス性のものを除く) 122.9mg/kg、成分総計 187.4mg/kg、泉質は単純温泉 (低張性酸性高温泉)。

陽イオンは
水素イオン (H) 0.6mg/kg 0.6mval 39.61mval%、
アルミニウムイオン 2.3mg/kg 0.26mval 17.01mval%、
カルシウムイオン (Ca) 5.0mg/kg 0.25mval 16.60mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 1.9mg/kg 0.16mval 10.40mval%、
鉄 (II) イオン (Fe2) 1.8mg/kg 0.06mval 4.29mval%、
鉄 (III) イオン (Fe3) 0.3mg/kg 0.02mval 1.07mval%、
以下略、
計15.9mg/kg 1.50mval。

陰イオンは
硫酸イオン (SO4) 67.0mg/kg 1.39mval 93.85mval%、
塩化物イオン (Cl) 2.5mg/kg 0.07mval 4.74mval%、
硫化水素イオン (HS) 1.4mg/kg 0.01mval 0.97mval%、
硝酸イオン (NO3) 0.4mg/kg 0.01mval 0.43mval%、
以下略、
計71.3mg/kg 1.49mval。

遊離成分で非解離成分は
メタケイ酸 (H2SiO3) 35.5mg 0.45mmol、
以下略、
計35.7mg 0.46mmol。

溶存ガスは
遊離二酸化炭素 (CO2) 63.9mg 1.45mmol、
遊離硫化水素 (H2S) 0.6mg 0.02mmol、
計64.5mg 1.47mmol。

成分量はかなり少ないので単純温泉の分類になってしまうが、酸性でアルミニウムイオン、鉄イオンの含有率が高く典型的な火山性の温泉。

水素イオン濃度0.6mg/kgなのにpH3.2になる計算がよくわからない。教えてほしい。

蒸ノ湯温泉 ふけのゆ成分・効能

蒸ノ湯温泉 温泉分析書 内湯・露天風呂

大迫力の野天風呂

野天風呂は宿を出て、向かい側に広がっている。モウモウと噴煙を上げているのですぐにわかる。

蒸ノ湯温泉野天風呂 遠景

右手側の小山の裏手に女湯。絶妙に外から見えないようになっている模様。

蒸ノ湯温泉野天風呂 女湯

その先には男湯があるが、いったん後回しにして混浴風呂。男湯より先、地獄地形の下を50mくらい進んだ先にある。

脱衣場は木で作られた簡素なものがあり男用と女用に分かれている。

脱衣場で脱いで湯に浸かるまで、足が冷たかった。

蒸ノ湯温泉野天風呂 混浴風呂 脱衣場

浴場は写真のように、旅館がよく見える、旅館からもよく見える位置にある。

浴槽は、枡風呂という大きな木造の湯舟が2つ、木樽の1人サイズの湯が4つ、その下に岩風呂が1つ。

蒸ノ湯温泉野天風呂 枡風呂

この濡れた床部分が冷えて冷たい。

蒸ノ湯温泉野天風呂 枡風呂

蒸ノ湯温泉野天風呂 枡風呂 湯口

蒸ノ湯温泉野天風呂 樽風呂

最後に男湯の浴槽だが、この付近が一番楽しい。すぐ近くの地面から湯が湧き上がり沸騰しており、小さな源泉がいくつもある。

以下とか、

蒸ノ湯温泉野天風呂 湧出口

以下とか。なかなかの迫力があった。

蒸ノ湯温泉野天風呂 湧出口

男湯の浴槽は8人くらいが入浴できる大きめな浴槽。浴槽の向こうは小さな山になっているが、その上から大量のガスが上がっている。絶えず上がるガスを眺めながら入浴する湯は最高である。

蒸ノ湯温泉野天風呂 男湯

湯は山の上から木の樋を通って浴槽に注がれる。

湯の色は緑がかった白濁色。浴槽の底には手で簡単に掬えるくらいの泥が沈んでおり、緑灰色。溶けやすいもの。

匂いは硫化水素の刺激臭だった。

加水で利用。

硫化水素型の硫黄泉

源泉名は熊の湯。分析年月日は2016.8.22。湧出量記載無し、pH4.6、泉温86.2℃、溶存物質 (ガス性のものを除く) 53.9mg/kg、成分総計 70.4mg/kg、泉質は単純硫黄温泉 (硫化水素型) (低張性酸性高温泉)。

陽イオンは
カルシウムイオン (Ca) 3.5mg/kg 0.17mval 38.34mval%、
ナトリウムイオン (Na) 3.1mg/kg 0.13mval 29.50mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 0.9mg/kg 0.07mval 16.26mval%、
アルミニウムイオン 0.2mg/kg 0.02mval 4.88mval%、
アンモニウムイオン (Al) 0.4mg/kg 0.02mval 4.87mval%、
カリウムイオン (K) 0.8mg/kg 0.02mval 4.49mval%、
以下略、
計9.1mg/kg 0.46mval。

陰イオンは
硫酸イオン (SO4) 16.2mg/kg 0.34mval 76.44mval%、
塩化物イオン (Cl) 2.8mg/kg 0.08mval 17.90mval%、
チオ硫酸イオン (S2O3) 1.4mg/kg 0.02mval 5.66mval%、
以下略、
計20.4mg/kg 0.44mval。

遊離成分で非解離成分は
メタケイ酸 (H2SiO3) 24.4 mg 0.31mmol、
以下略、
計24.4mg 0.31mmol。

溶存ガスは
遊離二酸化炭素 (CO2) 11.0mg 0.25mmol、
遊離硫化水素 (H2S) 5.5mg 0.16mmol、
計16.5mg 0.41mmol。

蒸ノ湯温泉 温泉分析書 野天風呂

イオンだけ見ると内湯で利用する岩の湯源泉よりも丸い泉質に思えるが、遊離硫化水素が多く、硫黄泉に分類される。内湯よりも泥が多くなるのは不思議に思う。

蒸ノ湯温泉
https://www.fukenoyu.jp/index.html

湯けむり四季彩紀行
https://yukemuri-shikisai.blog.ss-blog.jp/2018-10-05
(岩の湯源泉の温泉分析書は撮影時にブレてしまい読めなかったため、参考)

玉川湯ノ沢
http://mfma.sakura.ne.jp/onsen-tamagawayunosawa.htm