日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中12湯目

日本最大の黒湯温泉密集地である東京都大田区の温泉銭湯、全て入浴済みだと思っていたが「新田浴場」だけ逃していることに気付き早速入浴してきた。見通し10cm強の濃い目の黒湯温泉が楽しめるにも関わらず空いていて、まさに穴場の温泉施設だ。

施設・温泉概要

所在地: 東京都大田区矢口2-5-12
Web: 大田区の銭湯 | 大田浴場連合会公式サイト | 新田浴場
日帰り入浴: 可 14:00-23:30, 日曜日のみ朝風呂有り 8:00-11:00
宿泊: 不可

源泉名: 不明
湧出量: 不明 (掘削150m)

温泉の利用方法: 加温有り、加水無し、循環有り、塩素消毒有り (推測)

新田浴場について

新田浴場は蒲田駅と多摩側駅を結ぶ東急多摩側線の武蔵新田駅から南に約400m、小さな商店街沿いにある温泉銭湯。温泉と言ってみたが、温泉としての認可は受けていないらしい。しかしどっからどう見ても黒湯の冷鉱泉が使用されているので温泉のつもりで入浴して何の遜色も無い。さらに黒湯浴槽の壁面には「海藻風呂 (黒湯) の由来」という説明が掲示されている。

海藻風呂 (黒湯) の由来

この黒いお湯は、今より数百万年前、地球の生成当時 (新生代末期) の地殻変動に依る地形の変革に従って、当時の海藻、海草類が埋没してできたもので、当浴場の地下百五十メートルより湧き出る霊泉であります。
この温泉は昭和初期頃発見されたもので、綱島、矢口、池上方面の地下水脈にのみあるもので東京都衛生研究所に依る分析の結果、ヨード分その他人体には極めて有益な成分を多量に含有し、特に胃弱体質、神経痛、リュウマチ、足腰の冷え、腰痛、肩こり、ニキビ肌あれ、胃腸疾患等に薬効があります。
この意義ある霊泉にゆっくりとご入浴下さいまして、明るく健康な身体で明日への生活の活力としていただけたら幸いと存じます。

どうも昭和初期には温泉として分析したらしい。文章は大袈裟な感じだが、黒湯温泉は約220万年前から80万年前に深海底で堆積した植物が分解された結果できたと言われている。重曹泉が多いのは、有機物の分解で生じた CO2 が地中の成分と反応して Na-HCO3 が生成されたからで、色が黒いのは腐植質と呼ばれるフミン酸類によるもの。

新田浴場 外観
↑ 昭和を感じさせる外観

新田浴場 内観
↑ 大田区ではお馴染の銭湯風景

温泉浴槽と浴感

浴場の建物は典型的な銭湯型で、大きな空間を真ん中で男女別に仕切っている。浴槽は各浴室の中央部に縦に配置され、周囲は通路になっている。いくつかの白湯浴槽がある中、1つだけ黒い湯の張られた浴槽がある。2人が足を曲げて横並びに入浴するサイズの浴槽で、タイル張り。水面上に湯口は無く、浴槽底面からの気泡湯投入のみ。浴槽の横にはカランが設置されており、捻ってみたところ茶色がかった冷水が出てきたので源泉のカランだと思われる。

少し変わっているのは、浴槽の頭上に謎の屋根がある。普通に建物の屋根もあるので、2重になっているわけで本当に単なる装飾だと思われる。男湯は和風、女湯は古代ローマを思わせるもので男女の区別さえある。屋根下の真ん中は黒湯浴槽でなかなか魅せる造りだと思った。

新田浴場 浴槽
↑ 黒湯浴槽は中央の壁の向こうで見えない 頭上には謎の屋根

湯を観察すると、色は黒褐色で見通しは10cm強、なかなか濃い黒湯だ。少しだけ白い泡が浮いていた。これは汚れではなく温泉成分である。匂いは薄く植物系の独特の甘味をもつモール臭。入浴中にも香っただけでなく、帰宅後も肌に匂いが染みていた。感触はほんの少しだけヌルヌルしているように感じた。浴槽の温度は41℃くらいだが、湯がさっぱりしているので長く浸かることができた。

源泉カランから注ぐ冷水はやや茶褐色で透明。飲んでみたが味は無かった。感触は、浴槽のものとは異なり、ヌルヌル感が強く感じられた。

温泉の登録はされていないが、黒湯の浴感がしっかりと知覚でき、分析したら温泉として認められるだけの成分はありそうに感じた。大田区西部や世田谷区の温泉と比べてむしろ濃いくらいだ。

場所のマイナーさもあってか入浴客が少なく、黒湯温泉をまったり楽しめる穴場の温泉施設だ。書いているうちにもう一度行きたくなってきた。