宿泊, 1回目, 晴れ, 2020年度中82湯目

ふるさと納税の返礼で貰った宿泊券を使うために鹿児島にやって来た。宿泊券は初日に使って今日は鹿児島2日目。日置市の湯之元温泉で「田之湯温泉」「元湯・打込湯」を入浴したあと、宿泊で鹿児島市内の「温泉ホテル中原別荘」を訪れた。もともと宿泊料金はあまり高くないが、GoToトラベルキャンペーンを実施していたのでさらに安く泊まった。

湯之元温泉 薬師の湯 (2020/12/12)
同じ湯之元温泉でも少しずつ印象が異なる。硫化水素味、硫化水素臭の「湯之元温泉 薬師の湯 (元湯・打込湯)」
湯之元温泉 田之湯温泉 (2020/12/12)
エメラルドグリーンに透き通った硫黄泉に浸かる温泉の銭湯「湯之元温泉 田之湯温泉」

温泉ホテル中原別荘は鹿児島の天文館で100年以上の歴史があり、全57室の大きい旅館。温泉は自家源泉で、敷地内で 800m の掘削により湧出している。泉質はナトリウム-塩化物温泉で、鹿児島市内では珍しい茶褐色の湯。湯口周りも析出物でこってりと焦茶に染まっており見た目の満足度が高い。よく温まるので冬の季節がおすすめである。

施設・温泉概要

所在地: 鹿児島県鹿児島市照国15-19
Web: 鹿児島の温泉ホテル 中原別荘(全館禁煙・耐震改修済)
日帰り入浴: 不可
宿泊: 可 素泊まり 7,150 円- (2名宿泊時)

源泉名: 甲突川左岸12号
湧出地: 鹿児島県鹿児島市照国15-3
湧出量: 200 ℓ/分 (掘削 800 m・動力揚湯)
泉温: 49. ℃
pH: 7.7
溶存物質合計 (ガス性のものを除く): 2857.4 mg/kg
成分総計: 2866.2 mg/kg
泉質: ナトリウム-塩化物温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 食塩泉 / 弱食塩泉

一番良い浴槽の温泉利用方法:

加温 加水 循環 消毒

旅館の地下 800 mより湧出する自家源泉

温泉ホテル中原別荘は鹿児島最大の繁華街である天文館に位置する温泉旅館。実は正式名称「温泉ホテル中原別荘(全館禁煙・耐震改修済)」で、2014年8月に行った全面リニューアルを、名前に全力で推し出している。安全性をアピールして修学旅行生を積極的に受け入れているらしい。

温泉ホテル中原別荘は100年以上の歴史があり、創業は1904年 (明治37年)、当時は「中原旅館」の名で経営し、今とは異なる天文館の商店街に位置していた。その後、1972年 (昭和47年) に増設した別館が現在の場所にある「中原別荘」である。後に「中原旅館」は火災により消失してしまったため、「中原別荘」だけが残された。現在の建物は1963年〜1972年に建てたもの [1]

館内には幕末頃の地図が掲示されていて、親切にも中原別荘の位置に矢印が指されている。当時は武家屋敷が広がっていたことが伺える。

幕末薩摩御城下 概観図
⬑ 赤い部分がたぶん武家屋敷

温泉は中原別荘の敷地内にて 800m の掘削により湧出している。鹿児島市内の地下は深度 600m〜700m 以深で基盤岩の四万十層群の地層が広がっており、ここの温泉も基盤岩の亀裂に貯留されたもののようだ。鹿児島市内では大体このように掘削で得た温泉を使用している [2]

なお四万十層群というのは九州から関東まで広がるメジャーな地層群。中生代白亜紀〜新生代古第三紀に形成された地層で、付加体 (海洋プレートが大陸側プレートの下に潜り込む時に、プレート上層部が削れて海底から積み重なってできた岩石) により構成されている。

深度800メートルより湧出
⬑ 温泉は深度 800m より湧出する

早朝から入浴客で賑わう

さて現代に戻り温泉ホテル中原別荘にやって来た。入口は中央公園側に面しており、近くを通ると建物は簡単に見つけることができた。

正面
⬑ 見た目にも耐震バッチリ

なお今回は宿泊で利用したにも関わらず、この記事では温泉の話だけをする。部屋のことまで全部書き出すとあまりに時間がかかってしまうから、当ブログでは常にその方針で書いている。

天然温泉
⬑ 天然温泉の看板と白くまのコラボ

宿泊客は午後は 16:00-23:00、午前は 6:00-9:00 で入浴することができる。残念ながら深夜帯には利用できない。できればチェックアウト前の 10:00 まで入れて欲しい。

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⬑ 中庭? に源泉 1961年 (昭和36年) の掘削らしい

脱衣場入口
⬑ 男湯へ

写真は撮っていないが、脱衣場の外に水飲み場が有った。

脱衣場
⬑ ガラスの向こうが浴室

朝 6:30 に浴場に行ったのに既に3人も入浴していた。その後も入れ替わりで次々と人が入ってきて貸切状態で入浴することはできなかった。だから浴室内の撮影もしていない。

温泉郷の共同浴場ならともかく、市内の旅館で早朝からここまで賑わう光景は珍しい。鹿児島市民の朝は早いようだ。

泉質及び適応症
⬑ 地下800mより140ℓ/分で湧出する温泉

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⬑ 源泉 100% のかけ流しで使用

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⬑ 源泉そのままを使用している

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⬑ 加水・加温無しを執拗にアピール

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⬑ レジオネラ検査 OK

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⬑ 入浴の作法も OK

茶褐色・琥珀色の食塩泉

浴槽は内風呂1つのみ。浴槽の真ん中にあって、手前から奥側にかけて長い長方形。大きさは8人程度が入浴可能。浴槽を右手側に周り込むと壁際に小さな飲泉所があった。

浴槽奥の壁側に湯口があって。少し高さのある岩から褐色透明の湯がジャバジャバと流れ出し、滝のようになって浴槽に注がれていた。湯の流れるところは黒く着色されて少し光沢がある。湯口の周りは焦茶色の析出物が形成されて全体的に丸みを帯びていた。

何度も説明されている通り、温泉は循環せず掛け流しの使用で、浴槽内の吸入、注入ももちろん無し。浴槽縁の全体からゆったりとしたオーバーフローしていた。

湯口から流れ出す湯の温度は 44℃ 程度。分析書上の源泉温度 50 ℃からは比べると少し温度が下がっているようだ。貯湯槽を通ってくるせいだろうか。湯は触れるとやや熱いものの、それほど難なく手に掬うことができた。

浴槽の湯は 41℃ 程度で適温。ただし浴室内の換気は弱めで暑く長時間の入浴は難しい。実際、長湯する人はほとんどおらず、皆少し入って出て行ってしまった。

温泉の色はかなりしっかりと色付いた濃い目の茶褐色。色は強いものの透明さもあり、浴槽の底は見えていたと記憶している。飲んでみるとほとんど無味だが岩っぽい食塩味が僅かにあった。

琥珀の湯
⬑ 琥珀の湯と名付けているらしい

匂いは無臭。次亜塩素酸による消毒を行っているとのことだが、塩素消毒のような香りは感じられず快適だった。施設ではできるだけ消毒を避けたいと考えているようだ。

日本温泉協会 温泉利用証
⬑ 不満そうに「当館の温泉に関しては消毒・塩素剤は必要ないと思いますが、当局の指導にて次亜塩素酸ソーダを使用してます」と書かれている

温泉の成分

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⬑ 温泉の成分禁忌症適応症 (その1)

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⬑ 温泉の成分禁忌症適応症 (その2)

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 甲突川左岸12号
湧出地: 鹿児島市照国15番3
分析年月日: 平成25年5月29日

pH 7.7
泉温: 49.9 ℃ (気温27.1℃)
泉質 ナトリウム-塩化物温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 2857.4 mg/kg
成分総計 2866.2 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
リチウムイオン (Li+)0.400.060.13
ナトリウムイオン (Na+)757.4032.9573.09
カリウムイオン (K+)57.501.473.26
アンモニウムイオン (NH4+)0.500.030.07
マグネシウムイオン (Mg2+)51.304.229.36
カルシウムイオン (Ca2+)121.306.0513.42
ストロンチウムイオン (Sr2+)1.000.020.04
アルミニウムイオン (Al3+)0.700.080.18
マンガンイオン (Mn2+)5.000.180.40
鉄 (II) イオン (Fe2+)0.500.020.04
陽イオン計99645.1100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.800.040.09
塩素イオン (Cl-)1496.042.2090.69
臭素イオン (Br-)5.100.060.13
硫酸イオン (SO42-)84.501.763.78
リン酸水素イオン (HPO42-)2.700.060.13
炭酸水素イオン (HCO3-)147.202.415.18
陰イオン計173646.5100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)125.201.60
メタホウ酸 (HBO2)0.200.00
非解離成分計125.501.60
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)8.800.20
遊離硫化水素 (H2S)<0.1< td>--
溶存ガス成分計8.800.20
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.020 未満--
総水銀 (Hg)0.0005 未満--
銅イオン (Cu)0.05未満--
鉛イオン (Pb)0.05 未満--
カドミウムイオン (Cd)0.05 未満--
亜鉛イオン (Zn)0.05 未満--
有機質0.01--
微量成分計0.000.00

下記にも掲載しました。
甲突川左岸12号 - 湯花草子

源泉は甲突川 (こうつきがわ) の名が入ったもので、鹿児島市内では時々みる。

陽イオンの主な成分は、ナトリウムイオン 73 mval%、カルシウムイオン 13 mval%、マグネシウムイオン 9.4 mval%。陰イオンでは塩化物イオン 91 mval%、炭酸水素イオン 5.2 mval%、硫酸イオン 3.8 mval%。古代海水を思わせる成分。溶存物質量は 2900 mg/kg 程度なので海水そのままではないが、影響は受けているだろう。


  1. 全旅連情報誌 まんすりー 2018年7月号 20188年8月号 (合併号) ↩︎

  2. 南九州の地質・地質構造と温泉, 温泉科学 ↩︎