日帰り, 1回目, 曇り, 2020年度中24湯目

矢巾温泉 南昌の湯、またの名を矢巾町国民保養センター。盛岡市の南に位置する矢巾町で西側の山際にある一軒の温泉施設だ。

今日は秋田焼山の硫黄取りの湯から始めていくつかの温泉を巡ってきたが、八幡平は奥藤七温泉で切り上げ、岩手県側の平野に降りてきた。岩手を南下する途中、ちょうど良い所に矢巾温泉あったので日帰りで入浴した。淡く黄色を帯びた温泉で、はっきりとしたツルツル感がある。山から降りてきた身体を休め、よく温まることができた。

施設・温泉概要

所在地: 岩手県紫波郡矢巾町煙山1-5
Web: 矢巾温泉 南昌の湯
日帰り入浴: 可 10:00-21:00, 定休 毎月第3火曜日, 12/31, 1/2
宿泊: 可 4,650円-

源泉名: 矢巾温泉 (南昌新湯)
湧出地: 岩手県紫波郡矢巾町煙山第1地割1字前山9-3
湧出量: 183.4 L/分 (掘削・動力揚湯)
泉温: 31.1 ℃
pH: 7.9
成分総計: 514 mg/kg
泉質: 単純温泉 (低張性・弱アルカリ性・低温泉)

温泉の利用方法:

加温 加水 循環 消毒
有り 無し 有り 有り

矢巾温泉について

矢巾温泉はそれほど古い温泉地ではなく、1968年 (昭和43年) 9月2日に矢巾観光開発株式会社が矢巾温泉の掘削に成功したのが始まり[1]。その後、同じ源泉で矢巾温泉ヘルスセンターや大楽荘という温泉施設もあったようだが、今は閉館してしまった。Internet Archiveに残る矢巾温泉ヘルスセンターのWebページにわかりやすい説明があったので丸ごと引用しておく。

その昔、源頼義が勅命を受け奥羽東征の際、阿部貞任は部下に命じて毒ヶ森より岩崎川に毒を流した。頼義の軍勢の多くがこの毒に当たり倒れたので、頼義は笊をもってこの毒を濾してこの危うさをまぬがれたという「笊渕」伝説…。
また、八幡太郎義家の東征の際、その乗馬の蹄の跡といわれる「馬蹄石」など、南昌山は古来より開けた山で、神居の谷と呼ばれる渓谷には真冬にも積雪がなく、そこに湧き出る泉に傷ついた駒の足をひたして癒したという言い伝えがあります。
そして、「ぬさかけの滝」は文字通り、この滝に幣をかかげて身を潔め入山したというほど南昌山清龍権現は、深い信仰の対象となった霊山です。
南昌の湯は、南昌山をめぐる岩崎川にかかる名勝「ぬさかけの滝」の下、地下300mの花崗岩層から毎分2,000リットルも噴出する県下で数少ないラドンを含有する放射能泉です。
昭和43年岩手大学村井貞充博士の指導により、矢巾観光開発株式会社が開発し、東亜地質調査株式会社の手によって354mまでボーリングされたものです。

盛岡近郊、矢巾温泉 南昌の湯/矢巾温泉ヘルスセンター (2015/12/27版)

なお南昌の湯の現在の源泉は、その後新たに掘削したもので「南昌新湯」と呼ばれている。

矢巾町国民保養センターの施設と温泉

館内に入ったらフロントで入浴料金を支払い、やけにカクカクと曲った廊下を進む。一番最後まで行くと男女別の大浴場がある。

矢巾温泉 館内図
↑ カックカクの館内

矢巾温泉 館内
↑ 5回目の角

矢巾温泉 脱衣場入口
↑ 脱衣場入口

浴槽は内湯のみで、温泉を加温、循環、塩素消毒して使用している。浴槽は太いL字型で10人程度が入浴できそうな大きさ。けっこう繁盛していて、浴室には次から次へと入ってきていた。

加温が強く、湯の温度は44℃ほどもあってやけに熱かった。昨日、今日で藪を漕いで細かい傷が無数に刻まれた手には、刺激的な温度だった。

温泉の色は淡黄色で透明。浴槽の底はよく見えた。匂い、味は特に無く、無味、無臭。塩素消毒の匂いも特に感じなかった。肌触りははっきりと強いツルツルで、これは心地良かった。

温泉の成分

温泉分析書は公式ページに掲載されている。

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 矢巾温泉 (南昌新湯)
湧出地: 岩手県紫波郡矢巾町大字煙山第1地割字前山9番3
分析年月日: 平成20年3月6日

湧出量 183.4 L/min 掘さく・動力揚湯 (動力18.5kW)
pH 7.9
泉温: 31.1 ℃ (調査時における気温3.9℃) 天候 晴れ
泉質 単純温泉 (低張性・弱アルカリ性・低温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 508.13 mg/kg
成分総計 513.63 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
水素イオン (H+)<0.01< td>----
リチウムイオン (Li+)0.030.000.00
ナトリウムイオン (Na+)88.003.8388.86
カリウムイオン (K+)6.000.153.48
マグネシウムイオン (Mg2+)1.100.092.09
カルシウムイオン (Ca2+)4.600.235.34
アルミニウムイオン (Al3+)0.010.000.00
マンガンイオン (Mn2+)0.050.000.00
総鉄イオン (Fe2+, Fe3+)0.330.010.23
陽イオン計1004.31100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.650.030.66
塩素イオン (Cl-)7.500.214.63
臭素イオン (Br-)0.030.000.00
ヨウ化物イオン (I-)0.010.000.00
硫化水素イオン (HS-)<0.5< td>----
硫酸イオン (SO42-)0.820.020.44
炭酸水素イオン (HCO3-)258.004.2393.17
炭酸イオン (CO32-)1.600.051.10
陰イオン計2694.54100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)138.001.77
メタホウ酸 (HBO2)1.400.03
非解離成分計139.401.80
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)5.50.12
遊離硫化水素 (H2S)<0.5< td>--
溶存ガス成分計5.500.12
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.0010.00
総水銀 (Hg)<0.0005< td>--
銅イオン (Cu)<0.01< td>--
鉛イオン (Pb)<0.01< td>--
微量成分計0.000.00

下記にも掲載しました。
矢巾温泉 (南昌新湯) - 湯花草子

成分総計が少ないため、泉質名はつかないが、純重曹泉寄りの泉質。メタケイ酸の非解離成分は138mg/kgとなかなか多く含まれている。いかにもツルツルしそうな温泉だ。日常的に入浴するなら、これくらいの成分の方が気軽で良いかもしれない。

ただ湧出量が183L/分もあるので、冷たいままでもいいから (寧ろ望むところだが) 掛け流し浴槽も作って欲しい。しかし実際には近隣の福祉施設に配ったりもして潤沢とは言えないのかもしれない。


  1. 矢巾町のあゆみ ↩︎