晴れ 日帰り 1回目
東京都江戸川区、船堀駅から徒歩10分程度にある温泉銭湯、鶴の湯に行ってきた。
源泉冷鉱泉を掛け流しする水風呂があって大変うれしい。水風呂以外の浴槽も清潔感のある湯の使い方で気持ち良かった。源泉はメタケイ酸だが、大田区方面に多く湧き出す黒湯の仲間と言ってよいだろう。
歴史、地理と周辺の温泉
歴史はなんと江戸時代から続くとのこと。現主人の10代前の先祖は江戸で海苔の商売をする中で、船方や旅人向けに銭湯を開業したのが始まりとのこと。現在の鉱泉は、50年以上前から使用している井戸水を1995年に分析したところ、メタケイ酸の成分で温泉に該当することがわかったらしい。[1]
現在の温泉井戸では地下152mから引き揚げているとのこと。[2]
船堀周辺では、その深さだと江戸川層か高砂層の地層から揚湯していることになる。いずれもシルト層、砂層、砂礫層が交互に現われる地層で、砂層、砂礫層が多く水を含んでいるとされる。高砂層は大田区や川崎でお馴染の上総層群に相当する地層と言われる場合もある。[3]
周辺の施設には、船堀駅の南側にしばらく歩くと乙女湯という、これまた黒湯を用いた温泉銭湯がある。ここも冷鉱泉を源泉掛け流しする水風呂がある。入浴したのは数年前だが特にメモをしておらず湯の詳細を思い出せないが、蒲田方面の黒湯のようにモール臭が香る温泉だったような気がする。ここは地下100mから湧出する冷鉱泉を利用しているらしい。
他にはまだ未湯だが、船堀温泉 東京健康ランドまねきの湯やあけぼの湯がある。これらもメタケイ酸泉とのこと。
今後のために営業時間をまとめておく。
施設名 | 定休日 | 営業時間 |
---|---|---|
東京健康ランまねきの湯 | 5:00-26:00 (入浴可能時間) | |
あけぼの湯 | 木曜日, 第1, 3金曜日 | 平日15:30-23:50, 日祝14:00-24:00 |
乙女湯 | 月曜日 (祝日ならば翌日休) | 平日15:00-24:00, 日祝14:30-23:30 |
鶴の湯 | 水曜日 | 15:30-24:00 |
↑ 写真: 船堀鶴の湯温泉 外観
施設
現在の建物は2018年に改装したもの。
↑ 写真: 船堀鶴の湯温泉 入口
↑ 写真: 船堀鶴の湯温泉 脱衣場
温泉を利用した浴槽には、内湯、露天風呂、源泉水風呂がある。
浴室に入ってすぐ右手にあるのが源泉水風呂。すぐ隣にサウナ (別料金) があるため、サウナが出た人が頻繁に出入りする。浴槽は小さい長方形で2人が入浴できる。温度は25℃くらいで、水風呂としては温かめである。湯口は2つあり、浴槽角の湯口と、カランがある。湯口から出る湯は透明に見えるが、これが源泉冷鉱泉。浴槽角の湯口の下にはネットが設置されており、それで湯の花を受け止めていた。
内風呂の右手奥にあるのが温かい黒湯の浴槽。縦に長い長方形で、3人サイズ。その3分の1ほどは電気風呂になっているが、利用している人はいなかった。残り3分の2ではジャグジーにより加温湯を底面から注入している。浴槽の温度は42℃位。横にあった温度計は39℃を指していたが誤っていると思った。浴槽の壁にはカランが付いており、源泉と思われる冷鉱泉が少量注がれていた。
内風呂の隣には扉があり、それを開けると露天風呂に出る。露天風呂は全面が壁に覆われており外の景観は全く無いが、天井部は抜けていて空がよく見える。柱状節理を思わせる石柱が湯口周辺にいくつも立っており興奮を誘った。浴槽はL字型をしており4〜5人が入浴できるサイズの岩風呂。結構広く見えるが、岩で嵩増しされている部分があり、見た目よりも入れない。勿論、浴槽は小さい方が湯の入れ替わりがよくなるので、それ自体悪いことではない。
L字の角に湯口があり、岩を流れて浴槽に湯が注がれている。見える湯口の他に、湯口と同じ位の温度で底面注入が一筋ずつ3箇所、浴槽内壁面から熱い湯を注入する口が少なくとも1箇所あった。浴槽内の温度は40℃くらいに調整されている。
温泉の利用方法と浴感
水風呂は源泉冷鉱泉の掛け流しで加温無し、加水無し、循環無し、消毒無し。湯口から注がれた湯と同じだけの量が、反対側の排水溝に流れていた。
湯の色は淡褐色透明で、紅茶色と表現するとしっくり来る。浴槽の底はよく見えた。
薄皮状の大小の湯の華が浮遊していた。黒湯では白い泡状の湯の花が浮くことが多いので、この薄皮状はあまり見慣れないものだ。大きいものは3cm程もあった。湯の花は、水中では肌色か茶色、水上ではほぼ透明に見える。手に掬い上げて触ると、ぷるぷるヌルヌルする。指でこすると僅かに粘っとしてから消えた。
湯を飲んでみると、無味である。ただ水道水と比べると甘みが舌に残る感じがした。
匂いは無臭。
肌触りは少しヌルヌルした。
また、湯口手前に座ると耳元でザザザという音が響き心地良かった。
内湯は加温有り、塩素消毒有りで利用。湯の色は黄褐色で水風呂と比べると薄く見える。塩素消毒の匂いは特に感じられなかった。
露天風呂は加温有り、塩素消毒有りで利用。湯の色は、暗くてはっきりとはわからなかったが、水風呂と内湯の中間くらいで、浴槽の底がかろうじて見えた。湯口に鼻を近づけると、少しボイラーの匂いがした。湯は温めで、かつさっぱりしているため、ゆったり入ることができるが、上がってみると意外と疲れている。
↑ 写真: 船堀鶴の湯温泉 温泉の利用方法
温泉の成分
源泉名は「船堀温泉つるの湯黒湯温泉」、湧出地は「東京都江戸川区船堀2丁目11番16号」。分析年月日は2009.3.10、湧出量 14t/日 (= 9.72L/分) (掘削・動力揚湯)、pH 8.0、泉温18.2℃、溶存物質計 (ガス性のものを除く) 564mg/kg、成分総計 564mg/kg。泉質名はつかないが、温泉法第二上の別表中に示されたメタケイ酸の項で温泉法の温泉に適合する。
成分は以下の通り:
陽イオンは、
ナトリウムイオン (Na) 128.9mg/kg 5.61mval/kg 77.49mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 6.3mg/kg 0.52mval/kg 7.18mval%、
カルシウムイオン (Ca) 10.2mg/kg 0.51mval/kg 7.04mval%、
カリウムイオン (K) 18.3mg/kg 0.49mval/kg 6.49mval%、
アンモニウムイオン (NH4) 2.3mg/kg 0.13mval/kg 1.80mval%、
以下略、
計 166.1mg/kg 7.24mval/kg。
陰イオンは、
塩化物イオン (Cl) 126.7mg/kg 3.57mval/kg 50.64mval%、
炭酸水素イオン (HCO3) 209.3mg/kg 3.43mval/kg 48.65mval%、
以下略、
計 337.6mg/kg 7.05mval/kg。
遊離成分で非解離成分は、
メタケイ酸 (H2SiO3) 56.3mg/kg 0.72mmol/kg、
メタホウ酸 (HBO2) 2.2mg/kg 0.05mmol/kg、
腐植質 2.0mg/kg、
計 60.5mg/kg 0.77mmol。
↑ 写真: 船堀鶴の湯温泉 温泉分析書
↑ 写真: 船堀鶴の湯温泉 温泉分析書別表
先述の通り、泉質名は付かないが、傾向としてはナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉になる。