晴れ 日帰り 1回目

群馬県と長野県の県境を越えるとき、国道17号線で標高約1,000mの三国峠を抜ける。峠の頂上付近は長さ1,218mの三国トンネルが貫く。よく整備されている大国道なので真冬以外は通交上不安は無い。

貝掛温泉は長野県側南魚沼郡にある一軒宿。三国峠の中腹付近、標高約680mの山間に建つ。頂上の標高から比較すると随分と下ったところにあるが、実際に訪れてみるとかなりの山奥の印象を受けた。貝掛温泉はさらに、国道から外れて細い急坂を降り、清津川を跨ぐ橋を渡った先にある。なかなかの秘湯感があるアプローチで気合が入る。

貝掛温泉入口

宿は想像以上に立派な出で立ち。歴史ある旅館であることを感じた。開湯から700年、創業からは二百数十年、建物は築百数十年の民家を改築したもの、とのことである。館内の記事によると鎌倉時代にあっただの室町時代にあっただの書いているが、具体的な記録はよくわからない。

貝掛温泉正面

玄関は写真だと質素そうな雰囲気で写っているが、実際には結構どっしりとしており、先述の通り立派な印象。

貝掛温泉玄関

この手の旅館では日帰り入浴客に冷たいことも多いが、丁寧に対応してくれた。優しい。

浴場は玄関を抜け、館内をジグザグに進み、これまた立派な廊下を抜けた奥にある。木が光っている。

貝掛温泉廊下

貝掛温泉脱衣場入口

貝掛温泉脱衣場

貝掛温泉浴室入口

浴場は男湯と女湯で分かれており、それぞれに内湯と露天風呂が個別に設置されている。どうも男湯の露天風呂の方が大きいようだ。たぶん、昔は男女混浴で大きい浴槽を使っていたところを、後の時代に男専用の浴槽とし、女湯を隙間に設置したのではないか。露天風呂はぬるい湯のみ、内湯はぬるい浴槽と熱い浴槽があるが、ぬるいほうが36.8℃の源泉をそのまま利用しているようだ。

貝掛温泉浴室見取り図

熱い湯は42℃くらいに感じた。身体が冷えてしまった時に入るくらいで、基本は源泉浴槽だけ浸かっていればよいと思う。
なお、深夜は熱い湯も非加熱になるらしい。

貝掛温泉 深夜は非加熱

露天風呂は大きいアブの猛攻に遭い撤退。超高速で体の180度を周回しながら攻撃してきたため姿を捉えることすら難しく、逃げる他無かった。悔しい。

貝掛温泉浴室

内湯のぬるい方の湯は源泉をそのまま利用している。温度はちょうど体温くらいである。入浴した直後はほの温かく感じられるが、しばらく浸かっていると全く温度を感じなくなった。いわゆる不感温度というやつである。

浴槽の縁には木枕が引っかかるようになっており、これに頭を乗せて休むことができる。何故かわからないが大変に収まりが良く、よく眠れる。日本トップクラスに眠ると気持ちいい温泉じゃないだろうか。

浴室の右手奥の角に湯口が設置されており、大量の源泉がジャバジャバと常に浴槽に注がれていた。反対側の浴槽横から絶えずオーバーフローしている。分析書によると湧出量406L/分とのこと。しかも自然湧出らしい。滑らかな湯で、鮮度は極めて高く感じた。肌への泡付きも見られた。湯口から離れても泡が付いたので、本当の泡付きかと思われる。

飲んでみると湧水っぽい味がした。そりゃそうなんだが。少しの甘みが感じられた。

嗅覚、視覚については、無臭、無色透明。

貝掛温泉歴史

源泉湯宿を守る会

源泉名は旅館の名前を冠した貝掛温泉。最新の調査年月日はH24.9.24。泉温36.2℃、湧出量406L/分 (自然湧出)、pH7.7、蒸発残留物2,098mg/kg、溶存物質 (ガス性のものを除く) 1,993mg/kg、成分総計1,994mg/kg。泉質はナトリウム-カルシウム・塩化物温泉 (低張性弱アルカリ性温泉) となる。

陽イオンは、ナトリウムイオン (Na) 406.7mg/kg 17.69mval 51.20mval%、カルシウムイオン (Ca) 328.5mg/kg 16.39mval 47.43mval%、リチウムイオン (Li) 1.5mg/kg 0.22mval 0.64mval%、以下略。計744.3mg/kg 34.55mval。

陰イオンは、塩素イオン (Cl) 1026mg/kg 28.94mval 89.63mval%、硫酸イオン (SO4) 140.9mg/kg 2.93mval 9.07mval%、炭酸水素イオン (HCO3) 18.9mg/kg 0.3mval 0.93mval%、以下略。計1195mg/kg 32.29mval。

非解離成分計53.4mg 0.89mmol、溶存ガス成分計0.6mg 0.01mmol。

貝掛温泉 温泉分析書

貝掛温泉 温泉分析書別表

貝掛温泉 温泉利用証

旅館の廊下の壁にはたくさんの記事の切り抜きが貼られていた。

貝掛温泉記事1

貝掛温泉記事2

貝掛温泉は目に良い湯として知られている。源泉に目を浸す湯治方法があるようだ。

一般的に目に良いとされる湯はアルミニウムを含んでいることが多く、微温湯温泉二階堂旅館や、草津温泉地蔵の湯は明礬泉 (含アルミニウム硫酸塩泉) である。

ここ貝掛温泉はアルミニウムを全く含まない。貼り出してあったサンテCLの記事によるとメタホウ酸が市販の目薬でよく使われる成分であるという。だがメタホウ酸含有量、濃度で言えばもっと多く含まれている温泉も珍しくない。例えば埼玉の百観音温泉ではメタホウ酸177.2mg/kg 4.04mmolを含んでいる。強塩泉なのでそもそも目には強すぎるのかもしれないが。塩化ナトリウム、塩化カリウム成分量が生物的にちょうど良いのかもしれない。

アルミニウムを含まないが目に効くとされる温泉には鬼首温泉の轟温泉目の湯がある。

貝掛温泉記事3

貝掛温泉記事4

貝掛温泉記事5

貝掛温泉記事6

貝掛温泉記事7