元湯・天然温泉 築地戎湯 (2020/11/29)

日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中73湯目

用事があって大阪にやってきた。昨日は羽曳野市で「天然温泉 華の湯」に入浴した。今日で新大阪から新幹線で帰宅することになるので、最後に兵庫県尼崎市の銭湯「元湯・天然温泉 築地戎湯」に入浴することにした。大阪市内から電車で10分くらいで着いてしまうので便利だ。

温泉は地下 700m より湧出する単純温泉で、金気味、金気臭のある黄褐色の湯を非加熱、非加水で贅沢に掛け流ししている。深さのある浴槽に新鮮な温泉がたっぷりと湛えられており、浸かっていて心地良かった。

天然温泉 華の湯 (2020/11/28)
ビリッとした鹹味の温泉に新鮮なまま浸かる「天然温泉 華の湯」

施設・温泉概要

所在地: 兵庫県尼崎市築地2-2-20
Web: 元湯・天然温泉 築地戎湯 | 兵庫県公衆浴場業生活衛生同業組合
日帰り入浴: 可 10:00-24:00, 土日祝7:00-24:00
宿泊: 不可

源泉名: 戎の湯
湧出地: 兵庫県尼崎市築地二丁目77番
湧出量 430 L/min (掘削 700m・動力揚湯)
泉温: 42.7 ℃
pH: 8.1
成分総計: 434.21 mg/kg
泉質: 単純温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 単純温泉

一番良い浴槽の温泉利用方法:

加温 加水 循環 消毒

尼崎の地下 700 mより湧出する温泉

築地戎湯は兵庫県の尼崎市にある温泉銭湯。「えびすゆ」と読む。

尼崎市は兵庫県の最も東に位置し、中島川、左門殿川 (さもんどがわ) を挟んで大阪市と隣接する。尼崎駅はJR神戸線と阪神本線の2路線に別々にあって、互いに 2km 位離れている。戎湯に近いのは海側、阪神本線の尼崎駅である。すぐそばに尼崎城があり地域の憩いの場になっている。そこから徒歩 600m くらいで戎湯だ。

戎湯の創業は 1887 年 (明治20年) 頃で歴史ある銭湯だが、温泉を掘削したのは阪神・淡路大震災後の 2001 年 (平成13年) [1]。それから 2002 年 (平成14年) にリニューアルし、現在の建物はほどよく綺麗に保たれている。


⬑ 高い煙突が目印


⬑ 入口に貯湯槽らしきもの


⬑ 暖簾をくぐって中へ


⬑ 営業時間


⬑ フローリングの綺麗な館内


⬑ 入口に温泉掘削のピットが展示されていた

温泉は地下 700 m の掘削により湧出した。この辺りの地下は大阪の平野部と同じく大阪層群という、海や湖、火山灰の堆積物からなる地層が分布している。地層の年代は新第三紀の鮮新世 (〜5,300 万年前) から第四紀の前期更新世 (約 180万年前〜)。少なくとも地下 400m までは大阪層群で、それ以深はデータが見つからなかった。ただ周辺では地下 1000m 以上まで大阪層群が存在するので、戎湯もこの地層から湧出すると思うことにする。

金気のある温泉をぬるめに掛け流し

脱衣場で着替えていると、老人が足を滑らせて転倒したらしく、救急車に運ばれていった。どうやら大丈夫そうだったが…。浴室内はそこそこ混雑し繁盛しているようだった。

温泉を使用する浴槽は、内湯と露天風呂に1つずつ。

内湯は石張りのカッチリした浴槽で長方形5人サイズ。ただし深さがあるので見た目以上の人数が入浴でき、一番多い時は7人も浸かっていた。浴槽の一部は電気風呂になっていて1人しか入れない。湯口は浴槽の角には置かれるように設置されており、多少加温されたと思われる湯が常に浴槽へ注がれていた。

露天風呂は大きな岩風呂で6人が余裕をもって入浴できる大きさ。浴槽には深さもあって、見た目よりもゆったりしているし、湯量も多くて快適だ。湯口は露天風呂の外壁側にあって、背丈程度の高い岩の上から瀧になって浴槽に注がれている。湯は加温無し、加水無し、循環無し、消毒無し、と素晴らしい使い方をしている。

浴槽の湯の温度は 40 ℃程度でぬるめ。温度や泉質のせいか疲れにくく、のぼせにくいため長時間浸かり続けることができる。地元の方も含め皆かなりゆっくりと時間をかけて入浴しているようだった。温まりは程々で、脱衣場に出たらすぐ身体が冷めるというわけでもなければ、秋空の下に出て数十分も火照るというわけでもない。しかし長く浸かった分だけ、体の奥までじわりと温まっているように感じた。

湯の色は浅い淡黄色で透明。浴槽の底ははっきりと見える。湯の華などの浮遊は無い。

飲んでみると、弱いが確実な金気味がはじめにあって、その後は殆ど無味。重曹泉らしい甘みとほろりと苦味があった。匂いも同様の印象で、金気臭が先行してあとは無臭。分析書や Web 上の記録によると硫黄の匂いがあるとのことだが、今日は感じられなかった。

肌触りは少しなめらか。ツルツル感は特に無かった。

一昨日入浴した八尾温泉と印象の方向性が似ている。戎湯の方がよりあっさりしている感じがした。成分的にはそれほど似ていないな…。


  1. 【阪神大震災21年】尼崎の人情銭湯「築地戎湯」 液状化被害も乗り越え、4代目辻野さん「続けてよかった」(1/3ページ) - 産経ニュース ↩︎

八尾元湯温泉 八尾グランドホテル (2020/11/27)
強い金気のある黄褐色の温泉をほぼかけ流し「八尾元湯温泉 八尾グランドホテル」。大阪旅行の宿としても便利。

温泉の成分

温泉分析書が、建物の玄関のガラス戸に入っている他、外にもでかでかと印刷されていた。いずれも2011年 (平成23年) の分析書。


⬑ 2011年 戎の湯


⬑ いいところに恵比須さんの釣竿がかかってしまったので、少しずらして撮った


⬑ 温泉分析書別表


⬑ 外の看板裏にも大きく印字されていた 浸からなくても分析書が読めるぞ

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 戎の湯
湧出地: 兵庫県尼崎市築地二丁目77番
分析年月日: 2011年7月25日

湧出量 430 L/min (動力揚湯)
pH 8.1
泉温: 42.7 ℃ (気温: 34.6℃)
泉質 単純温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 434.01 mg/kg
成分総計 434.21 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
水素イオン (H+)0.1以下----
リチウムイオン (Li+)0.1以下----
ナトリウムイオン (Na+)99.704.3493.74
カリウムイオン (K+)0.900.020.43
アンモニウムイオン (NH4+)0.800.040.86
マグネシウムイオン (Mg2+)0.700.061.30
カルシウムイオン (Ca2+)3.400.173.67
ストロンチウムイオン (Sr2+)0.1以下----
アルミニウムイオン (Al3+)0.1以下----
マンガンイオン (Mn2+)0.1以下----
鉄 (II) イオン (Fe2+)0.100.000.00
鉄 (III) イオン (Fe3+)0.1以下----
陽イオン計1064.63100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.600.030.65
塩素イオン (Cl-)10.700.306.47
臭素イオン (Br-)0.1以下----
ヨウ化物イオン (I-)0.1以下----
硫化水素イオン (HS-)0.1以下----
硫酸イオン (SO42-)0.200.000.00
亜硝酸イオン (HNO2-)0.1以下----
硝酸イオン (NO3-)0.1以下----
リン酸水素イオン (HPO42-)1.400.030.65
炭酸水素イオン (HCO3-)261.004.2892.24
炭酸イオン (CO32-)0.1以下----
陰イオン計2744.64100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタ亜砒酸 (HAsO2)0.1以下--
メタケイ酸 (H2SiO3)54.100.69
メタホウ酸 (HBO2)0.400.01
非解離成分計54.500.70
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)0.200.00
遊離硫化水素 (H2S)<0.1以下< td>--
溶存ガス成分計0.200.00
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.010.00
総水銀 (Hg)0.00005 mg 以下--
銅イオン (Cu)0.05未満--
鉛イオン (Pb)0.01 mg 以下--
カドミウムイオン (Cd)0.01 mg 以下--
亜鉛イオン (Zn)0.01未満--
微量成分計0.010.00

下記にも掲載しました。
戎の湯 - 湯花草子

溶存物質量が 434 mg/kg しかないので泉質は単純温泉。成分はナトリウムイオンと炭酸水素イオンが両方とも 90 mval% 越えで純重曹泉に近い。金気味、金気臭があったが、鉄イオンが多く含まれているわけではなく、どうしてなのかよくわからない。時々ある、鉄以外の金気の温泉だ。硫化水素臭についても、要因がわからない。

メタけい酸は 54 mg/kg と、鉱泉の定義値を越えていて、ツルツルとした感触が期待できる。