八尾元湯温泉 八尾グランドホテル (2020/11/27)
宿泊, 1回目, 晴れ, 2020年度中71湯目
用事があって大阪へやって来た。せっかくだから温泉のあるところに泊まりたいと思って調べると、大阪市南東の八尾市にある八尾天然温泉「八尾グランドホテル」で湯の使い方が良いらしい。大阪市内から近く、料金は安く素泊りも可能、チェックインの受入時刻も長いので、旅の宿としての利便性も高い。
八尾天然温泉は古墳時代、日本に仏教が広がり始めた頃から知られており、軍事拠点の保養場所として利用されてきた。当時の温泉は500年前には湧出を止めてしまったが、その後 1200m の掘削により黄褐色の温泉が湧出した。泉質は含重曹食塩泉で落ち着くもの、湧出量は 172.8 ℓ/分で大阪では豊富な方。
湯はほとんど掛け流しに近い状態で使われていて、さらに浴場内で源泉が放出され飲泉できるようになっている点がとても嬉しい。飲むと強烈な金気が口に広がって、温泉を味わった充足感がある。
今後も、大阪に泊まるときの宿候補としてずっと覚えておきたい。
施設・温泉概要
所在地: 大阪府八尾市八尾木北五丁目101番地
Web: 八尾グランドホテル
日帰り入浴: 可 10:00-32:00
宿泊: 可 素泊まり 8,250円〜
源泉名: 八尾天然温泉
湧出地: 大阪府八尾市八尾木北五丁目101番地
湧出量: 172.8 ℓ/分 (動力揚湯)
泉温: 43.9 ℃
pH: 7.88
成分総計: 記載無し
蒸発残留物: 2,030 mg/kg
泉質: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 食塩泉 / 含重曹食塩泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
無? | 無 | 有 | 有 |
古墳時代から知られる歴史ある温泉
八尾 (やお) 天然温泉 八尾グランドホテルは大阪府八尾市にある。八尾市は、大阪市から見ると南東方向、堺市から見ると東側に位置する。富山の越中八尾 (やつお) とは関係無い。八尾駅は天王寺駅からは、JR 大和路 (やまとじ) 線に乗って5駅、時間にしてたったの10分で到着する。地図上ではもっと遠そうに見えるのに不思議だ。大阪は電車が速いのだろうか。
⬑ 河内の秘湯 言い伝えのかくし湯
大阪には大阪平野という大きな平野が広がっていて、市内から八尾に来るまでの間もずっと平地だったが、ここまで来ると東側に低い山並みが見えるようになった。これは生駒 (いこま) 山地というらしい。その先は奈良県だ。
生駒山地の西側の縁は崖になっている。この崖の下には断層が延びており、新第三紀の鮮新世から第四紀の前期更新世 (約180万年〜5300万年前) にかけて、断層の東側が隆起し、西側は沈降したために崖になったとされる。この断層は生駒断層と呼ばれる。この間、大阪平野や奈良盆地まで海や湖沼が広がっており、こうして堆積した粘土や火山灰の地層群は大阪層群と呼ばれている [1]。大阪の平野部では大体、この大阪層群か、その下の基盤岩から温泉を採取している [2]。例えば6月に訪れたホテル阪神大阪なんかも同様だ。
最近 (?) でも縄文時代には八尾のあたりまで海が広がっており、地下数メートルまでの厚さまで沖積層が分布している。八尾天然温泉は昔から湯が自噴していたとされ、古墳時代から度々、軍事拠点での保養に活用されてきたとされる。先述の断層に沿って、温められた地下水が温泉として湧いていたのかもしれない。その後、残念ながら当時の湯は 1510年 (永正7年) の河内地震により湧出が止まってしまったらしい。これらについてはなぜか八尾のデイサービスセンターのサイトに詳しく書かれている [3]。八尾グランドホテルの浴場に掲示されていた文章も、サイトのものと同じだったような気がする。
現在の温泉は、その後 1,200 m の掘削を行って掘り当てたもの [3:1]。温泉を掘削する前はジパング日本海という名前で経営していたが、1992年、温泉を使用した八尾グランドホテルとしてオープンした。1,200 m だと、大阪層群の下部、基盤岩との境界あたりから揚湯していることになる。
⬑ ホテルの外にあやしい一角があり「温泉源泉湧出中です」と書かれていた
⬑ しかし水気が全く無し
ちょうど近くにいたお姉さん (おばさん) 曰く、前は湯が出ていたそうだ。
ところで春日温泉、安中温泉、豊栄温泉、恩智温泉、中央温泉など、付近にはその名に「温泉」も持つ銭湯が多数あるが、残念ながらいずれも天然温泉は利用しておらず只の銭湯。大阪では、元々温泉が少ないせいか、非温泉の銭湯でも平然と温泉を名乗ってくる。天然温泉を求めるならば、施設の名前だけ見て適当に行くのではなく事前に調べておく必要がある。
恩智駅の北西にある 八尾おゆば では、公式ページでも全く触れられないながらも一応、温泉を使用している。源泉名は「柏寿温泉」。
大衆演劇もある
さて、大体調べ終わったところで現代の八尾グランドホテルの話に戻る。今回は宿泊だが、いつも通り温泉以外のことは省略する。
⬑ 6階建てのホテルで、大浴場は1階
右側に視線を向けると…
⬑ 劇場になっている
八尾グランドホテルでは大衆演劇もウリの一つとしている。観なかったけど。そういえば、2週間前に寄った埼玉の「よしかわ天然温泉 ゆあみ」でも大衆演劇をやっていた。なんとも奇遇だ。まあ、これも観なかったんだけど。
⬑ 建物の中へ
ちなみに本当は夜にチェックインしたので、写真は全部、翌朝に撮ったものだ。
⬑ 館内には井戸らしきオブジェクトがあって「八尾温泉」と書かれていた
⬑ 覗いたけどよくわからなかった
⬑ 井戸の反対側に脱衣場への入口
⬑ 縦長ロッカーの並ぶ脱衣場
このロッカー感は、横浜の「ヨコヤマ・ユーランド鶴見」と同年代の雰囲気がある。
強い金気の黄色い湯
大浴場は常に賑っていて、貸切にならなかったので写真を撮らなかった。だから以下の文章では公式ページの写真を参照しながら読んで欲しい。公式ページの写真ではなぜか一部の浴槽に温泉が張られていないが、露天風呂の湯の色が実物に近い。
浴場は広々として、内湯と露天風呂で大小合わせ6つの浴槽がある。うち温泉を使用した浴槽は、内湯の元湯バイブラ浴槽、漢方浴槽 (薬湯)、腰湯浴槽、あつ湯 (高温) 浴槽と、露天風呂の健康浴槽。元湯バイブラ浴槽、腰湯浴槽、あつ湯浴槽はそれぞれ、はっきりと「源泉100%」と掲示されていた。漢方浴槽には「源泉100%+漢方」と書いてあった。他に水風呂が内湯にあったが、これは温泉使用ではなかった。
一番大きい浴槽は腰湯で、浴槽外縁だけで25人は入浴できる大きさ。残りの浴槽も外縁だけでそれぞれ12人が入浴できそうだったので、多少賑わっていてもゆったり湯に浸かることができた。湯量も豊富で浴槽からはオーバーフローがある。
湯の色は、露天風呂で日が当たると黄緑色透明に見えた。浴槽の底は翳りなくはっきりと見える。実際のところ、温泉単体の色は淡黄色透明だと思うが、浴槽内面のタイルの水色を映して黄緑になったと思われる。
味について、飲泉所が浴室内にいあった。浴場の中央にはが立ち、ライオンの湯口が付いている。その周りにはプラスチックのカップや漏斗やらが掛けられており、どうぞ飲んでくださいというメッセージを感じ取った。
ライオンの湯口からは温い湯がジョロジョロと流されていた。その湯が落ちる先には丸いポリ浴槽。入浴するには少し小さいようなので、かけ湯等のために設置されているのだろう。
柱には、タバコを吸う人などはうがいして下さいと記載が有って、その隣にはうがい捨てバケツが置かれている。見ていると、おじさんがうがいすると立ったままバケツに湯を吐き捨てていて……インパクトがあった。昨今の世間の過剰気味な清潔意識の中、それで本当にいいのか?
気を取り直して、ライオンの口から直接、湯を受けて飲んでみると、はっきりとした金気味があって印象的だった。手で掬った少量の湯でも明瞭な金気が感じられたので、かなり強い味覚だ。これのせいで他の味がよくわからないが、重曹泉系の地下水の甘みが少し感じられた。金気以外は概ね無味と言ってよい。
匂いも無臭。湯口に鼻を近づけると消毒臭? と感じられる匂いがあったが、仄かなもので、塩素薬剤によるものか、異なる成分によるものか、判別がつかなかった。
入浴中、肌触りは想像したほどツルツルせず、それといった特徴は感じられなかった。温まりもあまり強くないのでゆっくり湯に浸かれる。浴槽から出たあとも、熱は長引かず汗はそれほど時間がかからない内に止まった。
温泉の成分
温泉分析書をプラスチック板に印刷したものが、脱衣場入口の横に掲示されていた。しかし成分表は記載無し。
⬑ 平成4年3月 八尾天然温泉
⬑ 温泉分析書別表
⬑ 別表の別バージョン
おまけ
宿泊の場合、入浴時間は 10:00 〜 8:00 まで。朝出発前に入浴していこうと思ったら、清掃に入ってしまっておりショックだった。
⬑ 午前8時から清掃のため浴室・脱衣場には入れません
と思ったら、チェックアウト時に当日分の無料入浴券をくれて、もう一度入浴することができた。これは嬉しすぎるサービス。素晴しき八尾グランドホテル。市内に近いし安いし使い易い、湯の使い方も悪くない。また来よう。
⬑ 八尾グランド 日帰り温泉 フリー入泉券
おまけ その2
大阪に来たのはマジカルミライ 2020 という初音ミクのライブに参加するためだった。
⬑ 通天閣にミク
⬑ インテックス大阪にミク
⬑ 実物大ミク