2020/3/12 七光台温泉

深く掘れば古代海水が出てくるのは、はるか昔、このあたりは海の底にあった時代があって、当時の海水が地層に閉じ込められたためとされる。場所により深さの差はあるものの、1,000メートル以上の地下深くでは三浦層群という基盤岩の地層があり [1]、この地層は第三紀中新世 (500万年〜2300万年) 前の海の底のものであると考えられている。この海は古東京湾と呼ばれる。

施設

現在に戻ると、七光台温泉はイオンタウン野田七光台内にあるスーパー銭湯的な日帰り温泉施設。小さな食堂はあるが、あまり大きくは無い。 綺麗だがあまり派手じゃない感じは千葉郊外のスーパー銭湯型温泉に多い。

外観は、建物正面の石門など、何やら石が目立つ構造になっている。石が好きなんだろうか?いい趣味だ。


↑ 写真: 七光台温泉 外観 2階は露天風呂

石門の他にも色々な石が展示?されている。


↑ 写真: 七光台温泉 富士山巨大火山弾

此処に展示してあります岩石は宝永4年 (1/07年) 富士山の大噴火により山梨県の富士山北麓に埋蔵さていたものを発掘した玄武岩質の巨大火山岩であります。
これは火山が噴火してマグマが地中に飛び散り落下冷却してできますが、多くは紡錘形でありこのように円形のものは極めて珍しい貴重なものであります。


↑ 写真: 七光台温泉 正面

写真左手の掲示を読むと、七光台温泉の特徴として次が紹介されている。

当温泉は、-ナトリウム-塩化物泉の中でも【塩化物強塩温泉】と呼ばれます。浴用すると、塩分が肌に付着し汗の蒸発を防ぐ事から、湯冷めしにくいという特徴があります。また【高張性】の温泉は、別名【古代湯】などと呼ばれ、塩分濃度が高く大変貴重な温泉と言われておりますが当温泉の溶存成分総計は20g/kg以上と高張性の基準をはるかに上回りました。その為、より多くの温泉成分が体内に入り込むと考えられております。ぜひ、この七光台の地に湧き出た天然温泉をごゆっくりとご堪能下さいませ。


↑ 写真: 七光台温泉 源泉について

営業時間は9:00〜25:00 (受付24:30まで)。

料金は平日630円、土日祝730円。設備に対し良心的な設定である。


↑ 写真: 七光台温泉 営業案内

内側玄関の左手にはボーリング時の写真。平成15年のものである。


↑ 写真: 七光台温泉 ボーリング時の写真


↑ 写真: 七光台温泉 挨拶

同じ場所にボーリングの掘削ピットも展示されていた。


↑ 写真: 七光台温泉 入口


↑ 写真: 七光台温泉 内観

2階が浴場である。
2階に上がらず階段の裏手に回るとまた石の展示。こちらは湯布院溶岩石と阿蘇溶岩石らしい。


↑ 写真: 七光台温泉 溶岩石


↑ 写真: 七光台温泉 2階 脱衣場入口

浴場は男女別でそれぞれに内風呂と露天風呂がある。


↑ 写真: 七光台温泉 館内図

浴室に入るとすぐ左手に水風呂がある。右手は洗い場。
直進して先に進むと右手に大浴槽があるが、これは非温泉の湯。左手は温泉の大浴槽がある。水風呂と非温泉の浴槽は井水の循環・塩素消毒とのこと。

その先には、露天風呂への出入口がある。露天風呂は広く、主浴槽、源泉浴槽、壺湯3つ、寝湯がある。いずれの浴槽も温泉を利用。

主浴槽は変形したL字型で10人以上が入浴できる大きい浴槽。湯口と底面注入があるが、いずれも循環湯を利用しているように感じた。主浴槽の端の一部は一段高くなっており、そちらは源泉浴槽である。源泉浴槽から溢れた湯は大浴槽に合流するようになっている。

源泉浴槽は円形で2人が入浴できる。浅めなので普通に座ると肩が湯から出てしまうため、ちゃんと浸かるためには少し寝そべる姿勢になる必要がある。浴槽の容積は多くなさそうだ。湯口は浴槽の傍の穴から湧き出た湯を浴槽に流す構造。湯量は多くなくサラサラと浴槽に注がれている。

壺湯は主浴槽と同じ湯を使っていると思われる。寝湯はごく浅く温泉が流されている。

温泉の利用方法と浴感

温泉の利用方法について、写真は撮れなかったが、脱衣場に掲示があった。

内風呂の大浴槽は温泉を加温有り、加水有り、循環有り、塩素消毒有りで利用している。温度は41℃位。

露天風呂の主浴槽、壺湯、寝湯も加温有り、加水有り、循環有り、塩素消毒有りでの利用。源泉浴槽は加温のみ有りで、加水無し、循環無し、塩素消毒無しで利用している。ただし、けっこうしっかりと除鉄されていると思われる。いずれも40℃程度でぬるめ。

以下では源泉浴槽での浴感に絞って記載する。

湯の色は無色透明。視覚的な達成感は少ない。

飲んでみると強めの塩味に苦味があった。独特の後味があり、ポリ袋のような薬品のような匂いが鼻に抜ける。塩素消毒とは微妙に異なる。変わった匂いであるが、これこそが臭素臭と理解しておくことにした。慣れるまではかなり飲みにくい。

飲まなければ概ね無臭で、やや謎の薬品臭。これもおそらく臭素によるものではないだろうか。

肌触りは特徴が無く温泉感は少なめだった。身体の温まりは弱めで、強塩泉らしい力強さはあまり無かった。

源泉温度は44℃で適温のため、加温無しでも使えそうに思えた。

温泉の成分

脱衣場に温泉利用方法の図と温泉分析書が大きく掲示されていたが、カメラを構えるとかなり目立つため撮影できず。

基本的な情報とは 気まぐれ♨湯探訪日記 さんの記事 に記載された温泉分析書を参考にしつつ、温泉成分量は自作ソフトで算出した。大体あっているものの、公式の分析書はイオンのミリバル量が1/1000台まで計算されていることもあり、やや合計値がずれている。

湧出量などは公式ページに掲載されている。天然温泉・サウナ | 七光台温泉

源泉名は野田七光台温泉、湧出地は記載無し。分析年月日は2003.12.24、湧出量 581L/分 (動力揚湯・掘削深度1,243m)、pH 記載無し、泉温 44.3℃、溶存物質計 (ガス成分を除く) 23,819 mg/kg、成分総計 23,872mg/kg、泉質はナトリウム-塩化物強塩温泉 (中性・高張性・高温泉)。

陽イオン:

成分 mg/kg mval/kg mval%
リチウムイオン (Li) 0.8 0.12 0.03
ナトリウムイオン (Na) 8141 354.11 86.84
カリウムイオン (K) 84.0 2.15 0.53
アンモニウムイオン (NH) 0.1 0.01 0.00
マグネシウムイオン (Mg) 243.4 20.03 4.91
カルシウムイオン (Ca) 614.6 30.67 7.52
ストロンチウムイオン (Sr) 18.9 0.43 0.11
バリウムイオン (Br) 4.5 0.06 0.01
アルミニウムイオン (Al) 0.05 0.01 0.00
マンガン (II) イオン (Mn) 0.2 0.01 0.00
鉄イオン (Fe) 5.3 0.19 0.05
陽イオン計 9153.35 408.29 100

陰イオン:

成分 mg/kg mval/kg mval%
フッ素イオン (F) 1.1 0.06 0.01
塩素イオン (Cl) 14310 403.63 98.99
臭化物イオン (Br) 72.4 0.91 0.22
ヨウ化物イオン (I) 5.8 0.05 0.01
硫化水素イオン (HS) 0.03 0.00 0.00
硫酸イオン (SO2) 2.8 0.06 0.01
炭酸水素イオン (HCO3) 186.1 3.05 0.75
陰イオン計 14578.23 407.76 100

遊離成分:

非解離成分 mg/kg mmol/kg
メタケイ酸 (H2SiO3) 36.0 0.46
メタホウ酸 (HBO2) 91.9 2.10
非解離成分計 127.9 2.56
溶存ガス成分 mg/kg mmol/kg
遊離二酸化炭素 (CO2) 53.4 1.21
溶存ガス成分計 53.4 1.21

成分総計24,000mg/kgは海水に迫る成分量で、なかなかの濃い温泉。ただ、硫酸イオン量、マグネシウムイオン量の少なさから古代海水の温泉と考えられる。

ナトリウムイオンと塩素イオンが、陽イオンと陰イオンのそれぞれ主要な成分。ナトリウムイオン量が 5,500mg/kg、塩素イオンが 8,500mg/kg を越えているため、強塩泉に分類される。

参考資料


  1. 中澤努・田辺晋 (2011) 野田地域の地質, 第8章 深部地質, 地域地質研究報告 (5万分の1地質 図幅), 産総研地質調査総合センター, p.57-59 ↩︎