2019/10/5 矢向湯
日帰り 晴れ 1回目
矢向湯は神奈川県川崎市にある温泉銭湯。東京都南部から神奈川県東部にかけて広がる、お馴染みの黒湯を使った温泉である。
川崎市を横断して走るJR南武線で川崎駅から2駅乗ると矢向駅に着く。そこで下車して住宅地を10分無いほど歩くと、矢向湯は右手に見える。駅から踏切を渡り真っ直ぐなので間違うところは無い。
なお、当日はもともと川崎市中原区の橘湯に入浴するつもりだったのだが、行ってみたら休業日だったので、近い矢向湯にやって来た次第である。
以下は、本日休業な橘湯を正面から撮影した。
川崎周辺で珍しい源泉浴槽
この地域には、橘湯の他にも多くの温泉銭湯がある。
まず矢向が最寄り駅の範囲で、すぐ近くに縄文天然温泉志楽の湯がある。ここは大型スーパー銭湯で地下1300mから動力揚湯する古代海水の強塩泉を利用している。塩素消毒臭が結構強いため個人的にはあまり好みでない。
駅の反対側にあるのが冨士の湯。ここは小さな温泉銭湯だが、内風呂と露天風呂に黒湯を利用している。透明度は50cmくらいと過去の記事に書いてある。(2019/3/11 富士の湯)。湯の使い方は残念ながら加温有り、加水たぶん有り、循環有り、消毒有りだが、混雑せず広々とした浴槽が魅力的。
他には川崎駅近くの桐の湯、鶴見の末吉温泉ヌーランド鶴見、また県を跨ぐが距離的には蒲田や池上の温泉もかなり近く、池上温泉、桜館、はすぬま温泉、等々…。
ただこれらの温泉施設の中で源泉浴槽のあるところはほとんどない。矢向湯には小さいながら冷たい源泉があるから、ここは大変な魅力のある施設である。
矢向湯外観。渋い外見も素晴らしい。
立体的な浴槽が面白い
浴室は男女別で、それぞれほぼ正方形の素朴な形。浴室の半分以上は浴槽で占められており、洗い場が
浴室中央に立体的な浴槽。それを取り囲むようにL字型に壁際の洗い場が配置されている。
面白いのは浴槽が立体的な構造になっていることだ。といっても二段だが、全ての浴槽が一まとまりになっていて、その中で階段を使った上下があるのはまるで遊具みたいだと思った。
写真を見ると、浴槽がパズルのように組み合わされているようにもみえる。立体的な部分は映っていないが、この右側に隠されている。
上の写真、中央左手の大きな浴槽が41℃の中温湯。色々なところが飛び出たL次型をしていて、サイズは5人が同時に入れそう。湯は黒湯で、加温有り、加水無し、循環有り、塩素消毒有り。湯は底面から吸入され、加熱して側面からゆっくりと注入されていた。
中央右手、中温湯に囲まれた小さな四角い領域が43℃の高温湯。小さい浴槽で2人しか入浴できない。これも黒湯を利用しているが、中温湯と同じく、加温有り、加水無し、循環有り、塩素消毒有りである。こちらも底面吸入だが、勢い強めの側面注入と、底面からのジャグジーがある。
上段の浴槽は温泉ではなさそうだったので割愛。
写真の手前右手にあり、なぜか水飛沫を上げてみえるのが源泉浴槽。温度計によると浴槽内の湯の温度は24℃。源泉は17℃らしいので、大分温まってはいるようだ。冷たい湯は湯口からではなく、底面からジャグジーで注入されている。そのため飲んだりして遊ぶことができないのは少し残念だった。湯量は多くないが常にオーバーフローがある。溢れた湯は浴槽縁から少し低くなっている排水口に流されていた。この浴槽もあまり大きくはなく目一杯詰めて4人というところ。浴槽の脇にはカランがあり、捻ってみると源泉らしき水が出てきた。
源泉はまろやかな味覚
冷たい源泉浴槽の色は、烏龍茶のようなさっぱりとした茶色をしていた。角度によっては単純な薄い黒色にも見えた。不透明度はあまり高くなく、浴槽底がギリギリ見えないくらい (だったような気がする) 。カランを捻って出てくる源泉を見ても少し茶の色がついていたと記憶。
匂いは無臭だった。
味について、カランの源泉を手に掬って少量飲んでみた。基本的に味は無いが、水と比べるとまろやかな感じがあり、モール泉の気配を感じた。ポットに詰めて飲んでみたいところだ。
肌触りについて大きな特徴は無かった。黒湯といえばヌルヌルの感触だが、これは弱め。
湯は常に入れ替わり、鮮度が保たれていて清澄。とても気持ち良いものだった。
源泉は黒湯混じりの塩化物泉
使っている源泉名は矢向湯。黒湯エリアでは普通だが、ここも自家源泉を利用している。
温泉分析書は2枚掲示されており、2008年のものと2003年のものがあった。2003年の方が若干成分総計が多いようだが、他の数値についてはまったく変わらず、計算方法の違いだろうか。とはいえ5年越しの再分析で成分量が完全に一致するのも変な気もする。気にしないでおこう。
新しい方の分析書について記載する。
源泉名は横浜温泉、矢向湯の2つの名前が書かれている。台帳番号は横浜第69号泉。
分析日は2008.11.28、源泉温度は16.5℃、pH7.7、蒸発残留物1,330mg/kg、成分総計1,612mg/kg、湧出量は記載無し。泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 (低張性弱アルカリ性冷鉱泉)。
陽イオンは、
ナトリウムイオン (Na) 446mg/kg、
カリウムイオン (K) 32.1mg/kg、
カルシウムイオン (Ca) 20.5mg/kg、
マグネシウムイオン (Mg) 13.1mg/kg、
全鉄イオン (Fe2+Fe3) 0.51mg/kg、以下略、
計523.7mg/kg。
陰イオンは、
塩素イオン (Cl) 465mg/kg
炭酸水素イオン (HCO3) 563mg/kg、以下略、
計1029.5mg/kg。
遊離成分は、
メタケイ酸 (H2SiO3) 73.6mg/kg、以下略、
計75.3mg/kg。
黒湯感が少ないのは、塩化物イオン量が相対的に多いためかもしれない。旧泉質名も重曹泉でなく、含重曹-塩化物泉であり、黒湯混じりの塩化物泉ととらえられる。
メタケイ酸が75mg/kgあり黒湯エリアとして多め。近くの冨士の湯も84.7mg/kgと随分多いようだ。
分析書にはミリバルの値が書かれていなかったのでいずれ計算してみたい。また、多くの分析書では、遊離成分の非解離成分と溶存ガス成分を分けて書くことが多いが、ここでは一緒になって書かれていて少し珍しめ。
以下は2003.4.30の分析書。
喋るケロリン桶の張り紙
個人的にツボったのがこの掲示。
なんとケロリンに目と口がついていて、何やら入浴マナーを教えてくれている!この発想は今まで無かった!絶妙な間がたまらない。
なお、ケロリンの擬人化で言えば「ナイセンのうた」で有名なナイセンから
ケロリンちゃん、個人サイトキャラットからケロリン、
などが生み出されているようだ。
おまけで、施設裏のタンクには浴場用受水槽とあったので撮った。温泉が入っているかはわからない。