2020/6/7 八幡温泉

日帰り, 2回目, 曇り, 2020年度中3湯目

八幡湯は、品川区の住宅地、東急大井町線の中延駅と旗の台駅、東急池上線の荏原中延駅と荏原町、これら4駅の中間あたりにひっそりとある温泉銭湯。渋くて静かな雰囲気のある温泉。

メタケイ酸および炭酸水素イオンの項による温泉法上の温泉だが、しっかりと褐色に色付いた湯が楽しめる。現在の私の自宅から1km強で近くて便利。

施設・温泉概要

住所: 東京都品川区西中延3-15-8
営業時間: 15:00~23:00, 火曜/水曜定休
品川浴場組合サイト: 八幡湯
日帰り入浴のみ

源泉名: 健康ランド八幡温泉
湧出量: 150 L/分 (動力揚湯)
泉温: 16.2℃
成分総計: 0.648 g/kg
泉質: 温泉法上の温泉 (メタケイ酸, 重炭酸そうだ)

過去の訪問: 2019/3/28 八幡温泉

施設の紹介

個人的には中延駅側から行くことが多いが、行き方としては荏原町駅から向うのが簡単。荏原町駅を東側に下りると、居酒屋の庄やがあるので、左折して踏切を渡る。法蓮寺や旗岡八幡神社の前を通り過ぎ、200m程歩くと明かりの灯った建物が左手に現われる。それが八幡湯である。


↑ 写真: 八幡湯 正面

「黒湯の温泉」と手書きされた貼り紙など、良いムードを高めている。


↑ 写真: 八幡湯 営業時間

「都公認天然温泉」という文句が示す時代的な背景はよくわからない。掲示された営業時間は品川浴場組合のサイトに掲載されたものと相違があるようだが、まあたぶん現場が正しいのだろう。


↑ 写真: 八幡湯 入口

靴を脱いで靴箱にしまったあとに、もう1枚扉を開くと、地下に階段が続いている。「あけて おいて 下さい」と良い感じの貼り紙があるが、閉まっていることが多い。私は…開けておいたような、忘れたような…。

階段を下りると正面にカウンターがあって、おばちゃんに料金を支払う。料金はいつもの銭湯価格。


↑ 写真: 八幡湯 脱衣場

浴室内には、ご丁寧にも温泉許可の掲示があり、これも渋さが目を魅く。次のようなことが書いてある。

温泉許可 品川1号 975
綱島温泉様式 (ビール色)
三併用方式

  1. 綱島温泉様式
  2. 森林浴
  3. 蒸し風呂

「綱島温泉様式」については、綱島温泉が首都圏随一の温泉街だったころの名残りだろう。綱島温泉みたいな黒湯だということを記している。

八幡湯の特徴は続く「森林浴」「蒸し風呂」で、黒湯浴槽は、半透明のガラス壁により浴場とは区切られた小さな浴室内にある。この中では鳥の囀りの音が流されており、植物系のモール臭を楽しみながら入浴して、森林のようなイメージを楽しむことができる。

ただし今回は新型コロナウィルス感染への対策だろうか、小部屋の戸は開け放たれており、鳥の声も無かった。悲しい。

温泉の利用方法と浴感

写真の順番が前後するが、温泉の利用方法についての掲示は、施設入口の階段の上にある。


↑ 写真: 八幡温泉 温泉利用

一部補完しつつ書き起こしておく。

  • 入浴に適した温度に保つため、開店時のみ加水 (熱湯) しています。その後は、温度調整のため加温しています。
  • うめ水はすべて黒湯です。
  • 衛生管理のため、塩素系薬剤を使用しています。
  • ○○○○湯は毎日換水しています。

温泉の利用方法は、加温有り、加水無し (開店時のみ有り)、循環有り、塩素消毒有りだと思われる。

温泉を使用した浴槽は、先述の通りガラスで囲まれたものが1つ。浴槽は中が座席状になって座れるようになっており、2席ある。2人以上の入浴は不可能なのでかなり小さい浴槽ということになる。しかし空いているので、これでも入浴できなくて困ったことは無い。

湯口は湯の上には無く、浴槽の水面すぐ下から上に向けて投入されている。温度は加温により48℃近くになっており、触るとかなり熱い。常に投入されているわけではなく、浴槽の温度が下がってきて41℃位になると投入されるのではないかと推定した。

浴槽の内側はピンク色に塗られたタイルである。この色を映して、湯は赤褐色半透明に見える。湯自体の見通しは50cm程でまあまあの濃さ。蒲田〜五反田を結ぶ池上線沿いには黒湯の温泉が数多くあるが、池上周辺が見通し5cmを下回る最も濃い黒色になり、離れるにつれて薄くなっていく傾向がある。八幡湯はその傾向に合う漉さである。浴槽は深めの造りになっているので、浴槽底は見えない。

温泉の匂いは無臭だが、わずかに植物系のモール臭があった。前回来たときには小部屋でもっと蒸して、雨の跡の森を思わせる臭気があるのだが、今回は開放されていたためか爽やかな気であった。塩素消毒を行っているとのことだが、消毒臭は特に感じなかった

味は確かめなかった。湯は循環な上に浴槽内で投入されているため、飲める口が無い。

入浴中の湯の肌触りには特徴は無かった。多少なめらかに感じたが、普通のお湯とそれほど変わらないと思われた。身体の温まりについては、意外にも結構ガッツリと暑くなる。洗い場と往復して休み休み入浴する必要があった。

尖った泉質では無いし、今回は森林風呂でも無いから余計に特徴が薄くなっていたが、不快な点も無く、日常的に使うには程良い温泉である。

温泉の成分

温泉分析書は施設の入口に掲示されていた。


↑ 写真: 八幡温泉 温泉分析書

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。


↑ 写真: 八幡温泉 温泉分析書別表

源泉名: 健康ランド八幡温泉
湧出地: 東京都品川区西中延三丁目15番8号 貯水槽入口にて採水
分析年月日: 平成31年3月26日

湧出量 150 L/分 (動力揚湯)
pH 8.5
泉温: 16.2 ℃ (気温13℃)
泉質 温泉法第二条の別表中に示されたメタケイ酸及び重炭酸そうだの項で温泉法の温泉に適合する
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 646.62 mg/kg
成分総計 648.72 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
水素イオン (H+)0.1未満----
ナトリウムイオン (Na+)150.706.5690.48
カリウムイオン (K+)7.900.202.76
アンモニウムイオン (NH4+)3.400.192.62
マグネシウムイオン (Mg2+)1.600.131.79
カルシウムイオン (Ca2+)3.200.162.21
アルミニウムイオン (Al3+)0.1未満----
マンガンイオン (Mn2+)0.1未満----
鉄 (II) イオン (Fe2+)0.200.010.14
鉄 (III) イオン (Fe3+)0.010.000.00
陽イオン計1677.25100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)0.400.020.29
塩素イオン (Cl-)4.600.131.87
水酸イオン (OH-)0.050.000.00
硫化水素イオン (HS-)0.1未満----
硫化物イオン (S2-)0.1未満----
硫酸水素イオン (HSO4-)0.1未満----
硫酸イオン (SO42-)0.300.010.14
亜硝酸イオン (HNO2-)0.1未満----
硝酸イオン (NO3-)0.200.000.00
炭酸水素イオン (HCO3-)395.306.4893.10
炭酸イオン (CO32-)9.500.324.60
メタ亜砒酸イオン (AsO2-)0.1未満----
陰イオン計4106.96100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタ亜砒酸 (HAsO2)0.1未満--
メタケイ酸 (H2SiO3)67.100.86
メタホウ酸 (HBO2)2.100.05
腐植質 (有機物)10 未満
非解離成分計69.200.91
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)2.100.05
遊離硫化水素 (H2S)0.1未満--
溶存ガス成分計2.100.05
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.001未満--
総水銀 (Hg)0.0002未満--
銅イオン (Cu)0.0040.00
クロム (Cr)0.0020.00
鉛イオン (Pb)0.001未満--
カドミウムイオン (Cd)0.001未満--
亜鉛イオン (Zn)0.0600.00
微量成分計0.060.00

成分総計は 0.6 g/kg でかなり希薄だが、含有成分がナトリウムイオン、炭酸水素イオンに偏っているので黒湯的な特徴が発揮できていると思われる。メタケイ酸については 67 mg/kg 含まれており、周辺の黒湯と比べても遜色の無い量である。

以下にも登録しておきました。
健康ランド八幡温泉 - 湯花草子