湯之元温泉 薬師の湯 (2020/12/12)

日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中81湯目

ふるさと納税の返礼で貰った宿泊券を使うために鹿児島にやって来た。昨夜は「吹上温泉 みどり荘」に宿泊し無事に宿泊券を使うことができた。今日は鹿児島2日目で、同じ日置市の湯之元温泉を訪れた。本当は「田之湯温泉」だけ入浴するつもりだったが、「元湯・打込湯」にも寄りたい欲求が高まり連続で入浴した。

湯之元温泉田之湯温泉 (2020/12/12)
エメラルドグリーンに透き通った硫黄泉に浸かる温泉の銭湯「湯之元温泉 田之湯温泉」

湯之元温泉は日置市の北部、東市来 (ひがしいちき) に湧く温泉。かつては自噴しており江戸時代初期頃より入浴されるようになった。元湯・打込湯も 1600 年代末から利用され地元で愛されてきた歴史がある。

泉質はアルカリ性単純硫黄泉で、硫化水素味と硫化水素臭がある。意外にも火山の噴気地帯の硫黄泉のような匂いが香った。元湯、打込湯、田之湯温泉でそれぞれ少しずつ異なった印象でなんとも面白い。やはり湯之元温泉はしばらく滞在してみたい場所だ。

施設・温泉概要

所在地: 鹿児島県日置市東市来町湯田2225-1

Web: 無し
日帰り入浴: 可 6:30-21:30
宿泊: 不可

元湯

源泉名: 湯之元国道以南17号
湧出地: 鹿児島県日置市東市来町湯田2225-1
湧出量: 記載無し
泉温: 55.7 ℃
pH: 8.5
溶存物質合計 (ガス性のものを除く): 539.4 mg/kg
成分総計: 540.1 mg/kg
泉質: アルカリ単純硫黄温泉 (低張性・アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 硫黄泉 / 単純硫黄泉

一番良い浴槽の温泉利用方法:

加温 加水 循環 消毒

打込湯

源泉名: 湯之元国道以南14号
湧出地: 鹿児島県日置市東市来町湯田2244
湧出量: 記載無し
泉温: 52.8 ℃
pH: 8.3
溶存物質合計 (ガス性のものを除く): 507.7 mg/kg
成分総計: 508.8 mg/kg
泉質: 単純硫黄温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
旧泉質名: 硫黄泉 / 単純硫黄泉

一番良い浴槽の温泉利用方法:

加温 加水 循環 消毒

400 年の歴史がある温泉

湯之元温泉は鹿児島県日置市の東市来町、湯之元にある温泉地。日置市役所がある伊集院の北西 7km 程度に位置している。元湯・打込湯温泉は湯之元温泉にあり地元有志が運営する銭湯である。

湯之元温泉は約 400 年の歴史を持つ。この地では古くより温泉が湧出していたものの、掘ると土地が枯れるとされて活用されなかった。1640 年頃になってから郷土黒川大煩兵衛 (おおいびょうえ) と西市来村の僧により開湯され、その湯は坊主湯と呼ばれるようになった。その後は薩摩藩の直営の「市来温泉」と呼ばれ、身分により「御前湯」「地頭湯」「所湯」に分けて入浴していた。1670年には民衆が入浴する「打込湯」が掘られた。1872年 (明治2年)、版籍奉還により市来郷に移管、1900年 (明治30年) 頃には整備され「元湯」「打込湯」「新湯」「川端湯」などの設備があった。1926年 (大正15年) の鹿児島県温泉誌には「坊主湯」「田ノ湯」「平田湯」「打込湯」「川端湯」「朝日湯」の名前が登場する [1]

湯之元温泉は非火山性の温泉と言われていて、地下の基盤岩の隙間を通って地表まで上がってきた温泉が湧出している。地上では見えないものの、実は鹿児島市の北部から串木野にかけた斜め方向には深さ 600m の基盤岩の谷が存在している [2]。ところが湯之元温泉の辺りでは深さ 30〜100m 程度で、深い谷のギリギリ、際になっているようだ。この地形が温泉の湧出に関係しているのかもしれない。


⬑ 湯之元温泉について


⬑ 湯之元温泉の起源


⬑ むかしの市来温泉


⬑ いまの市来温泉

現在の元湯・打込湯は2020年10月1日にリニューアルオープンした。特に狙ってきたわけではないが、まだ2ヶ月しか経っていない。ラッキーだ。


⬑ 南日本新聞社の記事


⬑ 湯之元温泉株式会社 温泉通信の記事

当日は混雑していたので施設の中は一切撮影しなかった。内部の様子は鹿児島の地元情報誌 TJ カゴシマ等の記事をご覧あれ。

【元湯・打込湯】2種類の湯を楽しめる温泉が2020年10月にリニューアルオープン | カゴシマプラス

意外にも焦げ石系の硫化水素臭がある硫黄泉

浴室には2つの浴槽があって、中央に隣接し横並びになっている。左側が元湯、右側が打込湯。いずれも3〜4サイズで、浴槽縁は大理石、内側は水色のタイル張りだった。浴槽はさすがに新しくピカピカに光っている。浴槽の周り、浴室の両側面にはカランが並んでいる。訪問時は浴槽と洗い場の間に衝立が立てられ、少し狭く見えた。

浴室入口には水飮み場もあって、現代的な設備だ。ただし飲み水は温かった。

それぞれの浴槽の奥側の壁から湯口が突き出して、温泉がジャバジャバと投入されている。循環設備は無く、浴槽縁からゆったりとオーバーフローし源泉掛け流しである。ただし源泉温度が50℃を越えており、入浴可能な温度にするために加水していると思われる。
浴槽の湯は青色で少しだけ濁って見えた。青色なのは浴槽内側のタイル色を映していると思われる。そのままならばわずかに緑がかった色合いになりそうだ。打込湯の方がより強い濁りがあるが、それでも浴槽の底が見えないほどではない。

湯口から出る湯は熱いがなんとか手に掬って飲むことができる。味、匂いは硫化水素味、硫化水素臭で、意外にも火山の噴気地帯のような石焦げ系の印象。元湯はややタマゴ臭混じりで、打込湯はより火山っぽい硫化水素臭に感じられた。

浸かっていると身体のよく温まる湯で、あまり長湯はできない。休むところがあまり無いのが少し不便だ。感触に特徴は無く、ツルツルしなかった。

温泉の成分

温泉分析書は脱衣場に掲示されていた。


⬑ 元湯 温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意 (その1)


⬑ 元湯 温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意 (その2)


⬑ 打込湯 温泉の成分、禁忌症及び入浴又は飲用上の注意 (その1)

打込湯は湯之元国道以南14号源泉。

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

元湯 (湯之元国道以南17号)

源泉名: 湯之元国道以南17号
湧出地: 日置市東市来町湯田2225-1
分析年月日: 平成25年9月13日

pH 8.5
泉温: 55.7 ℃ (気温35℃)
泉質 アルカリ単純硫黄温泉 (低張性・アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 539.4 mg/kg
成分総計 540.1 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
リチウムイオン (Li+)0.300.040.63
ナトリウムイオン (Na+)134.505.8591.55
カリウムイオン (K+)6.600.172.66
アンモニウムイオン (NH4+)2.100.121.88
マグネシウムイオン (Mg2+)0.300.020.31
カルシウムイオン (Ca2+)3.900.192.97
ストロンチウムイオン (Sr2+)0.100.000.00
陽イオン計1486.39100.00
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)11.300.598.98
塩素イオン (Cl-)64.501.8227.70
臭素イオン (Br-)0.200.000.00
硫化水素イオン (HS-)3.100.091.37
チオ硫酸イオン (S2O32-)11.700.213.20
硫酸イオン (SO42-)56.501.1817.96
炭酸水素イオン (HCO3-)128.102.1031.96
炭酸イオン (CO32-)17.400.588.83
陰イオン計2936.57100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)88.401.13
メタホウ酸 (HBO2)10.400.24
非解離成分計98.801.37
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)0.700.02
溶存ガス成分計0.700.02
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.005 mg/kg 未満--
総水銀 (Hg)0.5 μg/kg 未満--
銅イオン (Cu)0.05未満--
鉛イオン (Pb)0.01 mg/kg 未満--
カドミウムイオン (Cd)0.005 mg/kg 未満--
微量成分計0.000.00

下記にも掲載しました。
湯之元国道以南17号 - 湯花草子

打込湯 (湯之元国道以南14号)

源泉名: 湯之元国道以南14号
湧出地: 日置市東市来町湯田2244
分析年月日: 平成25年9月13日

pH 8.3
泉温: 52.8 ℃ (気温35℃)
泉質 単純硫黄温泉 (低張性・弱アルカリ性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 507.7 mg/kg
成分総計 508.8 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
リチウムイオン (Li+)0.300.040.68
ナトリウムイオン (Na+)123.705.3891.81
カリウムイオン (K+)6.100.162.73
アンモニウムイオン (NH4+)1.900.111.88
マグネシウムイオン (Mg2+)0.100.010.17
カルシウムイオン (Ca2+)3.300.162.73
ストロンチウムイオン (Sr2+)0.100.000.00
陽イオン計1365.86100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)12.800.6711.04
塩素イオン (Cl-)41.001.1619.11
臭素イオン (Br-)0.100.000.00
硫化水素イオン (HS-)0.300.010.16
チオ硫酸イオン (S2O32-)4.600.081.32
硫酸イオン (SO42-)77.001.6026.36
炭酸水素イオン (HCO3-)127.502.0934.43
炭酸イオン (CO32-)13.800.467.58
陰イオン計2776.07100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)83.501.07
メタホウ酸 (HBO2)11.600.26
非解離成分計95.101.33
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)1.100.03
溶存ガス成分計1.100.02
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.005 mg/kg 未満--
総水銀 (Hg)0.5 μg/kg 未満--
銅イオン (Cu)0.05未満--
鉛イオン (Pb)0.01 mg/kg 未満--
カドミウムイオン (Cd)0.005 mg/kg 未満--
微量成分計0.000.00

下記にも掲載しました。
湯之元国道以南14号 - 湯花草子

元湯 (17号)、打込湯 (14号) を比較すると成分の量、比率ともにあまり差が無く、だいたい同じような成分の温泉。

陰イオンの比率が少し異なるくらいで、元湯は多い順に炭酸水素イオン 32 mval%、塩化物イオン 28 mval%、硫酸イオン 17 mval%、打込湯は多い順に炭酸水素イオン 34 mval%、硫酸イオン 26 mval%、塩化物イオン 19 mval% と順位が入れ替わっている。これが味・匂いの微妙な違いを生んでいそうだ。

直前に入浴した田之湯温泉を比べると、田之湯温泉の陰イオンは多い順に炭酸水素イオン 41 mval%、硫酸イオン 21 mval%、塩化物イオン 17 mval% になっており、重曹成分が一番多い。細かい差ではあるが、バランスの元湯、芒硝の打込湯、重曹の田之湯と考えて入浴すると良さそうだ。

pH はいずれも 8.5 前後でアルカリ単純硫黄泉に分類される。

お湯かけ薬師にも温泉が引かれている

施設の後ろにはお湯かけ薬師が祀られている。温泉が引かれてあり、備え付けの柄杓で湯を薬師像に掛けるそうだ。


⬑ 飲用不可とは書いてある


⬑ 透明で少し青みがかった湯


⬑ 神社に上ると湯之元温泉の地形が一望できる


⬑ 境内下に温泉タンク?


⬑ もう一つ温泉タンク?


  1. 鹿児島県温泉誌 - 国立国会図書館デジタルコレクション ↩︎

  2. 南九州の地質・地質構造と温泉, 温泉科学 ↩︎