光源の里温泉 ヘルシー美里 (2020/11/3)
日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中66湯目
一日の自由時間を得たので山梨県南巨摩郡の温泉へ入浴しに来た。ここまで 西山温泉 蓬莱館 (2020/11/3) 、奈良田温泉 白根館 (2020/11/3) 、奈良田の里温泉 女帝の湯 (2020/11/3) と早川町の温泉を巡ってきて、帰り際にもう一湯「光源の里温泉 ヘルシー美里」に寄った。廃校になった早川北中学校を改修した町営の温泉宿泊施設で、日帰り入浴も受け入れている。
温泉の泉質は含食塩硫黄泉で、成分総計 6,600 mg/kg と早川町内の温泉では飛び抜けて濃い温泉。その冷たい源泉をそのまま使った水風呂があって澄んでいる。飲泉は許可されていないが、はっきりとした塩味、硫黄味で美味しさと不味さが絶妙なバランスで共存しており、病み付きになる個性を備えた温泉。匂いもタマゴのような芳香があって楽しかった。
施設・温泉概要
所在地: 山梨県南巨摩郡早川町大原野651
Web: 南アルプス生態邑:「泊まる」ヘルシー美里
日帰り入浴: 可 平日15:00-19:00, 土日祝10:00-19:00, 冬季平日15:00-18:00, 土日祝11:00-18:00
宿泊: 可 2食付き 8,250 円〜
源泉名: 光源の里温泉 ヘルシー美里
湧出地: 山梨県南巨摩郡早川町大原野字上耕地508-1
湧出量: 19.3 ℓ/分 (掘削250m・動力揚湯)
泉温: 19.4 ℃
pH: 9.5
成分総計: 6,600 mg/kg 位 (温泉分析書の写真がぼけて判読できず)
泉質: 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩冷鉱泉 (低張性・アルカリ性・冷鉱泉)
旧泉質名: 硫黄泉 / 含食塩硫黄泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
無 | 無 | 無 | 無 |
廃校を改修した町営の温泉宿泊施設
光源 (こうげん) の里温泉 ヘルシー美里は、早川町の町営の温泉宿泊施設。早川沿いに南アルプスの山深くまで入り込む山梨県道37号 (南アルプス街道) の途中にある。国道52号の下部温泉附近から入って一本道を 20 km 程で到着する。西山温泉や奈良田温泉と比べるとずっと手前の方にある。
ヘルシー美里の建物は廃校になった早川北中学校の校舎を改装して再利用している。早川町は森林率96%、急峻な斜面に集落が点在する。1960年頃には人口10,000人あったが、その後は減少の一途を辿り2021年には日本で唯一、人口1,000人を切る「町」になった。早川北中学校が廃校になったのは1985年。地域に活気を戻したいと考え、1990年に温泉を発掘、中学校の校舎を改修して宿泊施設としたのだという [1][2]。
なおすぐ近くに大滝温泉 文勝館があるが、源泉は異なる。湯の華が多く白濁しており [3] 気になるが今回は時間が無かったので見送った。また次回訪れたい。
奈良田を発ったのは夕暮れだったが、ヘルシー美里に着いた頃には真っ暗になっていた。11月とはいえ、まだ18時過ぎなのに20時か21時のような雰囲気だった。
⬑ 暗闇にぼんやりと光るヘルシー美里
⬑ 建物の割に看板が渋い
⬑ 現役時代は靴入れが並んでいただろう、やたら広い玄関
建物の中は、学校の無骨さをリフォームしつつ、ホーム感だけうまく残していて良い雰囲気だ。玄関がやたら広いのはかつて3学年分の靴入れが並んでいたからだろう。大きいホテルか旅館みたいでワクワクした。
⬑ 受付で料金を払って中へ
⬑ 教室は客室になったようだ
⬑ 浴場は1階を進んで…
⬑ いったん外に出る
⬑ 校舎から漏れる光はなかなかの趣
⬑ 屋根のある回廊を上っていく
⬑ なぜか沢蟹が歩いていた
⬑ 奥の建物がさっき通ってきた校舎
⬑ 登り切って浴場の小屋
⬑ 入口に利用時間の掲示 ちょっと宿泊者の入浴時間が物足りない
ところでトイレに入ろうとしたら扉の内側に巨大な蜘蛛が張り付いていて、そっと閉じてしまった。きっとアシダカグモだ。初めて見た。私は北の方の出身なので、これまで出会ったことが無かった。想像していたよりも小さいが、力強い肢体を持ち存在感があった。もちろん、山なので偶然迷い込んだだけで、施設は清潔だった。
源泉水風呂は個性的な塩味、硫黄味
浴室の写真は人の居なくなった一瞬に撮った一枚しか無い。
浴室に入ると正面奥に2つの浴槽。いずれも花崗岩を使ったものでカッチリしている。壁は茶色に塗られており唐突に渋い感じ。
⬑ 加温浴槽 (左側) と源泉水風呂 (右側)
左側の浴槽が加温浴槽で4人〜6人サイズ。奥の角の湯口から熱い湯が注がれている。湯口は、浴槽の水面の上から湯を注ぐ一般的なタイプではなく、水面のすぐ下のパイプから上向きに湯を出すようになっていた。時々勢いが強くなって、浴槽の水面から盛り上がるように湯が注がれていた。湯の温度は41℃くらいでほどよい。
湯の色は無色透明で白色か薄緑色に濁っていて、浴槽底がやや霞んで見える。
少し飲んでみるとはっきりとした塩味が感じられた。源泉直でないのであまり飲んでいないので細かい味覚は不明。匂いは塩っぽいような生臭いような、磯っぽい香りがした。硫黄系の芳香は、期待してじっくり嗅いでみても感じられなかった。
肌触りはかなりベタベタ、ペタペタし、これも潮っぽい印象だった。
強めの温まりがあってのぼせるので長時間は浸かりにくい。入浴後の熱もしっかりと維持され、バイクで11月の山道を下っていくのに助かった。
右側の浴槽は源泉水風呂。1.5人サイズで小さい。角にある湯口から冷たい源泉がチョロチョロと注がれ、浴槽の長辺の反対側の切り欠けからオーバーフローしている。注がれる湯量はかなり少なく見えるが、浴槽に溜まる速度は意外と早く、人が上がって湯が減った状態からもそれほど時間をかけずオーバーフローする。温度は20℃くらいなので、秋の入浴では少し寒い。
源泉浴槽では先の加温浴槽とは印象がかなり異なっており、同じ源泉とは思えないほどだった。
見た目は無色透明で見事な清澄。ごく稀に白い湯の華の浮遊が見られた。
飲んでみると薄い鹹味があって成分総計 6,600 mg/kg として妥当。続いて硫黄の刺激的な不味みも感じられた。飲み込むと、鼻から硫化水素臭の刺激臭が抜ける。食塩味の美味しさと硫黄の不味さのバランスが面白く、ついつい何度も味わってしまう不思議な味覚。匂いは、浸かっているだけではあまり香らないが、湯口に鼻を近づけてみるとはっきりとしたタマゴ臭、硫化水素臭があって印象的。
加温浴槽のような磯っぽさは、なぜか源泉浴槽では皆無だった。
⬑ 加温浴槽は、加温有り、加水無し、循環濾過有り、塩素系薬剤による消毒有り
浴場から元校舎に戻る途中、右手には源泉施設らしき小屋があった。
⬑ 源泉井戸?
また、あとで調べたところによると、浴室の横に飲泉所があったらしい。
温泉の成分
温泉分析書は脱衣場に掲示されている。
⬑ 平成31年の分析結果。Web 上で見つかる過去の分析書よりさらに成分総計が多い
⬑ 温泉分析書別表 (浴用)
⬑ 飲用関係は打ち消されていた
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。というか温泉分析書の写真をうまく撮れなかったので細かい数字を間違えてるかもしれない。また調査に行きます。
源泉名: 光源の里温泉 ヘルシー美里
湧出地: 山梨県南巨摩郡早川町大原野字上耕地508-1
分析年月日: 平成31年2月19日
湧出量 19.3 L/min (動力揚湯)
pH 9.5
泉温: 19.4 ℃ (調査時における気温5.9℃)
泉質 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩冷鉱泉 (低張性・アルカリ性・冷鉱泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 6628.7 mg/kg
成分総計 6628.7 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
水素イオン (H+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
リチウムイオン (Li+) | 0.10 | 0.01 | 0.01 |
ナトリウムイオン (Na+) | 1791.0 | 77.90 | 73.27 |
カリウムイオン (K+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
アンモニウムイオン (NH4+) | 0.30 | 0.02 | 0.02 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 0.20 | 0.02 | 0.02 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 568.30 | 28.36 | 26.67 |
ストロンチウムイオン (Sr2+) | 0.40 | 0.01 | 0.01 |
アルミニウムイオン (Al3+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
マンガンイオン (Mn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 0.10 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (III) イオン (Fe3+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
陽イオン計 | 2360 | 106 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 3.40 | 0.18 | 0.16 |
塩素イオン (Cl-) | 2836.0 | 79.99 | 72.49 |
ヨウ化物イオン (I-) | 1.60 | 0.01 | 0.01 |
水酸イオン (OH-) | 0.70 | 0.04 | 0.04 |
硫化水素イオン (HS-) | 4.50 | 0.14 | 0.13 |
硫化物イオン (S2-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
チオ硫酸イオン (S2O32-) | 0.30 | 0.01 | 0.01 |
硫酸水素イオン (HSO4-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
硫酸イオン (SO42-) | 1306.0 | 27.19 | 24.64 |
リン酸水素イオン (HPO42-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
炭酸イオン (CO32-) | 46.40 | 1.55 | 1.40 |
メタ亜砒酸イオン (AsO2-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
メタホウ酸イオン (BO2) | 52.50 | 1.23 | 1.11 |
陰イオン計 | 4251 | 110 | 100.00 |
(3) 遊離成分
非解離成分:成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタ亜砒酸 (HAsO2) | 0.00 | 0.00 |
メタケイ酸 (H2SiO3) | 16.90 | 0.22 |
メタホウ酸 (HBO2) | 0.00 | 0.00 |
非解離成分計 | 16.90 | 0.22 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 0.00 | 0.00 |
遊離硫化水素 (H2S) | 0.00 | 0.00 |
溶存ガス成分計 | 0.00 | 0.00 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.01未満 | -- |
総水銀 (Hg) | 0.00 | 0.00 |
銅イオン (Cu) | 0.05未満 | -- |
クロム (Cr) | 0.01未満 | -- |
鉛イオン (Pb) | 0.01未満 | -- |
カドミウムイオン (Cd) | 0.001未満 | -- |
亜鉛イオン (Zn) | 0.01未満 | -- |
微量成分計 | 0.00 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
光源の里温泉 ヘルシー美里 - 湯花草子
脱衣場には温泉の成分について書かれた掲示もあった。
⬑ ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩冷鉱泉なので的確な説明
温泉の特徴として、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオンの成分量が掲示されていた。せっかくの硫黄泉なので硫黄の量も記載すればいいと思う。硫黄の総量は 4.54 mg/kg で、療養泉の定義における硫黄泉の定義「総硫黄 2 mg/kg 以上」 を満たしている。
ただ化石海水であると書かれているが、しっくり来ないような気がする…。本当にそうなんだろうか。
早川沿いでは糸魚川-構造線構造線の東西で泉質が異なっており、東側は西山温泉のようなナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉、西側は奈良田温泉や草塩鉱泉のようなナトリウム-塩化物 (・炭酸水素塩泉) になる。光源の里温泉はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉なので東寄りとも西寄りともつかないが、どちらかと言えば東側? のような気がする。味は奈良田温泉の西側寄り。成分総計が周辺と比べて飛び抜けて多いので、東西とは少し異なる由来を持っている説もあるか…?