稲城天然温泉 季乃彩 (2020/10/17)
日帰り, 2回目, 雨, 2020年度中59湯目
「稲城天然温泉 季乃彩 (ときのいろどり)」は東京都の稲城市にある綺麗なスーパー銭湯。源泉掛け流しの露天岩風呂では、塩化物泉の鉱物油臭と、モール泉の甘い香りが印象的。ツルツルの感触もあって心地良い温泉感だった。
施設・温泉概要
所在地: 東京都稲城市向陽台6-13
Web: 稲城天然温泉 季乃彩「ときのいろどり」
日帰り入浴: 可 9:00-25:00 (受付24:00), 土日祝7:00-25:00
宿泊: 不可
源泉名: 稲城天然温泉
湧出地: 東京都稲城市向陽台6-13
湧出量: 308 ℓ/分 (掘削1700m・動力揚湯)
泉温: 40.4 ℃
pH: 7.84
成分総計: 2069.92 mg/kg
泉質: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 (低張性・弱アルカリ性・温泉)
旧泉質名: 食塩泉 / 含重曹食塩泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
有 | 無 | 無 | 無 |
過去の訪問: 2016/11/26
よみうりランドの経営するスーパー銭湯
「稲城天然温泉 季乃彩」は、東京都南西部の稲城市にあるスーパー銭湯。オープンは2007年11月でまだ少し新しい。稲城市にはよみうりランド遊園地があって、私はどんなところか知らないが、名前くらいは聞いたことがある。季乃彩も株式会社よみうりランドによる経営。なお、企画、運営は株式会社 楽久屋がよみうりランドに委託して行なっており [1][2]。同じくよみうりランドが経営する多摩境天然温泉 森乃彩の他、東京都大田区のCOCOFUROますの湯とも親戚みたいなものになっている。
季乃彩が建つのは、JR南武線の南多摩駅で降りて南方向へ約500mほどの場所。あまり便利ではないが徒歩でも簡単に辿り着くことができる。多摩川沿いにある駅からはずっと登り坂なので実際の距離よりも少し遠く感じるかもしれない。
⬑ ニュータウン的な、緩いカーブを描く登り坂の途中、左側に現れた
⬑ 入口は温泉旅館っぽい和テイストな雰囲気 喜楽里とかと似ている
⬑ 玄関から先は綺麗で賑やかなスーパー銭湯
⬑ 館内は適度に入浴客が入っていた
⬑ 男湯へ
館内図は公式ページで見られる。なお上の写真の廊下を奥に進むと岩盤浴があるらしい。
源泉掛け流しの岩風呂
浴場は男女別でそれぞれに内湯、露天風呂がある。温泉を使用した浴槽は内湯に1つ「温泉主浴」と、露天風呂に3つ「くつろぎ湯」「岩風呂」「ねころび湯」がある。このうち内湯と露天風呂「くつろぎ湯」が循環使用で加温有り、加水無し、循環・濾過有り、塩素消毒有り。残りの露天風呂「岩風呂」「ねころび湯」が源泉掛け流しで加温有り、加水無し、循環無し。塩素消毒もおそらく無しと思われる。他、井水を使用した浴槽がいくつかあって、壺湯なんかは温泉を使っていそうな場所に置いてあるが井水である。このように温泉を入れる浴槽を絞っているのは好印象。使っている湯の種類は公式ページで説明されている。
内湯主浴槽は研磨した石を張った長方形の浴槽で8人サイズ。循環なので浴感は割愛。
露天風呂「くつろぎ湯」は岩風呂で8人が入浴できる楕円形。浴槽の横には温泉ポエムが掲げられていて主浴槽らしさを演出している。湯口からは源泉と思われる湯が注がれている他、隣の掛け流し岩風呂浴槽からのオーバーフローを投入。加えて浴槽内底面からの吸入と、浴槽内側面からの循環湯注入がある。底面吸入は強めで浴槽の中心に渦ができているのが見てとれた。湯の温度は40℃程度でゆっくりと入浴可能。ただし浸かっていると塩素消毒の匂いがはっきりと香ってきた。
「くつろぎ湯」の隣に源泉掛け流しの岩風呂。少し小さい楕円形で4人までなら足を伸ばして入浴できる程度の大きさ。それ以上の人数も入れたが狭くなった。湯口からは加温した源泉が注がれているが、どうも湯量に増減があり、ジャバジャバと多く流れ出している時もあれば、一時的に止まっていることもあった。ただ浴槽も大きくないので湯は十分、新鮮な状態で保たれているように感じた。浴槽縁からのオーバーフローがあって「くつろぎ湯」に溢れている。その量を見ると結構な湯量が投入されていることがわかる。300 ℓ/分の湯量を男女で等分して他の浴槽分を差し引くと、岩風呂では 50 ℓ/分ほどの湯が使えると思われる。
モール泉と古代海水の混合?
浴槽に張られた湯は琥珀色、または茶色、黄褐色といった色合い。半透明で、内湯では浴槽底がはっきりと見えていた。露天風呂では夜だったので暗く湯の色も見えなかったが、浴槽底に沈めた手が辛うじて見えるようだった。
匂いは土っぽい、というか鉱物油臭があって、入浴しているだけでも常に弱く知覚できる他、時々風に乗ってきてはっきりと香った。とても香ばしい匂いで、神奈川県側でこれがあるところは多くない。近くだとおふろの王様 海老名店を思い出した。ただし季乃彩では重曹成分も多く、薄らと植物系の匂いも混じっているようだった。また風呂から上がったあと、身体に腐植質のモール系の甘い匂いが淡く染み付いていた。
湯口から湯を手で掬って飲んでみると概ね無味だったが、黒湯的な植物系の甘みと、僅かな塩味を知覚した。見た目の色合いに対し穏やかな味なのは、重曹泉と食塩泉は半々くらいで混合しているからなのだろう。
湯の肌触りは強いヌルヌルがあって、指先や指の間が滑る感触。ヌルヌルが入浴中に衰えることは無く、温泉らしさを強く実感できた。
浴槽の湯の温度は41℃程度。温まりはそれほど強くなく、気温が低めだったこともありダラダラゆっくりと入浴できた。しかしながら長く浸かっているとしっかりとした疲労感がある。座って休憩できる場所がもっとあれば嬉しい。入浴後に汗は長引かず、すぐに引いたが、それでも秋雨の中を半袖で歩いても余裕な位には温度感が持続した。
温泉の成分
温泉分析書が館内に掲示されていた。
⬑ 源泉名は稲城天然温泉
⬑
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 稲城天然温泉
湧出地: 東京都稲城市向陽台六丁目13番
分析年月日: 平成29年3月30日
湧出量 308 L/分 (掘削による動力揚湯)
pH 7.84
泉温: 40.4 ℃ (調査時における気温9.0℃)
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 (低張性・弱アルカリ性・温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 2062.02 mg/kg
成分総計 2069.92 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
リチウムイオン (Li+) | 0.20 | 0.03 | 0.11 |
ナトリウムイオン (Na+) | 565.70 | 24.61 | 93.40 |
カリウムイオン (K+) | 24.30 | 0.62 | 2.35 |
アンモニウムイオン (NH4+) | 7.70 | 0.43 | 1.63 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 1.80 | 0.15 | 0.57 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 10.10 | 0.50 | 1.90 |
ストロンチウムイオン (Sr2+) | <0.1< td> | -- | -- |
アルミニウムイオン (Al3+) | <0.1< td> | -- | -- |
マンガンイオン (Mn2+) | <0.1< td> | -- | -- |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 0.10 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (III) イオン (Fe3+) | 0.20 | 0.01 | 0.04 |
陽イオン計 | 610 | 26.4 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 0.20 | 0.01 | 0.04 |
塩素イオン (Cl-) | 485.70 | 13.70 | 50.72 |
臭素イオン (Br-) | 1.90 | 0.02 | 0.07 |
ヨウ化物イオン (I-) | <0.5< td> | -- | -- |
硫化水素イオン (HS-) | <0.1< td> | -- | -- |
チオ硫酸イオン (S2O32-) | <0.1< td> | -- | -- |
硫酸イオン (SO42-) | 0.30 | 0.01 | 0.04 |
硝酸イオン (NO3-) | <0.2< td> | -- | -- |
リン酸水素イオン (HPO42-) | 0.60 | 0.01 | 0.04 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 800.40 | 13.12 | 48.57 |
炭酸イオン (CO32-) | 4.20 | 0.14 | 0.52 |
陰イオン計 | 1293 | 27.0 | 100.00 |
(3) 遊離成分
非解離成分:成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタ亜砒酸 (HAsO2) | <0.1< td> | -- |
メタケイ酸 (H2SiO3) | 125.60 | 1.61 |
メタホウ酸 (HBO2) | 33.00 | 0.75 |
非解離成分計 | 158.60 | 2.36 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 7.90 | 0.18 |
遊離硫化水素 (H2S) | <0.1< td> | -- |
溶存ガス成分計 | 7.90 | 0.18 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.01未満 | -- |
総水銀 (Hg) | 0.0005未満 | -- |
銅イオン (Cu) | 0.05未満 | -- |
クロム (Cr) | 0.01未満 | -- |
鉛イオン (Pb) | 0.01未満 | -- |
カドミウムイオン (Cd) | 0.01未満 | -- |
亜鉛イオン (Zn) | 0.02 | 0.00 |
微量成分計 | 0.02 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
稲城天然温泉 - 湯花草子
塩化物イオンと炭酸水素イオンがちょうど約 50 mval% ずつ含まれていて、まさに食塩泉と重曹泉のバランスがとれた中間の泉質。大田区、川崎市の黒湯との仲間と思われるが、1700m の地下深くに沈む過程で海水の影響を受けたのだろうか? また、メタけい酸が 126 mg/kg と高い含有量になっており、これがツルツルの感触に効いていそうだ。
⬑ 源泉は 1,700m の掘削
そういえば多摩川を挟んだ北側、調布市の深大寺天然温泉 湯守の里も古代海水とモール泉の混じったような温泉があった。湯守の里は成分総計 8900 mg/kg でより古代海水寄りの温泉だったが、このように多摩地域の地下深くには食塩泉と重曹泉が混合して存在しているのだろう。