いなり湯 (2020/9/11)
日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中42湯目
いなり湯は横浜市中区にある温泉銭湯。1946年から建つ歴史ある銭湯で東京銭湯の風格ある建物が記憶に残る。温泉は真っ黒な黒湯を使用していて、加温、加水があるものの掛け流しで入浴できる。浴槽の他にある源泉冷鉱泉シャワーを浴びるのをお忘れなく。
施設・温泉概要
所在地: 神奈川県横浜市中区大和町1-12
Web: いなり湯 | 神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合
日帰り入浴: 可 15:00-24:00
宿泊: 不可
源泉名: 横浜温泉 いなり湯
湧出地: 神奈川県横浜市中区大和町1丁目12番
湧出量: 不明
泉温: 16.8 ℃
pH: 8.68
成分総計: 1.056 mg/kg
泉質: ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉 (低張性・アルカリ性・冷鉱泉)
旧泉質名: 純重曹泉
一番良い浴槽の温泉利用方法:
加温 | 加水 | 循環 | 消毒 |
---|---|---|---|
有 | 有 | 無 | 無 |
いなり湯について
「いなり湯」は横浜市東部の中区、山手にある温泉銭湯。横浜のことがよくわかっていない私にとって、山手というと元町のすぐ裏辺りというイメージがあるが、いなり湯があるのはもうう少し南の坂を登ったところ。JR根岸線で横浜駅から3駅の山手駅で降り、商店街を800m程北東に歩くと、迷うことなく辿り着いた。
⬑ 堂々とした銭湯建築 (帰り際に撮ったので暗い)
⬑ 正面は壁なので左右から入る
⬑ 1步目でいきなり昭和の世界に送られる
⬑ 入浴料金は神奈川の銭湯共通価格の470円
入口で男女別の入口に分かれ、中に入ってから中間の高いところに座っている番頭さんに入浴料金を支払う、いわゆる番台方式。館内は伝統的な東京銭湯建築。どこを見ても昭和の雰囲気しかなく、今はもう平成ですらないことが信じられない。創業は1946年 (昭和21年)、日本国憲法が公布された年らしい。それ以来の建物とは凄い。
⬑ 歴史ある建築、質素なロッカー、並ぶ謎のオブジェクト
歴史ある銭湯だが、なかなか繁盛している。18時前に訪れたところ、地元の方々が一斉に上がるところで脱衣場が混んでいた。その後、いったん空いて浴室内には3人だけになったが、1時間ほどするとまた人がどんどん入浴してきた。
温泉浴槽と浴感
いくつか浴槽があるが、温泉を使用した浴槽は男女浴室の仕切り側にあるもののみ。浴槽は2人が入浴できるサイズで、タイル張りの角の丸い正方形型。半分は電気風呂になっていた。
浴槽には黒湯。色は茶褐色透明で見通し30cm強となかなか濃い。浴槽内側が黒いため、なお真っ黒に見えた。白い泡状の湯の華が少量浮遊していた。浴槽の上に出た湯口は無く、気泡湯となっていて、浴槽底面から熱湯がボコボコと注入されていた。湯は加温有り、加水 (熱湯) 有りだが、循環、消毒は行っておらず掛け流しである。
⬑ 循環、消毒無し
横には「源泉重曹冷鉱泉」の蛇口があり、取っ手を捻ると冷たい源泉が出て浴槽に注いだ。浴槽温度は初め44℃程度で熱め、入浴すると身体を締め付けるような圧力を感じた。その後、地元の方が源泉カランを開放し「冷鉱泉」を投入すると41℃程度の適温になっていた。
温泉を飲んでみると黒湯らしい滑らかな舌触り。味、匂いは特に無し。肌触りも特徴は感じられなかった。
浴槽の他に、浴室入口付近に源泉重曹冷鉱泉 (18℃) のシャワーが3つも設置されている。喜んで源泉シャワーを浴びてみると、はっきりとしたツルツルの素晴しい感触が直ちに感じられた。
温泉の成分
温泉分析書は温泉浴槽上の壁、脱衣場の隅、玄関の3箇所に掲示されていた。
⬑ いなり湯地下から湧出
以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。
源泉名: 横浜温泉 (源泉名: いなり湯)
湧出地: 横浜市中区大和町1丁目12番
分析年月日: 平成17年5月13日
湧出量 記載無し
pH 8.68
泉温: 16.8 ℃
泉質 ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉 (低張性・アルカリ性・冷鉱泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 1053.87 mg/kg
成分総計 1055.93 mg/kg
温泉の成分は以下の通り:
(1) 陽イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
リチウムイオン (Li+) | 0.01 | 0.00 | 0.00 |
ナトリウムイオン (Na+) | 253.00 | 11.00 | 91.67 |
カリウムイオン (K+) | 9.91 | 0.25 | 2.08 |
アンモニウムイオン (NH4+) | 9.77 | 0.54 | 4.50 |
マグネシウムイオン (Mg2+) | 1.12 | 0.09 | 0.75 |
カルシウムイオン (Ca2+) | 2.01 | 0.10 | 0.83 |
ストロンチウムイオン (Sr2+) | 0.08 | 0.00 | 0.00 |
アルミニウムイオン (Al3+) | 0.09 | 0.01 | 0.08 |
マンガンイオン (Mn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
鉄 (II) イオン (Fe2+) | 0.25 | 0.01 | 0.08 |
亜鉛イオン (Zn2+) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
陽イオン計 | 276 | 12.0 | 100.00 |
(2) 陰イオン
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリバル [mval/kg] | ミリバル% [mval%] |
---|---|---|---|
フッ素イオン (F-) | 0.93 | 0.05 | 0.41 |
塩素イオン (Cl-) | 7.41 | 0.21 | 1.74 |
硫酸イオン (SO42-) | 0.90 | 0.02 | 0.17 |
硝酸イオン (NO3-) | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
炭酸水素イオン (HCO3-) | 657.00 | 10.77 | 89.23 |
炭酸イオン (CO32-) | 25.40 | 0.85 | 7.04 |
メタけい酸イオン (SiO32-) | 5.56 | 0.30 | 1.24 |
メタほう酸イオン (BO2-) | 0.76 | 0.02 | 0.17 |
陰イオン計 | 698 | 12.1 | 100.00 |
(3) 遊離成分
非解離成分:成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
メタ亜砒酸 (HAsO2) | -- | -- |
メタケイ酸 (H2SiO3) | 56.20 | 0.72 |
メタホウ酸 (HBO2) | 2.47 | 0.06 |
非解離成分計 | 79.67 | 0.78 |
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
遊離二酸化炭素 (CO2) | 2.06 | 0.05 |
溶存ガス成分計 | 2.06 | 0.05 |
(4) その他の微量成分
成分 | ミリグラム [mg/kg] | ミリモル [mmol/kg] |
---|---|---|
総砒素 (As) | 0.00 | 0.00 |
総水銀 (Hg) | 0.00 | 0.00 |
銅イオン (Cu) | 0.00 | 0.00 |
鉛イオン (Pb) | 0.00 | 0.00 |
カドミウムイオン (Cd) | 0.00 | 0.00 |
微量成分計 | 0.00 | 0.00 |
下記にも掲載しました。
横浜温泉 いなり湯 - 湯花草子
泉質は純重曹泉だが、pHがやや大きめ。有機物は21.0 mg/kg含有している。脱衣場には「有機物含有量 国内で二番」という掲示があり、今ではさすがにそうではないと思うが、歴史を感じた。
帰りは、山手駅から北西に歩いて散策し、横浜を眼下に見下ろす景色を眺めた。
⬑ はるか昔は大岡湾が広がっていた