那須岳 御宝前の湯 (2020/8/16)
日帰り, 1回目, 晴れ, 2020年度中33湯目
膳棚の湯に入浴後、さらに登山して御宝前の湯に入浴した。温泉はとても快適だったが、御宝前の湯自体や周囲で自噴している温泉について、かなり多くの宿題が残った。早いうちに再訪して確認したい。
施設・温泉概要
所在地: 栃木県那須郡那須町大字湯本
湧出地: 栃木県那須郡那須町大字湯本
泉温: 38 ℃位
泉質: 単純温泉
温泉の利用方法: 野湯
温泉
御宝前の湯は那須岳の西側中腹にある野湯。同じく那須岳にある膳棚の湯に入浴後、御宝前の湯を目指した。この記事では温泉に辿り着くまでやたらと長いので、御宝前の湯の情報だけが知りたい方は前半を読み飛ばしてしまうことをお勧めする。
飯盛温泉跡
膳棚の湯から上がって少し行くと、飯盛温泉跡に着いた。ここでも泥まみれになりつつも一応入浴できると聞いていたが、温泉を見つけられず、虻にも攻撃されるし、見送りとした。虻といえば、かつて昭和天皇がここで新種の虻「飯森虻」を発見したのだそうだ。昆虫の研究はなかなか大変そうだ。
⬑ 山道を進む
⬑ 飯盛温泉は1920年〜1940年に営業された
⬑ ここらへんに建物があったのだろうか
⬑ 冷鉱泉が染み出してオレンジの析出を作っていた
⬑ うーん…?
⬑ どこを掘れば良かったんだ…?
飯盛温泉跡〜御宝前の湯の沢上流
飯盛温泉跡からは牛ヶ首に登り、姥ヶ平経由で三斗小屋温泉方面に進んだ。
⬑ 標高1700m手前で森林限界に到達。中央に映るのは…
⬑ 気象庁の那須岳牛ヶ首南東火山観測局
⬑ 登ってきた側を振り返る
⬑ 茶臼岳を頭上に見る
⬑ 牛ヶ首から眺める茶臼岳。左側中腹に噴気
⬑ 噴気の下に来た
⬑ 温泉の気配は無い
⬑ 150m下って姥ヶ平。さっきの噴気が見える
⬑ 1881年の茶臼岳噴火で高木が失われて…
⬑ 低い植物のみが生える一帯になった
⬑ さらに80m下って分岐を三斗小屋方面へ
⬑ 分岐を下る途中にある涸沢
ここが御宝前の湯に繋がっているはずの沢だ。
御宝前の湯
御宝前の湯の場所は、インターネットで調べ、ある沢を登り詰めたところにあることを知っていた。しかし、それでは沼っ原まで下りて後に沢をずっと登ることになるため一日掛かりの行程になってしまう。面倒なので地形図を読み、沢を上から下りて行くことにした。
※注意: 予想通り簡単には辿り着けたものの、源泉? 設備があるので壊さないように通る必要があった。途中は沢が狭くなっており、設備に触れないように、かつ自分の水没を避けて進むのは微妙に難しいので注意。
下り始めると、序盤は大きな石の転がる涸沢だったが、だんだんと笹藪に変わっていった。高低差にして70m程下ると、どこからともなく水が湧いて流れ始め、はっきりとした川に変わった。すると先ほどまで人間の気配が無かったところに人工物が出現した。
⬑ いきなり木板
人工物を破壊しないように気をつけつつ、いい感じにバランスを取って下っていく。
⬑ 取水設備だと思っていたが、温泉とのこと。でも冷たかったような…
標高1390mまで下りると太いパイプが通されていて、温泉を麓に届けている。現役かは不明だが、何年も放置にしては綺麗なのでメンテナンスされている可能性もある。
⬑ 麓までがんばれ!!
本題は上の奥側で、見ると突然景色が開けて赤茶けた泥みたいな質感の土でできた斜面が現われた。一見、土の泥のようにも思えるが、足を掛けてみると固く、靴は全く沈み込まない。積み重なった巨大な析出物なのだ。
⬑ これ全てが析出物
⬑ これも析出物
⬑ 山の上には朽ちた構造物
⬑ 内部は水 (湯だったらしい) が流れ出している
⬑ 右岸には謎の木箱? のようなもの
⬑ 読めないが温泉用途での土地利用を示すやつ
⬑ 神秘性とキモさと塩ビの調和
⬑ 析出物の山の最上部には浴槽らしき穴があった
内側にはヌメヌメとしたものが生い茂っており動揺した。木の棒を拾ってきて掬ってみると、まるで水飴のようにネバーッと伸びてくるではないか。これはちょっと入浴する気になれない。でもせっかくここまで来たのに…。せめてスコップの類があれば…。
しばらく逡巡したが「温泉はここで湧き出す清潔なものである」「その温泉だけで育った生物が有害とは考え憎い」「即ち今感じている障害は心理的なキモさ以外の何者でもない」「したがって手で掃除しないのは甘え」とかいう熱血な理屈で自らを説得し、素手で掃除をした。せっかく育ったヌメヌメには申し訳無いが、ここで引き下がるわけにはいかないのだ。御免!!
⬑ 掃除後、かなり快適そうな浴槽に変わった
⬑ 湯量は多く、浴槽が濁ってもすぐに透き通る
⬑ 達成感
そういうわけで1時間弱ほど入浴を楽しんだ。
温泉の温度は38℃程度で、夏の長湯に最適なぬる湯。湯口から注がれる湯、浴槽ともに無色透明で鮮度感が高い。浴槽の底には茶色い泥の沈澱があり、入浴すると舞い上がって浴槽を濁らせた。匂いは全く無く、無臭。飲んでみるとほぼ無臭だが、はっきりとした金気が感じられた。
温いので当然だが、温まりは弱く、入浴後は少し冷えるほどだった。
⬑ 入浴中目線
⬑ また来よう
御宝前の湯の歴史
さて、この記事を書きながら御宝前の湯について調べていると、白湯山について「栃木 温泉文化遺産」さんが紹介した記事が見付かった[1]。勝手に抜粋して解釈すると下記の通りである。
- 江戸時代に御宝前の滝を霊場とした「白湯山」という山岳宗教があった。滝はいわば聖地である。
- 破産した日本ロイヤルクラブが那須ロイヤルホテルに温泉を引湯していた。
- 標柱は当時の利用許可、建造物は源泉設備。
- 今は未利用源泉と思われる。
- 源泉は建造物背面の石垣から湧き、内部からのオーバーフローがパイプより流れ出している。
- 入浴するなら旧源泉設備側で入浴するべき。
那須ロイヤルホテルが営業していた時代の写真は、八九郎さんのサイトで見られる[2]。