2020/3/22 草津温泉 共同浴場巡り その5

連休を利用して群馬県の湯巡りをしている。3日目は草津温泉で共同浴場巡りをした。
草津温泉には大小100以上の源泉があり、そのうち7つの源泉が、19箇所の共同浴場のいずれかで使われている。詳しくは少し前の記事に書いた。

2020/3/22 草津温泉 共同浴場巡り その1

今回の訪問では「煮川乃湯」「長栄の湯」「凪の湯」「喜美の湯」「翁の湯」「瑠璃の湯」「躑躅の湯」「長寿の湯」「白嶺の湯」の9箇所を巡った。「煮川乃湯」「長栄の湯」については その2 に、「凪の湯」「喜美の湯」については その3
、「翁の湯」「瑠璃の湯」については その4 に書いた。

この記事はその続きで「躑躅の湯」「長寿の湯」「白嶺の湯」について記録する。

お約束だが、草津町の共同浴場は地元の方が生活の場として利用しているものであり、観光客向けに推奨されているのは「白旗の湯」「千代の湯」「地蔵の湯」だけである。それ以外の共同浴場は伝統的な「もらい湯」の精神に則り、地元の好意で入浴を許可されている。草津温泉の文化とマナーを理解した上で慎ましく入浴すること。

躑躅の湯

日帰り 雨 1回目

前の記事ではここ「躑躅 (つつじ) の湯」を目指したつもりが間違えて「瑠璃の湯」へ行ってしまった。しかしやはり万代鉱源泉を再び味わいたいと思い、結局「躑躅の湯」に向かうことにした。

万代鉱源泉は草津町西部の硫黄鉱山跡から湧出し、自然湧出量 6,200ℓ/分、湧出温度 94.5℃、pH 1.60と色々全国トップクラスな源泉である。この湧出量は単独源泉では国内3位?あたりで、例えば旅館30軒の浴槽を源泉掛け流し (循環無し) で運用できる。pH 1台の強酸性の温泉は、玉川温泉や蔵王温泉など、全国でも数ヶ所でしか湧出していない。

万代鉱源泉は草津のホテル、旅館の他、草津温泉露天風呂にも引かれている。共同浴場では「長栄の湯」、「躑躅の湯」、「恵の湯」、「こぶしの湯」、「碧 (みどり) の湯」の5施設で使用されていて、いずれも湯畑のある温泉街中心部とは離れた住宅地にある施設である。

躑躅の湯があるのは、それらの中で最も南、道の駅「草津運動茶屋公園」の北200m程にある。もはや温泉街よりも道の駅の方が近い。

今回は、雨が強まったり弱まったりする中、温泉街から歩いて躑躅の湯にやって来た。


↑ 写真: 躑躅の湯 外観

地元以外の一般入浴は入浴できる時間が限られており、10:00〜15:00になっている。それ以外の時間帯は地元専用になっている。地元といっても「区民」限定なので、草津町南本町区の住民しか地元と認められないようだ。草津町では行政区制をとっている [1]


↑ 写真: 躑躅の湯 入浴時間の案内

現在の時刻は12:00ちょうど。今日は日の出の時間から共同浴場を巡ってきたが、午後になりいよいよ地元の人の利用も多くなってきた。そういうわけで貸切にならなかったので内部の写真は撮影できなかった。

温泉の利用方法と浴感

浴槽は白いコンクリート製で長方形。3人が並んで入浴できる大きさで、小さめ。奥には蛇口状の湯口があり、無色透明の湯がジャバジャバと注がれている。

浴槽の湯の見た目は青白い透明。白い浴槽に美しく映える。匂いは硫化水素臭。嗅ぎすぎたせいか、あまり感じなかった。

飲んでみると、胃液のようなクリーミー感のある酸味が口に広がった。他の源泉でも同じような味覚があるが、やはり万代鉱が一番強い。飲んだあとはコーラを飲んだあとのように歯がギシギシした。さらに、強くはないが、複雑で金属的な苦味があった。

湯の温度は42℃くらいで、草津温泉にしてはぬるめ。先客がいたので調節済みなのだろう。しかし温まりはかなり強く、ぬるいからと言ってゆったりと浸かれる感じではなかった。あがってからもずっしりとした疲労感があり、「今日の湯巡りはこれで終わりにして帰ろう」という気持ちになった。

温泉の成分


↑ 写真: 躑躅の湯 温泉分析書

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 草津温泉 (源泉名: 万代鉱)
湧出地: 群馬県吾妻郡草津町大字草津字白根国有林63ハ林小班
分析年月日: 平成25年5月15日

湧出量 測定せず (掘削自噴)
pH 1.6
泉温 96.5 ℃ (調査時における気温6℃)
泉質 酸性-塩化物・硫酸塩温泉 (低張性・酸性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 3309.5 mg/kg
成分総計 3324.2 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
水素イオン (H+)26.0025.8054.86
ナトリウムイオン (Na+)101.004.399.33
カリウムイオン (K+)57.901.483.15
マグネシウムイオン (Mg2+)57.004.699.97
カルシウムイオン (Ca2+)102.005.0910.82
アルミニウムイオン (Al3+)47.105.2411.14
マンガンイオン (Mn2+)2.890.110.23
鉄 (II) イオン (Fe2+)6.310.230.49
陽イオン計40047.0100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)23.201.222.59
塩素イオン (Cl-)742.0020.9344.40
臭素イオン (Br-)2.900.040.08
硫酸水素イオン (HSO4-)732.007.5415.99
硫酸イオン (SO42-)836.0017.4136.93
陰イオン計233647.1100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)501.006.41
メタホウ酸 (HBO2)18.700.43
硫酸 (H2SO4)48.10.49
非解離成分計567.807.33
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)14.700.33
遊離硫化水素 (H2S)0.000.00
溶存ガス成分計14.700.33
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)5.230.07
総水銀 (Hg)検出せず。(0.0005 mg/kg未満)--
鉛イオン (Pb)0.170.00
微量成分計5.400.07

下記ページにも登録しました。
躑躅の湯 - 湯花草子

成分は草津町の源泉として最も強力なものである。ちなみに硫黄鉱山の掘削中に湯が出たので、掘削自噴という扱いになっている。

その後、湯畑に戻り、しばらく白旗源泉を眺めながら休憩。そろそろ帰ろうと思ったのだが、もう少し待てば雨が止みそうだったので、次の共同浴場に行くことにした。

長寿の湯

日帰り 雨 1回目

「長寿の湯」は草津町の共同浴場の中で2番目に北に位置する施設。早朝、「長栄の湯」へ向かっているときに前を通ったのだが、その時は入浴できなかったので改めてやってきた。湯畑のある窪地よりも上がったところ、景色が温泉街から住宅地に移り変わるあたりにある。

「長寿の湯」では湯畑源泉を使用している。この源泉は草津温泉のシンボルでもある湯畑から自噴している。51℃の高温で湧き出した源泉は、湯樋を流れて人々の目を楽しませるだけでなく、適度に温度を下げ、そのあと各施設へ引湯パイプで送られる。湧出量は 4,040ℓ/分 で万代鉱に次ぎ多い。

共同浴場19箇所のうち、10箇所がこの源泉を使用していて、共同浴場では最もメジャーな源泉だ。その10箇所は「千代 (ちよ) の湯」「関の湯」「翁 (おきな) の湯」「瑠璃の湯」「白嶺 (しらね) の湯」「巽 (たつみ) の湯」「長寿の湯」「喜美の湯」「千歳の湯」「睦 (むつみ) の湯」で、湯畑からほどほどに近く、独自の源泉の無いところは大体当てはまる。


↑ 写真: 長寿乃湯 外観

入浴時間は 9:30〜22:00。


↑ 写真: 長寿乃湯 入浴時間

中は広くはないが、新しい感じで綺麗。調べたところ2007年に建て替えたらしい。


↑ 写真: 長寿乃湯 入口側

脱衣場と浴室を仕切る広いガラス戸や、窓があって明るい浴室は、別の共同浴場「喜美乃湯」を思い起こさせる。同期だろうか?


↑ 写真: 長寿乃湯 浴室入口

温泉の利用方法と浴感

浴槽は長方形で3人サイズ。浴槽は草津温泉でお馴染の白いコンクリート製だが、少し凝ってあり浴槽縁は木製。浴槽奥の壁際に蛇口状の湯口があり、湯がジャバジャバと投入されている。湯口の斜め反対側よりオーバーフロー。


↑ 写真: 長寿乃湯 浴室

湯の色は、青白い透明、または角度によっては緑白色透明。上の写真で浴槽内手前を見てみると、浅い足場と、底のゴム蓋がはっきりと写っている。

味は、ここまでの共同浴場で湯畑源泉をたっぷりと飲んできたので、ここでは飲まなかった。同じ味のはずなので、レモネード的な酸味と、口が溶けるようなクリーミー感のある酸味、少し金属的な苦味があると思われる。

匂いは、薄い卵臭。朝から硫化水素臭の匂いを嗅いでいるので、もはやよくわからない。

浴槽の湯の温度は42℃くらい。共同浴場では温めである。もう午後なので、地元の人が入浴して温度をほど良く調節済みなのだろう。熱くは無いが、そこそこの重みがあり、本日の湯巡り後半ということもあって疲れてきていたので、ゆったりとは入浴できなかった。でも不思議な引力があり、上がろうとしてもまた入りたくなるので、休憩を挟みながら何度も入浴した。

酸のせいか、顔の日焼けと、(タオルの絞り過ぎで) 擦れた手が痛かった。

温泉の成分


↑ 写真: 長寿乃湯 長寿乃湯 温泉の禁忌症、適応症及び入浴上の注意決定書

以下は自前のプログラムに分析書のデータを入力して、自動計算したもの。本物の分析書とは計算精度等の理由によりやや値が異なる場合があるかもしれない。

源泉名: 草津温泉 (源泉名: 湯畑)
湧出地: 群馬県吾妻郡草津町大字草津字西町403-1 403-2
分析年月日: 平成25年5月15日

湧出量 測定せず (自然湧出)
pH 2.1
泉温: 51.3 ℃ (調査時における気温7℃)
泉質 酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 (硫化水素型) (低張性・酸性・高温泉)
溶存物質合計 (ガス性のものを除く) 1648.07 mg/kg
成分総計 1691.87 mg/kg

温泉の成分は以下の通り:

(1) 陽イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
水素イオン (H+)8.918.8436.53
ナトリウムイオン (Na+)56.002.4410.08
カリウムイオン (K+)27.500.702.89
マグネシウムイオン (Mg2+)36.302.9912.36
カルシウムイオン (Ca2+)73.503.6715.17
アルミニウムイオン (Al3+)43.804.8720.12
マンガンイオン (Mn2+)1.680.060.25
鉄 (II) イオン (Fe2+)17.500.632.60
陽イオン計26524.2100.00
(2) 陰イオン
成分ミリグラム [mg/kg]ミリバル [mval/kg]ミリバル% [mval%]
フッ素イオン (F-)9.900.522.11
塩素イオン (Cl-)311.008.7735.64
臭素イオン (Br-)1.300.020.08
硫酸水素イオン (HSO4-)192.001.988.05
硫酸イオン (SO42-)640.0013.3254.12
陰イオン計115424.6100.00
(3) 遊離成分
非解離成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
メタケイ酸 (H2SiO3)216.002.77
メタホウ酸 (HBO2)8.200.19
硫酸 (H2SO4)4.300.04
非解離成分計228.503.00
溶存ガス成分:
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
遊離二酸化炭素 (CO2)36.700.83
遊離硫化水素 (H2S)7.100.21
溶存ガス成分計43.801.04
(4) その他の微量成分
成分ミリグラム [mg/kg]ミリモル [mmol/kg]
総砒素 (As)0.170.00
総水銀 (Hg)検出せず。(0.0005 mg/kg未満)--
銅イオン (Cu)検出せず。(0.002 mg/kg未満)--
鉛イオン (Pb)0.0090.00
微量成分計0.180.00

白嶺の湯

日帰り 雨 1回目

今回の共同浴場巡りの最後に「白嶺の湯」に寄った。「白嶺の湯」は湯畑より南西側の国道292号沿いにある。湯畑から少し離れているため、付近は住宅街と温泉街か1:2くらいで共存する感じだ。

現在の時刻は 15:15。朝 6:30 からはしご湯をしてきてこれで9軒目だ。今日はもうずっと酸性泉に浸けられている。1軒ごとにちゃんと50分くらいかけて楽しんでいるので、もうヘロヘロである。正直もう終わりでいいかな、と思いつつ、草津温泉の泉質は何度も入りたくなる中毒性があって、こうしてまた次の施設に来てしまった。

「白嶺の湯」で使用しているのは、お馴染「湯畑源泉」。ちなみに付近の不二旅館、喜久美旅館、松乃井旅館、つたや旅館、旅館新潟屋、米山館も同じ「湯畑源泉」を利用している。この付近の宿は泊り易い価格設定のところが多いようだ。


↑ 写真: 白嶺の湯 外観

大変に綺麗なのは、2017年に改装したらしい。

白嶺の湯では利用時間の表示は無く、掲示には清掃日時と施錠時間だけが記されている。土日の観光なら、土曜昼前くらいにお邪魔するのが良さそうだ。

清掃日: 毎週 月・火・水・土
清掃時間: 午前7:30〜9:30

午後7:00〜午前8:00まで施錠いたします。


↑ 写真: 白嶺の湯 入浴時間

けっこう混み合っていたので中の写真は無い。

温泉の利用方法と浴感

浴槽は長方形で3人サイズ。白いコンクリート浴槽に、浴槽縁はまだ新しさのある木製。一つ前に寄った長寿の湯が新しくなったような感じだが、長寿の湯ほど明るくはない。

温度は43℃くらいで、今回巡った湯畑源泉の共同浴場では一番熱かった。ただ草津の湯は入浴してしまえば馴染んであまり熱く感じないので、まったく問題の無い温度。

見た目はお馴染、美しい青白または緑白。匂いは強すぎない硫化水素臭。

温泉の成分

湯畑源泉で同じのため省略。


  1. 行政区の組織 | 草津町 ↩︎