2020/1/12 船原温泉 湯治場ほたる

曇り時々雨 日帰り 1回目

船原温泉 湯治場ほたるは、伊豆半島の中央付近、伊豆市にある温泉ホテル。船原温泉には船原館を代表としいくつかの温泉施設があり、そのうちの一つである。

地理と歴史

船原温泉は伊豆半島の中部を西から東へ流れる船原川沿いにある。船原川は土肥温泉との間にある土肥峠、船原峠付近より流れている。付近には吉奈温泉、嵯峨沢温泉、持越温泉、湯ケ島温泉、矢熊温泉、月ヶ瀬温泉、青羽根温泉、柿木温泉、松ヶ瀬温泉などがある。

船原温泉の歴史は、湯治場ほたるの掲示によると、1828年、すなわち江戸時代末期の開湯とのことだが、それを裏付ける情報は見つけられなかった。

↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 今昔物語

時之栖御湯処 第六番
湯治場「ほたる」
「熟成」温泉 今昔物語

船原温泉の歴史 (一八二八年に開湯) は、古く施設敷地内には、徳川時代に金を産した鉱山発掘の跡があります。
金発掘の副産物として源泉が数ヶ所掘りあたりました。今でも名湯として残っております。
そして近年、金を名物にしようと船原ホテルで「純金風呂」を作られました。
廃業された今でも話題になっています。
「ほたる」の源泉は、鱒池の湯で、温度は九八・五度 湯量も豊富です。
また 源頼朝は、このお狩場で射止めた獲物をこの温泉地で焼いて食べたと伝えられています。今でもお狩場焼きという料理が、残っております。

ゆこゆこ [1] では、下記のように紹介されており、慶長年間 (1596年〜1615年) に船原温泉が見つけられていてもおかしくないと思ったが、残念ながらその情報は無かった。なお東側の海岸沿いにある土肥温泉は室町時代や慶長の開湯といわれている。

”湯の国”と呼ばれる天城湯ケ島にある全く異なる源泉から生まれる7つの温泉・天城七湯のうちの1つ。大仁鉱山の跡地がある温泉地。大仁鉱山は天正年間に発見され、伊豆金山の開発に注力した江戸幕府金山奉行・大久保長安によって慶長年間に最盛期を迎えたものの、その後は休山した。1935年、坑内をボーリングした際、温泉が湧出。さらに1942年には鹿之原坑の採掘中に温泉が噴出した。休山後も、湧出した温泉は愛され続けており、天城流湯治法といった独自の湯治を行う宿があったり、湯治専門の日帰り温泉などが存在し、湯治文化にも触れることができる。

船原遊歩道の資料 [2] をみると、明治26年 (1894年) 建立の石柱の石柱に船原温泉の文字があるらしく、すると遅くとも明治には温泉があったことになる。

船原温泉に島木赤彦 歌碑が残されており、島木赤彦が大正14年 (1925年) に詠んだ歌が残っている [3]。大正初期には既に湯治場として認知されていたようだ。

あとは、1982年出版の「天城湯ケ島町文化財保護審議委員会」の「天城の史話と伝説」[4] には、以下の目次があり、もしかしたらより詳しい情報が得られるかもしれない。結構古書で出回っているようだが…いったんおいておくことにする。

船原温泉とその伝説
(1)瘡岩さん
(2)鍋かむり塚
(3)大久保長安の夢

インターネットで探していると、源頼朝が入浴したと書いているページもあるが、単に船原峠に頼朝の狩場があり地名が残っているだけではないかと思う。

湯治場ほたるの建物はかつて船原ホテルという純金風呂で有名な巨大ホテルであったらしい。船原ホテルは開業1964年、閉業1984年であり、その後20年間も廃墟となっていた施設を、2005年に時之栖が買い取ったらしい。

時之栖は静岡県を中心に温泉ホテル等を経営している。以前、中川温泉で入浴したことがあった。2019/7/20 中川温泉時ノ栖 そちらは湯治場ほたるのようなインパクトはなく、普通の温泉ホテル。

施設

↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 正面

ロビーまでは豪華な感じがするが、ここからが本番である。

↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる ロビー

浴室は受付を過ぎたあと階段で地下に降り、コンクリート感のある廊下を歩いていく。

↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 廊下
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 脱衣場

浴室はかなり寒々とした雰囲気である。まるで綺麗な廃墟のようで、独特の味がある。

洗い場は薄暗く、やたら広いのに、シャワーは5つだけついている。残りのスペースはポツンと置いてある掛け湯浴槽と、その横の椅子を除いて何も無い。一般的な温泉施設の普通の洗い場と比較すると、半分以下の密度である。浴室とは扉で分けられている。

浴室は、湯が張られた巨大な伽藍堂のようである。幅13メートル、長さは30メートルはあるだろう圧倒的な広さ。一度に入浴できる人数は誇張なしに100人を超え、詰めたら150人でさえ入れそうに見える。

伽藍にあるのは長さ4メートル、幅1.5〜2メートルのこれまた巨大すぎる湯口と、7体ほどの謎の地蔵、2本の柱だけ。

浴槽は3つに仕切られていて、広大な浴槽をだいたいちょうど3等分している。「あつめの湯」「ふつうの湯」「水風呂」があり、それぞれの温度は44℃、41℃、36℃くらい。湯は「あつめの湯」から「ふつうの湯」、「ふつうの湯」から「水風呂」へと順番に移動していくようになっている。温度もうまくそれで調整しているようだ。湯が移動する境界付近では入浴していると少し流されるくらいの強い流れを感じた。

あつめの湯の真ん中に湯口がある。湯口の根元は壁側から来ているようだ。そういえばこの壁の一面はベニヤ板みたいな木板で塞がれている。湯口から出る湯はかなり熱く50℃以上あり、直接触ることはできない。湯量は暗くてよくわからなかったが、小川くらいあったようだ。

水風呂は水というかぬるい湯。空気による冷却と加水により調整しているようだ。

温泉の利用方法と浴感

温泉は、加温無し、加水無し、循環無し、濾過無し、塩素消毒有りで利用。水風呂では加水している。

消毒は残念であるが、特に塩素消毒の気配は感じなかった。

源泉温度は99.4℃と非常に熱いが、湯雨竹を使って冷却することで加水をしていないとのこと。

湯治場ほたるでは今まで以上に源泉を楽しんでいただく為、竹製温泉冷却装置「湯雨竹 (ゆめたけ)」を導入致しました。源泉の効能を体感頂けると思われます。贅沢な湯浴をどうぞ!!
↑ 写真: 船原温泉 「湯治場 ほたる」からのおたより
↑ 写真: 船原温泉 「湯治場 ほたる」からのおたより

湯の色は無色透明。ただ暗かったので浴槽の中はあまり見えなかった。よく見ると、白い湯の花がチラホラと舞っていることが確認できた。

匂いは特に無し。味は、湯口の湯が熱すぎて汲めなかったため、飲んでいない。

肌触りは特に特徴無し。結構あたたまる湯で、身体がすぐ暑くなって、なかなか冷めない。温度の違う「あつい湯」「ふつうの湯」「水風呂」を行ったり来たりしながら長湯するのがよいだろう。

↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉利用 (浴用)にあたっての注意 1P
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉利用 (浴用)にあたっての注意 2P
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉利用 (浴用)にあたっての注意 3P
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉利用 (浴用)にあたっての注意 4P
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 宿泊業の衛生管理に係る計画書

温泉の成分

源泉名は「鱒池の湯 船原7号」、湧出地は「伊豆市上船原字楮場中道546-2」。分析年月日は2015.9.4、湧出量は92.1L/分 (掘削自噴)、pH 8.6、泉温99.4℃、溶存物質 (ガス性のものを除く) 1456mg/kg、成分総計 1456mg/kg、泉質はナトリウム-硫酸塩・塩化物泉 (低張性・アルカリ性・高温泉)。

成分は以下の通り:

陽イオンは、
ナトリウムイオン (Na) 335.1mg/kg 14.58mmval/kg 78.60mval%、
カルシウムイオン (Ca) 64.5mg/kg 3.22mval/kg 17.36mval%、
カリウムイオン (K) 29.0mg/kg 0.74mval/kg 3.99mval%、
マグネシウムイオン (Mg) 0.1mg/kg 0.01mval/kg 0.05mval%、
計 428.7mg/kg 18.55mval/kg。

陰イオンは、
硫酸イオン (SO4) 557.6mg/kg 11.61mval/kg 62.59mval%、
塩化物イオン (Cl) 194.0mg/kg 5.47mval/kg 29.48mval%、
炭酸水素イオン (HCO3) 70.8mg/kg 1.16mval/kg 6.25mval%、
炭酸イオン (CO3) 9.4mg/kg 0.31mval/kg 1.67mval%、
以下略、
計 832.3mg/kg 18.55mval/kg。

遊離成分で非解離成分は、
メタケイ酸 (H2SiO3) 190.5mg/kg 2.44mmol/kg、
メタホウ酸 (HBO2) 4.9mg/kg 0.11mmol/kg、
以下略、
計 195.4mg/kg 2.55mmol/kg。

↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉分析書
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉分析書
↑ 写真: 船原温泉 湯治場ほたる 温泉分析書別紙

豪快な湯の使いかたをしているが、湧出量は意外と少ない。もっと多く感じた。

参考情報